第26話 夏のおもいで


 翌日からはコテージで過ごした。

コテージの管理をしてくれている高藤に夏夜を会わせる約束をしていた。

彼は一度夏夜と会っているが、あの時の夏夜は眠っていたし、夏夜がプランニングに入った頃、彼はすでに引退していたから、まあ初対面みたいなものだ。

昼食に高藤の手料理をご馳走になりながら、津島やコテージを作った時の話を聞いたりできた。


 高藤のところから戻ると、コテージの周りを隆が案内してくれた。

真夏でも、この辺りは夜中に窓を開けていれば風邪を引く。

周囲に民家のない山の中では、熊もよく出ると言う。

「あっちは匂いで人が来たって、もう気がついてると思うけど。クロの匂いもあるし。」

「大きかったね、高藤さんの犬。クロって言うんだ。」

「うん、毛の色そのまんま。センスのない名前だよな.....あの犬さ、高藤以外に懐かないの。俺も飼い始めた頃から知ってるけど、いつもあんな調子」

「そう?ちょっと尻尾振ってたよ?隆が信用ないんじゃない?」

そうなのだ。夏夜には少し尻尾を振った。

だから夏夜はちょっと得意そうに、隆をからかっている。

「俺も尻尾振るから…」

木にそっと押しつけて、逃げ道をふさぐ。

そのまま夏夜を抱きしめた。

「だめだよ。外だし、まだ昼なのに」

「こんな山奥、誰もいないよ。」

「でも…ンン」

隆の舌が入って来る。

「りゅ…やっぱり外なんていや、シャワーだってまだ」

唇を離すと、二人を繋ぐ、濡れた細い糸が日にキラリと見えた。ゾクリとする。

慌てたように隆を押し退けようとするが、押されたくらいでビクともしない。

「じゃあ、中行こ。」

ちょっと強引に引っ張って風呂場に行った。

舌を絡ませながら、肌を露わにしていく。

シャワーを浴びながら隆の表情がよく見えた。

明るいうちなんて初めてで、感覚が研ぎ澄まされる気がする。

胸の先に隆の唇が触れる。舌の温かさが血液を逆流させる。小さく摘まれれば、耳を塞ぎたくなるような声が漏れてしまう。

臍の真下、ツツと舌が滑ると夏夜がブルリとして、隆の肩に置いた指先に力が入る。

堪えた呼気が小さな声と共に吐き出される。

何度も唇と舌を沿わせると、ビクビクと下腹部が疼いている。

「可愛い、すごく感じてる。」

「…や…見ないで..」

「どうして?」

足の間にも隆の熱が伝わる。

「ここも....暖かい」

硬さと熱さが、隆にも震えるような感覚を運んでくる。

硬い先端に舌で触れて熱い中に差し込んだ。

「んぁッ...」

思わず漏れた声を塞ぐように、夏夜は手の甲を口に当てた。

「だめ、聞きたい。」

そう言って夏夜の手を口から外す。

今日の隆はいつもよりも、ずっと強く長く足の間に頭を埋めている。

いつの間にか、左の膝は隆の肩にかけられていた。

お腹の中の拍動は痛いくらいに響いてきて、温かいものが湧き上がって、身体中がガクガクする。

勝手に動こうとする自分の体は恐ろしいくらいだ。

「…も…あ」

何かが勢いよく噴き上がるような感じがした。

声を出したのに出ない。息がひきつれる。身体中がボールのように跳ね上がる。

止められない。ダメ、もうダメ。目を閉じることもできない。

「夏夜、可愛い。こんなになって....ね?どうして欲しい?」

嫌々をするようにしながらも、早い呼吸の合間に来てと小さく聞こえた。

膝を思いっきり折って抱え込まれると、隆の規則的な動きがひどく響く。

ひときわ速くなる動きのなか、耳を唇が滑っていく。

自分が何を言ったか、どんな声を出したかなんてわからなかった。

ただ、ただ、震えるまま隆の首にしがみついて。

お腹の真ん中が熱い…隆の拍動が強まる。

「っ…夏夜っ」

強く強く唇をあわせた事だけが、夏夜にわかる感覚だった。


なんて感覚だ。湿った音が響いてそのたびに逆流するように血がたぎる。

「..や..深い...りゅ」

上気して囁かれたら、こんな思いをしてしまったら癖になる。

そうなったら夏夜に嫌われるかな。

でもいい、嫌われてもなんでも。

首に 縋り付いて大きく震えている。

もっともっともっと縋り付け。

夢中で唇を合わせて舌を押し込んだ。


夏夜はバスタブで隆に体を預けていた。

頭の中には靄がかかったみたいになって、何も考えられない。

身体中が痺れ立つこともできず、隆に抱えられてベットに行った。


目を開けると、薄暗い中で隆と目が合った。

「わかる?夏夜。」

コクンと頷いた。

「一緒だった今日。俺はすごく気持ち良かったけど、痛いところないか?」

「痛くない、けど変..いつもより...」

「あれは..いやいいよ。体が素直に感じたんだから。すごく嬉しかった。」

抱きしめてくれる隆がそう言うのならいいんだ、きっと。

手も足も絡ませて抱き締めると、夏夜はぼんやりしていて、スゥッと眠りに落ちていった。それに誘われるように隆もウトウトした。

頭の中が暖かくなって、霞がかかるように目の前が暗くなってくる。

休み明けに影響がない程度にしないと、と思いながら眠りに落ちた。


 春からの疲れはホッとした瞬間に現れたようだ。

翌日の隆は怠くて仕方がなかった。

食料は少しはある。

不慣れなキッチンで夏夜がスープを温めてくれた。

戻る予定の日までに元気になるのだろうか。

ここには体温計もないし。かと言って運転免許のない夏夜は買い物にも行けない。

着信音が鳴っている。

隆の携帯だ。思い切って出てみた。


コテージの前には高藤の車が停めてあった。

携帯に電話をしてきたのはこの人で、麓に行くから必要なものはないかと連絡をくれたのだった。

今、高藤は隆と話をしている。

どう頑張ったって、社会に出れば隆は新人だ。

その上、期待とプレッシャーも大きい。

覚悟をしていたにしても、肌で感じるのは苦しい。

だから、ここに来た。

一時でいい。ほんの少しの解放が欲しい。

それは夏夜にもよく判っていた。


二人が話している間、夏夜は外の色褪せたベンチに座っていた。

昨夜のだるさがまだ残っている。

隣には大きなクロが寝そべっている。

クロの鼻先にそぅっと手を伸ばしていく。

クロのスンスンした鼻息が、手の甲に当たる。

少しそのままにしてから、胸を撫でた。

ダブルコートの毛の下に、かっちりとした躯体。走り回っている犬なんだ。

ベンチから降りて、犬の側にゆっくり腰を下ろす。

クロは逃げずジッとしている。

「君は賢いね。私にも昔、仲良しの犬がいたの。ウールーって言うの。

ウールーはね、雨の中座ってた。長い時間。

もう大きかったけど、泣いているみたいに見えて連れて帰ったの。

私もいる場所がわからなくて、似てたから。

そしたら、義兄様が一緒にお風呂に入れてくれて....秋姉様は飼い主を探すって言ってたけど、結局家にいたの。病気で死んじゃうまで。

君は高藤さんと小さい時から一緒なの?」

クロは真っ黒な瞳でジッと見つめている。

「クロも捨て犬だよ。この辺りは、避暑に来た人間が犬を捨てて帰ってしまうことがある。この子は貸別荘の柱に繋がれていたんだ。。」

クロに話をしているうちに、高藤が側にいた。

ちょっとびっくりした。

彼が側に来た気配がなかったから。

それだけで、この人がどんな仕事をしてきたか解る。

「隆はどうですか?」

「ああ、ただの疲れだよ。心配ない。

ちょっと特殊だから。あなたたちが身を置いているところは。

わかったつもりでいても、やっぱり現実は違うんだよなぁ。あなたなら判るだろう?」

夏夜が頷いた。

「たぶん。全部じゃないと思うけど。私に出来ること、ありますか。」

「そのままでいい。あなたの前では、ヤンチャ坊主でいられる。それが大事なんだ。あなたが幸せでいれば、坊も幸せだ。」

ちょっと微笑んでみせた。

「以前、義兄にも似たようなことを言われました。」

「遥君だね。」

「ご存知なんですね。」

「よく知っている。津島が彼を連れてくるときに一緒だった。たまにメールをくれるよ。」

知らなかった。

この業界は広いようで狭い。

「ここにいる間は、甘えさせてやってくれないかな。坊にはあなたしか気の抜けるところはないから。」

「そんなことでいいなら... いつもは私が甘えっぱなしなんです。でもたまに喧嘩しちゃうと思うけど。」

そう言って笑うと、ふと、高藤が夏夜を背中を反るようにして眺めた。

「失礼。坊に怒られるかな?」

「?」

「坊にはもったいないくらいだなぁと思ってね。これは内緒にね。」

そう言って口を閉じるようにスッと真横に人差し指を引いた。

夏夜はちょっと赤くなった。

そんな夏夜を今度は高藤が微笑んでみている。

「さぁクロ、行くぞ。麓の街で買い物をしてくるから。玄関先に置いておくよ。」

高藤の呼びかけに、クロがさっと立って自分から助手席に飛び乗った。

まるで、この席は自分の場所だと言っているみたいな顔をして、自慢げにチラリと夏夜を見た。

高藤を見送って、大きく背伸びをしてから、コテージに戻った。

夕方から山の空気は冷え冷えしてきた。

ストールを持ってきて良かった。

隆はまだ眠っている。

椅子の上で膝を抱えた。

『社会に出る....か』

デビューしても、会社に行くようになったら、違うんだろうな。

たくちゃんも、綾女ちゃんも。

やがて認められて、そうしたらまた新しいプレッシャーが来て。

私は...大学の後、どうしたらいいんだろう。

何かできること、ないかな。

膝に頭を載せると、ふぅとため息が出ていた。


「起きて、夏夜。」

肩を揺すられて目が覚めた。いつの間にか眠っていた。

外はもう暗くなっていて、虫の声が聞こえている。

ベッド脇のカンテラが点けてある。

「よくその姿勢で落ちないな。体冷えてる。寒いんじゃない?」

「いつ起きたの?具合は?」

「今。起きたらこんな格好で寝てるから。」

椅子の上に膝を抱えたままで、背中がこわばっていた。

随分気温が下がっているように感じるのは、寝起きのせいかもしれない。

「布団に入れば?」

「うん。」

布団の中は隆の温もりがあって暖かかった。

「あ、玄関に高藤さんが買い物を置いていってくれるって言ってた。」

「入れておく。今日は寒いな。ヒーター入れようか。」

「ご飯食べてないからかも。ちょっとあったまったら、何か作るね。」

「作んなくてもいいもの....あ、カップラーメンある。これでいいよ。」

買い物袋をのぞいて隆が言った。

「足りる?いつもはもっと食べるでしょ?」

「うん、まだあんまり食欲ないんだ。今日はこれ食って寝よう。」

二人でカップラーメンを食べた。

この部屋の照明はカンテラだけで、登山小屋みたいな雰囲気だ。

標高の高いところはカップ麺がうまいんだと隆が言っている。

お風呂だけはゆっくり浸かった方がいい。

体もあったまると湯船にお湯を張った。

隆が風呂を使っている間、高藤が買ってきたものを仕分けた。

手を動かしながら「大学のあと」を考えていた。


 コテージでの時間はあっという間に終わった。

明後日からまた仕事に戻る隆は、今夜は自室にいる。

山では、時に小屋の近くまでカモシカがきたりするのを見に、夏夜は早起きしていた。

隆がバテて、昼近くまで寝ていたこともあって起きれたらしいことを、ちょっと言いにくそうに言っていた。

家事もないしとは言っていたが、負担をかけているのかもしれない。

明日は夏夜の夏期のスクーリング日だから、彼女の講義が終わるまでは、中庭で匠と会う予定だ。

夏期休暇中で学生数は少ないから気楽そうだ。

それにこの数日、夜はゆっくり眠っているし。

この間みたいなことにはならないだろう。


 中庭にいる隆と匠のところへ行く途中で、こっちを見ている人がいた。

吉澤麗奈はこうして見ると整った顔立ちだ。

ふんわりした髪の毛先をくるりと巻いて、お化粧も綺麗だ。

短い丈のワンピースは肩が出ていて、艶やかな肌がのぞいている。

コツリ、古い廊下の天井に足音が響く。

ハイヒールの音を立ててゆっくりと近づいてきた。まるで夏夜が逃げるかどうか、試すみたいに。

「こんにちは。奥様」

わざと、ジロジロ見ている。

「こんにちは。あの、その呼び方やめてください。私、夏夜です。」

「へぇ...奥様じゃ不満なんだ。」

「月嶋と夫婦なのは間違いないですが、名前があります。」

「じゃあ、夏夜さん。その体で月嶋先輩の要望に応えることはできてますか?」

「要望?」

「男の人って、特にまだ若い男って、女に色々要望があるものよ。知らないの?

ただ、子どもができればいいってわけじゃないでしょ?」

少し首を傾げるようにして横目で見ている。

麗奈の言っているのは、男女の営みのことだとすぐにわかった。

「昔は人の上を行ってたかもしれないけど、今じゃ身体障害者じゃない。セックスまともにできるの?」

麗奈はせせら笑いながら続ける。

「いいですね。お家って武器があると。同情で推せますもんね?」


夏夜が正面から麗奈を見る。

ヒラリと動いた7部丈シャツワンピ、踝までのスパッツを合わせて、どこか凛として見える。

「吉澤さん、謝罪してください。

三つに対して。

身体に障害をもつ人を侮辱する言葉に。

月嶋家は同情だけで、家族になる人間を選ぶ人たちではありません。

夫が女性に、自身の要望を押し付けつける人間だと言ったことに。」

キッパリとした言葉だった。

「月嶋先輩が、って言ってないわ。」

「それなら男性に。あなたが言うような人ばかりじゃないから。」

「知らないの?男のこと。好きな女にはして欲しいもんよ?先輩だってきっと。守られているっていいなぁ」

「私は守ってもらっています。否定はしません。でも、夫は要望を押し付けたりはしません。もしあなたに要望を押し付ける人が居るなら、それは『あなた』を好きなのではないと思います。」

麗奈がカッとなった。

顔が真っ赤になって、大股に一歩近づいても夏夜は逃げなかった。

なんなの?

前は先輩の後ろに隠れていた癖に!

傷だらけの脚を引きずって、みっともない姿を見せていた癖に!

大きく手をあげた。

バシッと小気味のいい音がした。

振り上げた手を避けるでも、叩かれた頬を押さえるでもなく夏夜は麗奈を見ている。

初めて月嶋夏夜の姿をしっかり見た気がした。

そうしたらわかってしまった。

ああこの人、静かに綺麗で強いんだ。

だから、月嶋先輩...

どうしようもない悔しさと惨めさが湧き上がる。

「あんたなんか!死んじゃえ!!」

一声叫んで彼女は走り去った。


 叩かれた頬は痛い。

『叩かれたんだもの、当たり前か...ホント、守ってもらっていたんだな。

とりあえず中庭に行かなくちゃ....ほっぺたの言い訳、どうしよう...

もうちょっと髪が長かったらな....』

少しは隠せるかもしれないとサイドの髪をできるだけ前に降ろした。


「よぅ、おかえり!今日はうまい具合に会えてよかった。」

隆と匠は大きいサイズのカフェオレを持っていた。

「夏夜も飲む?」

匠が言う。

「うん、買ってくるね。」

「座れよ。たくとも久しぶりだろ?」

隆が席を立った。

「..うん」

「綾がありがとうって言ってた。」

「ありがとね、たくちゃん。私も話ができて嬉しかった。早く会いたいな。」

「クリスマス休暇はガッツリあるって。

ところで....なぁ、ほっぺた、どした?

隆が手を上げるとは思えないけど?」

「...虫刺され 」

「朝はなかっただろ?見せて?」

隆が戻っていた。

顎に手を当てて上を向かせられた。

相変わらずの過保護ぶりだ。

「あのな、夏夜。俺は医者のヒナだよ?ぱっと見、虫刺されで納得すると思う?」

「無理な言い訳だって判るけど、今は言いたくない。たくちゃんにも隆にも。」

二人はちょっと顔を見合わせた。

「わかったよ。」

匠が笑う。

「今の言いかた。前の夏夜って感じ。懐かしいなぁ。綾にも聞かせたいくらいだ。」

今度は夏夜が目を大きくした。

「そんなに変わった?」

隆と匠はまだ笑っている。

「変わってないよ。ね?」

隆を見た。頬杖をして考えている。

「あー、うーん…正直に言うと変わった。俺としては今の方がいいけど。前はきっぱりしてて、取り付く島が無いっていうかさ」

「そんなにツンケンしてた?」

「ツンケンってか。サッパリキッパリザックリ....みたいな。誰かに頼ることもなかったし。」

「なんだか、すごく嫌な人だったんだね、私....」

「そうかな。俺はそういう夏夜でよかったけど。嘘言わないし、裏表ないだろ?

ほら、俺らの周りには女の子がいっぱいいたけど、大多数は俺たちの前で見せるのと、離れてからの顔は全く違う。夏夜はそれなかったからな。」

「そうなの?」

褒められているのかなんだかよくわからない。という顔をしていたのだろう。

匠が夏夜の頭を軽く小突いた。

「前とのギャップが隆を萌えさせるんだってさ。」

顔がかぁっとした。

「どっちでもいいよ。どっちの夏夜でも、俺も綾も好きだから。」

「そう...え..と、ありがと。」

「さて、そろそろ帰るか。たくはまだいるのか?」

「ああ、卒論早く仕上げたいんだ。」


中庭で隆たちとは別れた。

ポケットに手を突っ込んだまま、二人の姿を見送った。

隆の腕につかまって夏夜が歩いて、隆は当たり前に夏夜の歩調に合わせている。

少し前は手を引っ張って居たのにな。

いい夫婦になった。綾と結婚して年を取っても四人でいられたらいいな。


 夏夜の頬は夜になってもうっすらと赤い。

手のひらでそっと触れた。

「痛い?」

「平気。気にしないで。」

「夏夜がそういうなら...」

「...隆はさ、私に色々して欲しい?」

「色々って、前もそういう騒ぎあったけど」

「好き人になら、して欲しい?」

大きなため息をついて隆が答えた。

「頬っぺた、何があったか大体予想がついちゃうんだけど。それはまあいいや。

そうだなぁ、俺は今のままで幸せだけど、夏夜は?」

「隆が大切にしてくれるの知ってるから、幸せ。」

「抱きしめたい。」

「うん。」

夏夜が手を伸ばしてきた。

力一杯抱きしめた。夏夜が腕の中にいるだけでいい。

裸で抱き合っている時も、今みたいな時も.....

隆の腕に包まれながら、夏夜は「彼女」はかわいそうだと思っていた。

好きな人に抱きしめてもらうだけで、こんなに安心するのに...

綾女ちゃんもたくちゃんに会いたいだろうな。抱きしめて欲しいだろうな。

今夜の隆はとても優しかった。

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