第21話 アイドルの奴隷は幸せ?



「私の奴隷になりなさい」



女がそう発した。



「今・・・なんて言った?」


「だから、私の奴隷になりなさいって」


「奴隷?奴隷って何するんだよ!まさか私の夜の相手になりなさいとか!?」


「そんなエロ漫画みたいな展開あるか!」



ビシッ!と怒られる。



「私が呼べばすぐに来る奴隷ですよ」



女が当たり前のように話を進めていく。



「主に私の家のことをお願いします。私が仕事でいない時は掃除と洗濯しといて下さいね」


「嫌だよ!」


「あなたに拒否権はありません。いいんですか?あなたと姫野凛の関係を週刊誌にリークしますよ?」



女がニヤニヤと挑発してくる。



「っていうか、別に家が隣だしいいでしょ?あなた、仕事してなさそうだし」



見事に見抜かれている。



「た、確かに凛のヒモで家にずっといるけど!」


「なら好都合ですね。じゃあ、用がある時は呼びますから」



女はそう言って自分の家に入ろうとする。



「ちょっと待ってって!」


「奴隷が許可なしに話しかけないでください」



早速奴隷扱いされる。



「あと私の名前、三島蛍です。覚えておいてください」



 三島はそう告げると家に入って行った。

一人その場に取り残される。


 ズーンと重い気持ちを引きずりながら、

隣の自分の家に入っていく。


 靴を脱いですぐさま床に倒れ込む。

最悪だ・・・

凛の妹の鈴ちゃんに続いて、彼氏バレ2人目だ。


 まさか隣に凛のライバルのアイドルグループが住んでるなんて。

それに俺と凛の夜の営みを聞かれていたとは。

・・・恥ずかしい。


 心配事が頭をぐるぐる回る。

まあ三島が黙っておくための条件を出してきたのは不幸中の幸いだと考えよう。

でもその条件が奴隷になることなんだけどな。


 とにかく今は切り替えよう。

立ち上がって玄関に置いてある靴をシューズラックに戻す。


 外に出たという痕跡を消さなければ。

換気扇をつけて部屋の空気を入れ替える。

全て終了して一息ついた時だった。



「ただいまー!」



 凛が帰ってきた!

すぐに玄関へ迎えにいく。



「おかえりー!」


「うんただいま!いやー、疲れた!」


「そうだねそうだね!荷物持つよ!」



 凛の持っている荷物をササッと受け取る。

なぜか罪悪感がすごい。

まるで浮気したような気持ちに陥る。



「なんか今日はいつにも増して尽くしてくれるね」


「そんなそんなぁ!凛はいっつも頑張ってるから!」



 よかった。

外に出たのはバレてないようだ。



「ありがとね!・・・ん?」



凛が玄関をキョロキョロしている。



「・・・なんか変」



 あがががが!

なんて鋭いやつだ!

何かを感じている!

 

 凛が玄関のシューズラックを見ている。

まずい!俺が履いて行った靴に違和感を感じている!



「あー!今日掃除してたからかな?それより早く中に入ったら?」



必死に誤魔化す。



「掃除して動かしたからか!なんかいつもと違うなと思ったのよ!」



凛が笑顔でリビングへ移動する。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




お風呂上がりの凛にマッサージをしてあげる。



「いつもお疲れ様〜」



 そう言いながら凛のすべすべな太ももを揉みほぐしていく。

今日はいつもよりも念入りにマッサージしていく。



「血液とかリンパのマッサージは大事なんだよねー」



 凛が気持ちよさそうな顔をしている。

俺も嫌な気持ちは全くしない。

だって大好きな彼女の、ましてや大人気アイドルだからな。


 どんどんと足の付け根に移動していく。

この内ももが一番触り心地がいいんだよな。



「ちょっとー!」



 凛が笑いながら拒否する。

でもこれはもっとやって欲しいの合図だと知っている。

そのまま続けていると、



「ねぇ・・・」



 凛が甘えるような声を出して俺にもたれかかってくる。

・・・これはそういうことだ。


 ニヤつきながら凛の体に触れようとしたが、

ふと今日の三島の言葉を思い出す。



ー あんたらですか!いっつも喘ぎ声がうるさいのは! ー



 隣人の三島にはがっつり聞こえているらしい。

今日は声を抑えていこう。

そう思いながら凛を連れてベッドに移動した。

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