第15話 彼氏バレ第1号



「・・・うそつき。かれしでしょ」



すずちゃんが俺を睨んでそう言った。



「な、何言ってるのすず!?そんなわけないでしょ!?」


「そうだよすずちゃん!俺たちはただの友達だから!」



2人で焦ってすずちゃんを納得させようとする。



「でも、るーむしぇあっておかしいじゃん。おんなのことするもんじゃないの?」



すずちゃんが凛を問い詰めている。



「違うの!私たちとっても仲がいいのよ!男女の友情ってやつ!」


「・・・だんじょのゆうじょーはふつうせいりつしないよ」


「成立するよ!すずはまだ子供だからわからないの!」



 完全に凛が押されてる。

このままじゃ彼氏だとバレるのは時間の問題だ。



「すずちゃん!」



俺の声に反応したすずちゃんがこちらを向く。



「よく聞いてくれ、実は俺は凛の友達じゃないんだ・・・」



凛が、首を横にブンブン振ってダメダメ!と合図している。



「やっぱりかれしなんでしょ!」



すずちゃんが問い詰めてくる。



「・・・俺は凛とすずちゃんの生き別れた兄なんだよ!」



2人が口をぽかんと開けて驚いている。



「黙っててごめんね・・・」



凛も流れに乗って泣く芝居を始めた。



「は?ふざけないで。おまえがわたしのおにいちゃんなわけないじゃん。きも」



 すずちゃんから言葉の右ストレートが飛んでくる。

俺の考えた言い訳はあっさり打ち砕かれた。



「じゃあこのしゃしんはなに!?」



 すずちゃんに手には俺のスマホがあり、

そこには俺と凛のキス写真が写っていた。



「ああああ!」



凛の絶望の声が聞こえる。



「ともだちどうしでちゅーしないでしょ!?」


「違うんだ!実は俺は女で!」


「もういい・・・」



言い訳しようとする俺を凛が止めた。



「すずの言う通り、私たちは付き合ってるの」



 凛が俺との関係を認めた。

初めてだ、誰かに付き合ってるのがバレたのは。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 俺と凛はリビングに正座させられた。

目の前には腰に手を当てて怒っているすずちゃん。



「あいどるはかれしつくっちゃだめなんだよ!」


「はい・・・ごめんなさい・・・」



2人でペコペコと頭を下げる。



「・・・ままにいう」


「ダメ!それだけはダメ!」


「言ってもいいんじゃない?凛のお母さんなら大丈夫でしょ」


「・・・私に彼氏がいるって知ったら絶対別れろって言うから」



 まあそうか。

娘の将来を考えるとそうなるか。



「お願いだからお母さんには言わないでぇ〜」



凛がすずちゃんに抱きついて懇願している。



「じゃあじょうけんがある」



すずちゃんが言った。



「わたしがあいどるになるのてつだってくれたらいわない」



アイドルになるのを手伝う?



「え、すず、アイドルになりたいの?」


「・・・うん。でもままにはんたいされたからいえでしてここにきた」



そうか、凛は聞いてなかったのか。



「手伝うって具体的には?」


「だんすとかうたとかおしえてほしい」


「それでいいの!?それなら全然いいよ!」


「・・・ほんと?」


「うん!現役アイドルのお姉ちゃんがすずに特別に教えてあげる!その代わり、彼氏のこと絶対にママに言っちゃダメだよ?」


「わかった」



 凛とすずちゃんが硬い握手を交わした。

ここに契約が成立したのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る