第13話 生きるためにも

 …警察…エテルを…捕まえに来た…。連続盗難の…犯人…それは…エテルなんだから…。エテル…関係あった…そうだよね…目立つ事件…今の所…それしかないんだもん…。どうしよう…エテルは…どうなってもいい…けど…アフェ…アフェも…共犯にされたら…。…アフェ…何も関係ない…盗難に協力してもない…ただ…犯罪を犯した…エテルを匿ってくれているだけ…匿ってと言ったのは…エテルの罪を話す前…アフェ…何も知らなかった…だから…アフェ…悪くない…。

 「どうしたの?エテルちゃん」

 「な…何でも…ない…。…帰ろう…」

 「うん。わかった〜!」

 


 「すいません…私は連続盗難事件のことについてなにも…」

 「失礼ですが…全校生徒の情報を教えてくれませんか?連続盗難事件の犯人は子供の姿をした自動機械だと判明しているので」

 「学校に自動機械が紛れ込んでいるとでも!?」

 「有り得る話です。彼らは容姿変化という機能を持ち合わせているので人間に擬態することが出来ます。なので一回だけでいので名前ぐらいでも確認させてください」

 「…分かりました…これです…」

 「…なるほど…。…ん?メテール…」

 「エーテルちゃんがどうかしましたか…?」

 「いや、彼女の名字…これってアフェオンの名字ですよね。ですがアフェオンは結婚していませんし…養子の登録もしていません。…なのでアフェに子供がいるわけないんですよ」

 「アフェ…って…」

 「自動機械を作った博士の助手です。天才的な頭脳を持つ外国の女性だそうです。かなり有名な人なのでご存知かと思いましたが」

 「いいえ…存じ上げませんでした…」

 「…エーテルについて調べさせてもらいます。もしかしたら彼女が我々の探している自動機械かもしれませんので」

 「…分かりました。でも連続盗難事件の犯人がエーテルちゃんだった場合…どうなるんですか…?」

 「…そうですね…。「あれ」を焼却処分せざるを得ません。犯罪を犯した機械など「不必要」なのですから」


 研究所から帰り、エーテルが待つ家に戻る。こんなにも家に早く戻りたいと思える日が来るなんて思いもしなかった。子供なんて私にはいないから。養子でもないのだから…。

 エーテル…初めての学校…大丈夫かな?私みたいにならないといいのだけど…それか彼のようにいじめの対象になっていないといいのだけど。…エーテルの姿などを見て判断しよう…。自分の学校生活が嫌なものだったから、エーテルの学校生活も「彼女」にとって嫌なものにならなければいい…楽しくて笑顔あふれる「子」であってほしい。機械だという事実さえバレなければいいのだから…。不安で押しつぶされそう…だけどそんな姿を見せられない。早く帰らないと…晩ごはん作ってあげないとね。もう夜だから…。

 「ただいま〜」

 「おかえり…アフェ…大丈夫?」

 いきなりエーテルが私のことを心配してきた。別に私はどうってこともない。むしろエーテルの学校生活のほうが心配だ。学校には馴染めそうか…人間と接することが出来ているのか…そこ辺りが私は心配で心配で仕方がない。…まるでエーテルの母親みたいだ。…血は繋がっていないけど…親子みたいで私は楽しい。

 「大丈夫だけど…何かあったの?」

 「い…いや…大丈夫なら…エテル…平気…」

 なんだか焦っている。そして不安に溺れている…何があったの?学校で…。焦っているから何か緊急事態があった…とか…?何か…何かあったっけ…?そんなときだった。突然鳴った音に…私はびっくりした。

 ピンポーン…

 「あ、はい」

 「すいません。夜分に…こちら…」

 ー警察のものですがー

 「っ!」

 エーテルの顔がかなり曇っている。警察…?なんでこんなところに来たの?とりあえず玄関に出て対応しないと…。

 「ま…って…!」

 エーテルの声が枯れている。というより溢れ出る不安で声が出しにくくなっているみたい。警察に怯える…?それって…どういう…。

 「すいません。エーテルさんという方はいますか?」

 「え?ちょっと勝手に入ってこないでください」

 警察が勝手に家に入ってくるなんて…不法侵入なんだけど…そこまで重要なこと?しかもエーテル?なんでエーテルを…。

 そう思っていた…だけど次の発言で…察してしまった。警察がエーテルを探しに着ていた理由を…。

 「そこのエーテルと名乗る自動機械…連続盗難事件の容疑者なのです。署まで来てもらえませんか?」

 …まさか…。


 「回答。当機の動力源、永久機関は不安定、すなわち「いずれ停止する可能性を持つ永久機関」。停止する確率を0にするためにエネルギーの補給は当機にとって必要不可欠。通常の自動機械には食物をエネルギーに変える機能は備わっていない。しかし当機は研究所にて強奪してきた変換機能を備わっているために食物を永久機関を補佐するエネルギー源を確保できた」


 …あのときに質問しておくべきだった。廃棄処分でご主人さまもいないエーテルがどうやって食べるものを調達していたのかって。答えは…単純明快だった。エーテルは食料も生きるために強奪して生きていた。…警察はそれで…動いてしまったんだ。エーテル…逮捕される…?いやそれだけでは済まないかもしれない…今度こそ…廃棄処分される…?だめ…エーテルを…。

 エーテルを私から奪わないで…。

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