第3話 嫉妬に狂うアイドルの彼氏
凛は今日も朝早く出て行った。
今日はMV撮影だとか。
日帰りだけど結構遠くまで撮影に行くらしい。
昨日の夜もダンスの確認を何回もしてた。
アイドルは大変だなー。
凛がいない間に録画したテレビでもみよっと。
凛は自分の出た番組を全て録画していて、ちゃんとチェックしている。
たまに見ながらもっとこうすればよかった!って反省してる。
本当に努力家で完璧なアイドルだな。
俺という彼氏がいること以外は。
録画されている番組を確認する。
長年続く、有名なバラエティ番組。
番組のゲストが様々なゲームにチャレンジするやつ。
この回はゲストとしてヴィーナスが出演していて、もちろん凛も出ている。
見るか、面白そうだな。
再生すると、バラエティ番組らしい楽しそうな音楽が流れる。
ヴィーナスの他にもドラマチームとして女性に人気の新人俳優が出演していた。
凛と新人俳優が並んで司会者のゲームの説明を聞いている。
・・・この新人俳優、ちょっと凛と距離近くないか?
テレビに顔を近づけてよく見る。
まあいい、こんな俳優に凛は興味ないだろう。
ヴィーナスの他のメンバーがゲームにチャレンジしている。
凛の顔が右上のワイプで抜かれている。
ん?右を向いて誰かと話してるな。
・・・ちょっと待て!そっちにいるのはさっきの俳優だ!
カメラが引いて会場全体が映し出されると、凛が新人俳優と楽しそうに話していた。
おい凛!なに話してるんだ!
テレビの画面のギリギリまで顔を近づけて見る。
その時、ヴィーナスのメンバーがゲームをクリアして会場が大盛り上がりに。
それに乗じて凛と新人俳優がハイタッチをした。
おい!ハイタッチした!ハイタッチしたぞ!
俺の中で嫉妬心がどんどん膨れ上がる。
2人も笑顔でとても楽しそうだ。
このやろ!凛に近づくな!
「離れやがれ!」
テレビの前でそう叫ぶ。
まあ、その叫びは届かない。
番組はトークコーナーに。
「実は僕、いつもヴィーナスさんの曲聴いてるんですよー」
新人俳優がヴィーナスの曲を普段聴いていると言ってやがる。
おめぇなんかが聴くんじゃねぇ!シャバ増が!100年早いんだよボケェ!
司会者が凛に感想を求めている。
よし!凛!ボロクソに言ってやれ!
お前なんかに興味ねーよって!
「本当ですか!?嬉しいです!」
くそがぁ!
部屋に倒れこむ。
その後も凛とその新人俳優の仲が良さそうなシーンが何度か流れた。
心配にもなる。
だって俺よりもかっこいいし身長も高くて金も持ってるんだし。
俺が勝てるとこなんて一つもないんだし。
俺のこと軟禁して外に出さないくせに、
自分は俳優とイチャイチャしやがって!
これはあれをやるしかない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
時間は夜遅く。
そろそろ凛が帰ってくる頃かな。
そんなことを考えていると、
ガチャ、鍵を開ける音が聞こえた。
帰ってきた!
急いで電気を消して部屋の隅に移動する。
部屋の隅で三角座りして拗ねている様子をアピールしてやる。
「ただいまー、遅くなっちゃったー。MV撮影長引いちゃって」
返事をしない。
「あれ?かーくん?」
凛が部屋の電気をつける。
部屋の隅で三角座りをしている俺の登場だ。
「どうしたの!?電気も消してそんなところで・・・」
凛が心配そうに近づいてくる。
グスンッグスンッ、と泣いているフリをする。
「泣いてるの?何があったの?」
優しく語りかけてくる。
「これっ・・・これっ・・・ヒグッ、見た・・うっ・・・よ」
「何を見たの?」
例の録画を再生する。
バラエティ番組の楽しそうな音楽が流れる。
「凛っ・・・このっ俳優とっ・・うぅ・・・仲良くしてたっ!」
ちょうど凛と新人俳優がハイタッチするシーンが流れる。
「違うの!テレビだったから、しょうがなくて!」
「俺・・・ヒグッ・・・傷ついたっ・・うぅ・・・もう外出るっ・・・」
「ご、ごめんね、これからは気をつけるから!ね?機嫌直して?」
「・・・うぅ」
「ほんとにごめんね、こんな俳優まったく興味ないから安心して?」
よし、これ以上はやめておこう。
凛に抱きつく。
凛がごめんねぇ〜と言いながら俺を抱きしめて頭を撫でている。
はい、作戦成功だ。
我ながら最高の演技だった。
今からでも俳優になろうかな。
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