第14話 アイドルの妹は確定で可愛い
ピンポーン。
突然、俺の睡眠を邪魔する音が家に響く。
なんだ?
ベッドからムクムクと起き上がる。
ヨボヨボした足取りで玄関へ向かう。
凛は朝からテレビの収録に行ったはずだぞ。
こんな時間に帰ってきたのか?
時刻は昼前。
玄関を開けようとするが、
その前にのぞき穴から外を確認する。
前にマネージャーが突然来たこともあったし油断はできない。
誰かに彼氏である俺の存在がバレてはいけないからな。
しかし外には誰もいなかった。
ん?どういうことだ?
不思議に思いながらも玄関をゆっくり開けて外を確認する。
キョロキョロと見渡すが誰もいない。
もしかしていたずらか?
でもここは芸能人もいっぱい住んでる高級マンションだぞ。
そんなことする奴がいるとは思えない。
「あなただれ?」
え、今誰か喋ったよな?
「しただよ」
下を向くとそこには小さな女の子がいた。
ぱちくりした目に黒髪ロングで体に見合わない大きなカバンを背負っている。
幼女だ・・・
「え、えっと・・・君は誰?」
「ひめのすず」
ひめのすず?
姫野って凛の苗字だぞ。
え、もしかして・・・
よく見たら顔のパーツが所々、凛に似ている。
「凛の妹なの?」
「うん」
「え、まじで!?」
まさか凛に妹がいたなんて。
今までそんなこと知らなかったぞ!?
「と、とにかく中に入りな?」
凛の妹を中に招き入れる。
ちょこちょこと歩いて入ってくる。
「凛って妹いたんだ・・・っていうかどうやって来たの?一人?近くに住んでるの?」
凛の妹は俺の質問を全く聞いておらず、
リビングの中をキョロキョロしている。
「おねえちゃんは?」
「あー・・・お姉ちゃんはお仕事に行ったよ」
それを聞いた凛の妹はじっと俺を見ている。
まあ仕事に行ったお姉ちゃんの部屋に見知らぬ男がいたら警戒するよな。
「・・・あなただれ?」
うーん、どうしよう。
彼氏とは言えないしな。
凛の妹と言っても油断はできない。
「お姉ちゃんの友達だよ!」
「ともだち・・・」
まだ疑ってる様子だ。
「なんでおねえちゃんのへやにおとこのふくがあるの?」
あ、まずい。
「る、ルームシェアしてるんだ!」
子供なのになかなか鋭いな。
「・・・そうなんだ」
それを聞いて安心したのか、
凛の妹のすずちゃんは部屋の中を散策し始めた。
勝手に押入れや冷蔵庫を開けたりしている。
「お昼食べた?」
「たべてない」
「何か作ってあげるよ!リビングでテレビでも見ながら待ってて!」
すずちゃんを大人しくさせる。
俺に誘導され、リビングのソファーにちょこんと座った。
キッチンに移動し、焼きそばを作り始める。
すずちゃんは静かにテレビを見ている。
にしても、まさか凛の妹が訪ねてくるなんて。
背格好的に小学校低学年だろうか。
そんなことを考えながら料理を進める。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「はい!できたよ!」
テーブルに焼きそばの皿を乗せる。
すずちゃんはキラキラした目でそれを見ている。
「いただきます」
そう言うと勢いよく食べ始めた。
口をいっぱい汚して焼きそばを食べている。
「すずちゃんは小学生?」
「うん。しょうに」
「そうなんだ!家はどこらへんなの?」
「とうきょう」
東京のどこなのかを聞いてるんだけどな・・・
「すずちゃんは何しに来たの?」
その質問をした途端、
すずちゃんの表情が暗くなり、箸を止めた。
「・・・ままとけんかした」
「え、喧嘩?家出してきたってこと?」
こんな小さい子が?
凛のお母さんも心配してるだろ。
気づけば、すずちゃんは目に涙をいっぱい浮かべていた。
「だ、大丈夫だよ!」
頭をさすってあげる。
「なんで喧嘩したの?」
「・・・わたしもあいどるになりたいっていったらだめって」
この子もアイドルになりたいのか。
すずちゃんは今にも泣き出しそうだ。
「お姉ちゃんみたいなアイドルになりたいんだね!」
「・・・うん」
「なれるよ!だって凛の妹なんだから!」
その言葉が嬉しかったのか、涙は引っ込んでいた。
「お姉ちゃん、夜には帰ってくるから!それまでお兄ちゃんと遊ぼっか!」
それからは一緒にゲームをしたりアニメを見た。
俺もこの家の初めての来客でワクワクしていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ただいま〜」
夜、
凛が帰ってきた。
アニメを見ていたすずちゃんが玄関に走っていく。
「おねえちゃん!」
凛に抱きついた。
「すず!?なんでいるの!?」
凛が驚きの声をあげる。
「なんか家出してきたみたい」
「家出!?お母さんは知ってるの?」
「わかんない・・・だまってきたから」
凛があたふたしている。
「このひとだれなの?」
すずちゃんが言った。
俺のことだろう。
「さっきも言ったけど友達だよ!ルームシェアしてるんだよ!」
凛に話を合わせろと目で合図する。
「そ、そう、友達なの!一人だと大変だから色々面倒見てもらってるの!」
よし、口裏を合わせたぞ。
これで安心だ。
「・・・うそつき。かれしでしょ」
すずちゃんが俺を睨んでそう言った。
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