大人編 クレーム男の絶叫

            

 

 秋花は小6で12歳の弟、勇人と緑色のテントの外で豚汁を作りながら、給食の時にあるお笑いの時間について聞いていた。

「最近のネタは何かある?」「『おばけの救急車』だよ」と言って、勇人は両腕を前に伸ばし、「おばけの救急車~」と歌いながら足を鳴らして回る。

 紺や緑のパーカーと黒いジーンズを着た5人の男子大学生たちが後ろで一緒にやると、サンドウィッチをアルミホイルに包んで焼いていたベルと温水が噴き出した。

 男子大学生たちは勇人に満面の笑みを見せ、リュックサックから出した塩味のせんべいや揚げ餅を渡してから銀色のテントに入っていった。


 頭の後ろまでの短髪を紺色に染め、真ん中に白い字で大きく『マラソン』と書かれた紺色の半そでシャツを着た23歳の男性、佐々木トウジは11歳の石松拓也と話していた。

 「僕の両親はアナウンサーと新聞記者で、僕がドラマの仕事で稼いだお金で日本酒やビールを買って0時まで自宅で飲んでいます」

 拓也はネギと豆腐のみそ汁をトウジと一緒に飲みながら「子役をやめて温泉小学校で授業に参加したいんです」と小声で言う。

 「どの授業に参加したいんだ?」と聞かれ、「英語と体育。純一たちと英会話やテニスなどをやりたいんです」と答える。

 トウジは「俺の父親、佐々木秋次郎は鎌倉警察署の個室で小中学生やその家族、生活に困っている人たちの相談を受けている」と言いながら水色のチラシを拓也に渡す。

 「ありがとうございます」拓也はトウジに嬉しそうな笑みを見せ、チラシを

連絡帳にはさんで紺のリュックサックにしまった。


             

 ―――夜8時。秋花と勇人のテントに、黒いテントで過ごす40代の男が近づいていた。

 去年の7月、とんかつ弁当屋の前に『閉店しろ!』と黒いペンで書いた貼り紙を5回貼り、二人の父親勝蔵の腰をスニーカーで打ち転ばせたことがある。

 男は二人がいるテントの中に入り、勇人の背中を打って走り始める。秋花はメモ帳を持って強一の赤いテントに駆け込み、一緒に男を追いかけた。

 強一からメモを受け取ったルークはオスバチよりも毒が強力な女王バチにも男を追わせ、鎌倉警察署のDJポリスに電話をかけ男を逮捕するように言った。

 男は激怒した4匹の女王バチに腕を刺され、冷や汗をかきながら「ああ――‼」と絶叫し転倒後、『ビーヘイバー』最初の失職者となった。


 夜9時、亮介たちのテント内。「滝原家のご両親に、授業参観で直美が九九を暗唱した時の写真を送った。『直美ちゃん、会いたいねぇ』って電話でも言ってた」

 亮介が美月に小声で言うと、「滝原?」と直美が聞いてきた。「私が亮介と結婚する前の名字。

 毎週水曜日に、温泉小の給食でも出されるカブとホウレンソウを育ててるんだよ」と答え、美月は娘の髪をとかす。




 

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