第11話 アイドルの配信には横に彼氏がいます
それは突然だった。
俺が昼寝をしていた時のこと。
「かーくん!起きて起きて!」
突然、凛に叩き起こされる。
「な、なにぃ?」
寝ぼけた体で起き上がる。
「今日、配信しに事務所行くって言ってたでしょ?」
「う、うんそれがどうしたの?」
確かに凛は今日、配信の予定があって事務所に行くって言ってたな。
「実は急に事務所で配信できなくなって、家で配信してほしいって言われたの!」
家で配信?
それがどうしたんだ?
「うん、別にすればいいんじゃない?」
「もう!なんでそんなに能天気なの!」
「え?なんかやばいの?」
「やばいよ!だって彼氏と同棲してるってバレるかもしれないじゃん!」
「バレないでしょー」
「バレるかもしれないじゃん!と、とにかく準備しないと!」
凛は慌てふためいている。
テーブルの上に三脚、そして証明を設置し、
配信の画角に映る範囲に彼氏の痕跡がないかをチェックしている。
「もう始まるの?」
せかせか動いている凛に話しかける。
「うん!準備できたら始めてほしいって!」
凛が〜よし、〜よしってブツブツ言ってる。
「おっけー!準備出来た!」
「はーい、俺はどうしたらいいの?」
「向こう行ってて!あと絶対に喋っちゃダメだからね!」
「えー・・・やだ」
「なんでよ!」
「・・・膝枕してくれ」
映るのは凛の上半身だけだ。
膝枕くらいならバレないだろ。
「もー!ダメだって!」
「お願いお願いお願い!絶対バレないって!」
「・・・わかったから。その代わり声出さないでね?」
凛が渋々OKする。
「やったー!」
そう言って凛の太ももに飛び込む。
色白ですべすべの太ももに顔をうずめる。
なんかいい匂いがする。
「ほー、これがアイドルの太ももですか」
「もー、変なこと言わないで!それじゃあ配信始めるからね」
凛が配信開始のボタンを押す。
・・・始まったのか?
「みなさーん、聞こえてますか?」
凛が画面の向こうに呼びかける。
俺もスマホで凛の配信を見てみる。
配信では凛の上半身が映ってる。
凛の後ろにはいつも俺たちが座っているソファーがある。
変な感じだな、いつも使ってるものが配信されてるなんて。
「こんにちはー!みなさん元気ですか?」
コメントで、
「凛ちゃーん!」「今日も可愛いね!」「あれ?いつもと違う場所?」
とかコメントが流れてる。
「コメントでもう気づいている方もいるけど、今日は実は自宅から配信してます!」
相当珍しいことなのか、
コメントは大興奮だ。
「マジか!」「すげーー!」「こんな部屋なんだ!」
などバァーッ!とコメントが次々と流れる。
「自宅で配信するなんてちょっと恥ずかしいですね」
そんなことを言いながら手を振っている。
が、凛はもう片方の手で俺の頭を撫でている。
あー、気持ちいいな。
ファンの方は知らないんだろうな〜
彼氏を膝枕しながら配信してるなんて。
なんでだろう。
やはりこういうのはめちゃくちゃ興奮する。
とてつもない優越感が俺をゾクゾクさせる。
・・・なんか俺にしかわからない、いたずらしたいな。
バレるかもしれないというヒヤヒヤ感が俺を動かす。
ゆっくりと凛の色白な太ももを撫でる。
くすぐるように、そして気持ちよさそうに。
「んっ、んんっ」
凛が声を漏らす。
ギューッ、と耳を引っ張られる。
痛い痛い!声には出さないが、口パクでごめん、と伝える。
「今日寒いよねー。私冷え性だから」
凛のトークが始まる。
凛は俺の頭を撫でたり、手を繋ぎながら配信をしていた。
凛の膝枕が気持ちいいせいか、なんだか眠くなってきた。
配信に映らないように大きく伸びをすると、
ガタンッ!と足元にあるゲーム機を蹴ってしまった。
あ、まずい。
すぐにスマホの配信のコメントに目をやると、
「え、何の音!?」「大丈夫?」「だ、誰かいるの?」
と流れていた。
「ごめんごめん!足元にあるゲーム機蹴っちゃった!」
凛がそう弁解している。
「じゃあ、もうこんな時間だから、今日は終わりかな!」
コメントで、
「えー」「早いよー!」「まだやってー」
と流れている。
「それではみなさん!ありがとうございました、またね〜」
凛が終わりの挨拶をする。
・・・終わったか?
「・・・かーくんっ!」
膝枕をしてもらってる凛に上から鬼の形相で睨まれる。
「ごめんごめん!つい調子に乗っちゃって!」
「もー!バレたらどうするの!」
「でも、バレないかって興奮したでしょ?」
「・・・まぁ、したけど」
凛が恥ずかしそうに呟く。
「やっぱり!これからは家でずっと配信してよ!」
「やだ!今日で最後だから!」
たまにはこういうドキドキするのもいいな。
ファンのみんなも推しのアイドルが自宅で配信している時は、
彼氏を膝枕しながら配信してるかもしれないと思っとけよ〜。
そんな上から目線なことを考えながら、凛の太ももにもう一度顔をうずめた。
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