キャスィー・ブルーフラワーとネモフィラ
朝6時。田原家のテントから大きなドラムの音があたりに響き、胸ポケットに黒い糸で『drum』と書かれた水色の半袖シャツと白の長ズボンに紺のスニーカー姿の亮介が出てきた。
「タルト。ようかんや桃たちが驚いてるだろ」「わたくしが起こさずにいると、7時まで寝てるでしょう!」と答え、タルトは亮介の肩に止まった。
パンにブルーベリージャムを塗っていた勇人と大貴が噴き出し、ボールをバットで打っていた温泉小4年のマオが驚いた顔で亮介を見つめる。
亮介は美月、直美と一緒に塩を振った鶏の丸焼きとイチゴやサクランボなどを入れたフルーツサラダを作り食べた。
(直美が長机から取った鶏のお腹を水で洗っている時、ネギやニンジンを入れたみそ汁を飲んでいた男子大学生5人が「ああ―――‼」と冷や汗をかきながら絶叫した)。
肩まである茶髪を頭の後ろで結んだ源泉中学校の国語と音楽の教師で25歳のキャスィー・ブルーフラワーは作り終えた40枚の漢字テストを封筒に入れ、パイプ椅子に座る。茶髪には青色の花、ネモフィラの形の髪飾りをつけている。
「キャスィー先生、おはようございます」「直美、おはよう」キャスィーはあくびをしながらロールキャベツを作り始めた。煮込まれたトマトや肉の匂いに、砂浜を走り赤いテントの前まで戻って来た強一の腹が鳴る。
キャスィーはロールキャベツを入れた深皿とスプーンを強一や直美たちに渡すと、
「ネモフィラの花畑です」と言ってスマートフォンの写真を見せた。青色の花畑に、直美が「わあ」と声を上げる。
キャスィーは「花畑に行くと、母が花かんむりを作ってくれていました。私の手袋にもネモフィラの刺繍がついているんです」と亮介たちに言った。
「タルト。温泉小の校門前に梅の木があるんだ。毎年7月に採れる実で作る梅ゼリーは給食や文化祭でも出されてるよ」マオがデジカメの電源を入れ、梅の木と黄色のゼリーの写真をタルトに見せる。
「大きいですね」タルトが梅の木の写真を見ながら言うと、「温泉小が建てられる
前から植えられていて、先生たちが300個の実を採って入り口にキンモクセイの花が置いてある『子ども食堂 キンモクセイ』やお寺などに持って行ってるよ」とマオが満面の笑みを見せた。
「10月の2日にある漢字テストに向けて暗記をしたいんだけど、一緒にやらない?」とマオに聞かれ、タルトは長机の上に止まり嬉しそうに鳴く。
『草かんむり』や『やまいだれ』、『束』や『帆』など20問をノートに書き終えたマオは「『塔』と『決壊』が書けなかった」とため息をつく。
「80点取れます!」タルトはノートと赤シートを見ながらマオの肩に止まり言う。「ありがとう」マオは水色の羽をなでながら、嬉しそうな笑みを見せた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます