第12話 桜が舞っていたはずの景色
エーテルと生活し始めて数日後…私はエーテルにある提案をした。研究所が忙しくてエーテルの勉強に付き合う時間が短くなってしまったから勉強ができる場所に「彼女」を入学させることにした。入学と表現している時点でどこかは察せると思うけどね。
「…疑問。小学校?」
「うん。小学校に行って勉強すればいいかなと思ってね」
まぁ、六歳の見た目で知能指数中学1年生ぐらいあるから最初の頃は天才少女になるかもね…。でもこの近くの小学校の近くにある図書館は高校と中学用のもあるからそこの本を借りてここで勉強すれば予習にはなると思うんだけど…。エーテルは勉強したいとか言っているから学校に行かせたほうがいいかなと…。
「理解。頑張る。おー!」
「うん。近くの小学校の入学手続きも終わっているから…あぁあと、容姿変化と…あと口調変えられる?」
「回答。容姿変化で人間に擬態すると…そして…口調?口調を設定した場合変更まで数週間かかる」
あ〜…でもいいや。エーテルは人間らしい機械だから人間らしい口調にしてもいいかもね。まぁ、それでも永久変更不可能じゃなくてよかった。口調で自動機械だと悟られたら一巻の終わりだから。
「それじゃあ…女の子っぽい口調いける?」
「………。…これで…いい…?」
あ、ちょっと陰気な感じの女の子の口調になっている。でも、まぁこれでもいいか。小学生っぽいし…何よりとても可愛い。可愛いが一番の理由ではないからね?「何より」とか使っているけど。でもかなり可愛いと思うんだけど…。
「ランドセルは買っておいたから背負ってみて」
「うん…分かった…」
エーテルに似合う水色のランドセルを買ってきた。エーテルは水色のイメージがあるから、というより水色が似合うと思っていたから。髪色は黒だけど。とりあえずランドセルがぴったりで、おまけに似合っていそうで良かった。
「…嬉しい🎶」
「喜んでもらえてよかった。明日、入学式だから正装を着ないとね」
「分かった…」
陰気な女の子の口調になっても感情表現は健在みたいでよかった。むしろこういう子のほうがときおり見せる笑顔が輝いて見えるのかも知れない。
「すぅ…すぅ…」
「…アフェ…自分の過去…言った。…私も…エテルも…言うべき…かな…」
「ん…」
「…まだ…言えそうにない…ごめん…なさい…アフェ…」
一昔前までは入学式の時期はとても桜が見応えがあったという。桜の並木に小学生たちが桜舞う道を通って小学校に来る…そんな時期があったという。今は…もうないけど…近未来的な道が広がって…自然の美しさなんてない道をあるき続ける。これはいいことなのか悪いことなのかよくわからない。人によって違うんだろう。私は悪い事だと思っているけど。
「この先が小学校だよ。エーテル」
「…うん。エテル…頑張る…!」
一人称はいつの間にか「エテル」になっていたようだ。でも確かに小学生は「私」とかあまり使わないイメージがある。大体自分の名前か自分の名前の略称が一人称になっている。「エーテル」は言いづらい…まぁ、そんなにではないけど、「エテル」の方が言いやすいから一人称を「エテル」にしたみたい。
「エーテル。忘れないでね?エーテルのフルネームは今日からエーテル・メテールだからね?…なんだか少し変な名前になったような気がする」
「大丈夫…エテル…気にしない」
慰めが心の癒しになっている気がする。エテルはやっぱりとてもいい子だ。かなり今更感があるが、そんなことはどうでもいい。入学式には出席できないからエーテル一人で頑張ってもらおう。
「…人に馴染めるように頑張ってね」
「…うん。…分かった」
そう言って私は仕事場である研究所に向かった。エーテルは真っ直ぐ行った先にある小学校に向かってあるき始めていた。…頑張って…私の二の舞いにならないようにね…。
「はい。こんにちは〜。今日からこのクラスの担任を務めます。フェイトと言います。みんな仲良く学校生活していきましょうね〜」
…入学式が終わった。周りにはアフェ以外の人間…馴染めるかな…。
「それじゃあ自己紹介から行きましょうか。それじゃあ出席番号順から…自分の名前と好きな食べ物について行ってちょうだい!」
好きな食べ物…?…好きな…アフェの作る料理…全部美味しい。決められない。…でもアフェのオムライス好き…それで…いいのかな…。
「これからよろしくお願いしますね〜。それじゃあ次、エーテルちゃん」
「…エーテル・メテールです…好きな食べ物は…オムライス…です…よろしくおねがいします…」
「ありがとう〜。それじゃあ次は…」
…エテルに心臓はない。でもドキドキしていた…それは…感じられた。エテル凄い?機械なのに…心臓がある…ようになってる。…「きんちょう」…ってやつかな。アフェに…教わった…。
「はい。全員の自己紹介が終わりましたね〜。それじゃあちょっとみんなと話しましょう。なるべく全員に話しかけるようにね〜。まずは隣の人から話していこう!」
…隣って…どっち?右?…左?前?後ろ…?みんな…右?あれ…でも左向いている人もいる…列…みんな右向いている…じゃあ…右?
「よろしく〜!おなまえは?」
「エーテル…エテルって…呼んでもいい…」
「じゃあエテルちゃんだ〜!かわいいなまえ!私はフィリアって言うの!」
「あり…がとう…」
次の…人も…次の次の人も…なんとか…喋ること…できた…。みんな…機械だと…疑って…いないのかな…。それなら…まだ…大丈夫…かも…。
「はい。今回の授業はこれで終わり!帰りの支度してね!」
わ〜い!
「わ〜い…!」
…乗せられた…。恥ずかしい…。
「エテルちゃん!いっしょにかえろ!」
「フィリア…ちゃん…?…分かった…」
誰かと一緒に…帰るなんて…アフェ…大丈夫かな…。
「エテルちゃんはどこにすんでいるの?」
「…アフェの…ところ…」
「…アフェ?だれだろ。とりあえずどこかにすんでいるんだね〜!」
漢字…使ってない…難しいことも…言ってない…やっぱり…小学一年生って…こんな感じ…なのかな…。
「あれ〜?おまわりさんだ〜」
「っ!?」
けい…さつ…?何をしにきているの…?とりあえず…エテルには何も関係が…。
「ココ最近で起きている盗難事件のことについてお聞かせ願いたいのですが…」
…え?…嘘…でしょ…?
桜は美しく咲く、でも満開に咲いているのはほんの一時だけ。
感情も虚ろになっていく、変化が激しい代物だから。
白も桜も…感情も…変化しやすい代物なんだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます