第4話 アイドルの彼女は束縛が強い
今日は凛の仕事が休みでオフの日。
ということで朝も遅くまで一緒に寝ていた。
まあオフだからといってどこかに出かける訳ではない。
一緒に出かけるとバレるからな。
それに2人もインドアだから。
でもさすがにインドアの俺でもこんなに長いこと軟禁されてたら外に出たくなる。
「どっか一緒に出かけたいな」
「うーん、私だってもちろん出かけたいよ?一緒に水族館行ったり遊園地行ったり、でも・・・」
まあそうだよなぁー、俺は軟禁されてますから。
「家を出る時間をズラしたらバレないんじゃない?」
「ダメだと思う、張り込まれてるかもしれないし」
「でもただの同じマンションの住人だと思われるんじゃない?」
「ううん、なんでかわかんないけど絶対バレる。こういう記事見たことない?」
凛が急に記事のモノマネをし始めた。
「あの国民的アイドル姫野凛、フリーターと巣篭もり愛か!?」
「確かにそんな記事見たことあるかも!あと俺のことフリーターっていうのやめろ」
「大人気アイドル、ヴィーナスのエースメンバーであり、超絶美少女と話題の姫野凛。実は彼女には隠し続けた男性がいた!」
「自分のこと持ち上げすぎだろ」
凛のモノマネは止まらない。
「先月の早朝、オートロックのマンションから先に出てきたのは姫野。マスクに深く帽子を被り、コソコソと最寄駅へと向かった」
うんうん、それっぽいな。
「少し遅れて出てきたのは覇気がなく、猫背でみすぼらしい服の男性。なんとこの男性が姫野の彼氏なのだ!」
ん?怒っちゃおうかな?
「どう?こういう記事あるでしょ?」
「確かにある気がするけど」
何か良い方法はないか?
どうにかしてこの軟禁から脱出したい。
「それにバレずにマンション出れても、出かけた先で一緒にいたらバレるよ」
「そっかー、マスクにサングラスでもダメ?」
「ダメだと思う。こういう記事あるでしょ?国民的アイドル姫野・・・」
「もういいから!」
またモノマネが始まる前に制止する。
「アイドルに限らず、芸能人は大変だねー。街で声とか掛けられないの?」
「たまにあるよ。握手してくださいとか。断ってるけど」
「えー、断るんだ」
「うん。握手会やってるからね」
そうだ、ヴィーナスは握手会やってるんだ。
1日数万人と握手してる。
握手にお金とってるから断るのか。
「ナンパとかもされるよ、これもたまにだけど」
「マジで!それって凛のこと知ってて?」
「ううん、知らないでだと思う」
「すげーな。ナンパ相手がアイドルなんて。芸能界ではないの?」
「めっちゃあるよ。俳優さんとか偉い大人にね」
「え、マジか。闇だな」
「闇だね」
偉い大人って相当年上だろ?
そんなおじさんがアイドルと関係持ちたがるのか?
「でもアイドルの大先輩が言ってたじゃん。恋愛禁止のアイドルに近づくなんて悪い男に決まってるって」
「確かに男は恋愛禁止って知って近づいてくるからな」
「あとみんなプライド高いの。なんか上から付き合ってやるよみたいな感じでくる」
すげー生々しい話だな。
「所詮顔だけの男よ。それに比べてかーくんは優しくて最高!」
そう言って腕に抱きついてくる。
「俺ってかっこいい?」
「私はかっこいいと思うよ?」
私は?それってどういう意味?
詳しく教えてくれる?
「そうだ。スマホ見せて」
「・・・え?」
腕に抱きついている凛が顔をこちらに向けて言ってくる。
まずい、今日だったか。
恒例の抜き打ちスマホチェック。
「あー、ちょっとスマホどっか行っちゃったなー」
「嘘つかないで、はやく」
そう言って手を差し出してくる。
「ワタシ、ニホンゴワカラナイデス」
「ふん!」
鋭いエルボーが脇腹に飛んでくる。
ぐっ・・・暴力的だ・・・
アイドルとは思えない。
「はい」
仕方なく凛にスマホを渡す。
スマホを受け取った凛はすぐに操作を始めた。
ロック画面のパスワードは凛の誕生日に設定してある。
これは半ば強制的にやらされた。
まずはメッセージの確認からだ。
俺がどんな人とやりとりしてるかを逐一チェックしてくる。
「異常なし・・・と」
よかった。
「あ!ちょっと!メッセージ消してって言ったよね?」
やばい、忘れてた。
凛は俺と凛のやり取りの履歴を消せって言ってくる。
「流出したらどうするの?」
「あの〜、別に流出しないんじゃ?」
恐る恐る聞いてみる。
「ん?なんか言った?」
凛さん、目がギラギラしてます。
「なんでかわからないけど流出したりするの!我慢して!」
次は検索履歴のチェックだ。
残念だったな、シークレットモードで検索してるから残らねぇーよ!
「何これ」
検索履歴に「彼女 束縛 うざい」と出ていた。
まずい!普通に検索してた!
「違う、俺じゃないの!俺の中の潜在意識が勝手に指を動かしたの!」
「訳わからないこと言わないで!」
凛が抱きついている腕を綺麗に捻って腕ひしぎを決めてくる。
あれ?格闘技やってました?
「あだだだだ、ごめんなさい!嘘です!束縛好きです!」
凛の柔らかい太ももの感覚が伝わってくるが、今はそんなの気にしてられない。
「2人のっ、ためっ、だからぁ!」
いたああああ!
俺の声が部屋に響いていた。
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