第5話 軟禁からの脱出


 ベッドの上で寝転びながら腹を抑えてスマホをチェックする。

凛の作ってくれた朝ごはんを食べ過ぎて腹が一杯だ。


 凛は今日、アイドルの友達と出かけるらしい。

昼ごはんを友達と食べてその後ショッピングに行くとのこと。


 いいなぁ!楽しそうで!

俺を軟禁して自分だけ出かけやがって!

もっと俺のことも気にしてくれよ!

じゃないと黙って外に出てやるぞ!


 出かける用意が終わったのか凛はボーッっとテレビを見ている。

そんな凛をバレないようにギッと睨みつける。



「そうだ!」



 凛が思い出したかのように急に立ち上がる。

バタバタと足音を立ててクローゼットの方へ向かう。

クローゼットを開けてなにやら大きな箱を取り出してきた。

それをテーブルに置いて眺めてニヤニヤしている。



「なにやってんだ?」


「ん〜?いいでしょ〜?」



 高級感のある箱だな。

なんだろこれ。

結構頑丈そうだ。



「なんなんだよこの箱」



 凛が箱を開け始める。

箱の中にはフィギュアが入っていた。



「なにこのフィギュア」



 フィギュアはカラフルな髪にアイドルのような服装で、

片手を突き上げてポーズを決めている。

顔のパーツも何パターンもあって取り替え可能のようだ。



「これ今大人気のアニメのボリキュアの限定フィギュアだよ?昨日帰りに並んで買ったんだから!」



 凛が両手を腰に当てて自慢そうにしている。

確かに昨日の凛は帰りが遅かったな。

これを買ってたのか。

凛がフィギュアをテーブルの上に置いて写真をパシャパシャ撮っている。



「へー、限定フィギュアかー。ちょっと見せてよ」



ベッドから起き上がってフィギュアに手を伸ばす。



「ちょっと触らないで!」



パシンッ、と手を叩かれる。



「あたっ!これそんなに大事なものなの?」


「そうだよ?絶対に触らないで」


「はいはい」



 あとでこっそり触ってやろう。

凛がフィギュアを丁寧に箱に戻してクローゼットにしまった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「じゃあ私行くから。帰る時間いつになるかわからないの、もしかしたら夜ご飯も外で食べるかも」


「いってらー」



 凛が玄関から出て行く。

・・・あのフィギュア見てやろー。

クローゼットから先ほどのフィギュアを取り出す。


 ほぉー、

近くで見ると結構すごいな。

フィギュアにしては大きいし、作りも細かい。

気にせずにベタベタ触ってるが、まあいいだろう。


 このフィギュアはヒラヒラのスカートを履いていて、

スカートからスラっと足が伸びている。

クルッと持ち上げて足を自分に向ける。


 パンツを確認する。

男なら誰でもやるだろ。


 しかしギリギリ、フィギュアのスカートが足にくっついていて奥が見れない。

でも奥に感じる、存在を。

男としてここで諦めるわけにはいかない。


 フィギュアの足を持って拡げる。

ギチギチッと、ゆっくりだが足が開いていく。

もう少し、もう少しだ!


 そうして奥に何か白いものが見えた時。

バキッ、

何か嫌な感触が手に伝わった。

あら?


 ・・・まさかな、いや、そんなまさか・・・頼む。

恐る恐るフィギュアを見るとそこには、

足の折れた限定フィギュアがあった。

冷や汗が流れる。


 やったわ。

終わった、殺される。

これは二度と外に出れないかもな。

テーブルの上に片足の折れたフィギュアが転がっている。


 まずい、まずい、これは非常にまずい。

とりあえずネットで売ってるか調べてみる。

一応限定ものとして高値で売ってはいる。

でもダメだ、今買ってもすぐに届かない。

凛が帰ってくるまでに元に戻さないと。


 そうだ、凛は昨日並んで買ったっていってたな。

もしかして今日も売ってるんじゃないか。

そんなわずかな希望を胸に抱く。

・・・買いに行くか。


 いや、いいのか?

もし外に出たのが凛にバレたらシャレにならないぞ。

でも短時間だ。

フィギュアを買ってすぐ帰ってこればいい。



出るか、外に。

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