第2話 彼女のライブ配信をこっそり視聴
チュンチュン、鳥のさえずりで目が覚める。
ぼやけた目をこすって天井を見つめる。
スースー、隣で寝息が聞こえる。
凛はまだ寝ているみたいだ。
こちらを向いてスヤスヤ眠っている。
もちろんスッピン。
でも全然変わらないと俺は思う。
やっぱアイドルなだけあって可愛いな。
彼氏だけが見ることのできるこの寝顔。
そーっと、ほっぺたをつつく。
プニプニだ。
んー、
凛が言葉になっていない声をあげる。
ゆっくり目を開けて俺を認識する。
それでも構わずにほっぺをつつき続ける。
「もー、なにー?」
「おきろー、朝だぞー」
「んぁー」
無防備だな。
今日はライブ配信があるらしい。
アイドルはよくライブ配信を行なっている。
それはファンとの交流のためだ。
凛の所属するヴィーナスもライブ配信を積極的に行なっている。
「今日はどーしよっかなっ!」
俺の前で下着になって服を選んでいる。
バランスよく引き締まった上半身に、
色白で健康的な足がスラッと伸びている。
綺麗な黒髪と真っ白な肌が良いコントラストを生み出している。
凛のファンが死んでも見たい光景だろう。
俺にとっては日常茶飯事だが。
「んー、どーしよー」
クローゼットと向かい合っている。
「これがいいんじゃない?」
近寄って俺のオススメを言う。
「好きだねー、これ」
首元がざっくり開いた白のモコモコの長袖。
「好きなのよ、これ」
「じゃあこれにする」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「行ってくるから、終わったらスーパーで買い物してすぐ帰ってくるし。夜ご飯何がいい?」
「んー、ハンバーグで」
「はいよー」
凛が玄関のドアノブを握って立ち止まる。
「・・・わかってるよね?」
外に出るなってことだな。
「はいはい、わかってますよ」
「ならよろしい!行ってきまーす」
アイドルの仕事に向かう凛を見送る。
相変わらず外には出してくれない。
もうこれは軟禁ではなく監禁なのでは?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺は今日も家でゴロゴロする。
もちろん自分の役割である掃除、洗濯とかの家事はしてる。
凛のお金で暮らしているからな。
でもそんなに時間はかからない。
だから他の時間はゲームしたりテレビ、アニメ、映画などを見て過ごしている。
まあ俺は元々スーパーインドアだから苦痛ではない。
でもたまーに外に出たくなる。
しかし2人のためと思ってその気持ちを必死に抑えている。
ふと時計を見る。
そろそろ凛の配信の時間か。
・・・せっかくだし見てみるか。
配信アプリを開いて凛の配信部屋に入室する。
もうすでにたくさんの人が待っているみたいだ。
コメントで、
「はやくー!」「楽しみ!」「凛ちゃーん!」
といったコメントが流れている。
俺もコメントしてみよ。
「凛ちゃーん!大好きだよー!」
まさかファンの人もこの中に彼氏がいるとは思うまい、グハハ。
画面が切り替わって凛の顔が映し出された。
「みなさーん、映ってますかー?」
聞き慣れた凛の声だ。
コメントでは、
「凛ちゃんきたー」「聞こえてるよ!」「今日も可愛い」
などのコメントが勢いよく流れている。
目で追うのが難しいぐらいだ。
「よかった!ヴィーナスの姫野凛です!みんなお疲れ様ー、今日は何してた?」
いつも一緒にいるのに画面越しで見るのはなんか変な感じだ。
なんか画面越しだとめっちゃ可愛く見えるんだよなー。
ライトとかの関係もあるのかな?
まあ実物も可愛いが。
っていうか、5万人もみてるじゃねーか!
こういうので凛は本当にアイドルなんだと感じる。
コメントで、
「お仕事!」「学校!」「ゴロゴロしてた!」
などと流れてる。
「みんなどこでこの配信見てるの?」
凛が視聴者にそう問いかける。
「仕事中!」「バイトの休憩中だよ!」「家です」
みんな反応が早いな。
俺も送ろう。
「凛の家だよ」
なんか怖いが、本当のことだしな。
「今日の服見せてって?今日の服はねー」
そう言って凛が服を見せてくれる。
「いいでしょ、このモコモコ。お気に入りなのー」
「可愛い!」「センスいい!」「欲しいなー!」
というコメントが流れる。
あっ、俺が選んだ服です。
ごめんなさい、ファンのみなさん。
「え、疲れた顔してるって?疲れてないですよー」
でたこの質問。
凛が言ってたけど、疲れてる?とか言われるのめっちゃムカつくらしい。
でも凛はイラついた素振りも見せずに笑顔で対応している。
さすがアイドル。
でも人の前に出る仕事って大変だよなー。
世界中に顔を晒すわけだし。
凛のこと尊敬するよ。
「誰かと鍋とか食べたい、一人暮らしだと寂しくてー」
こっわ、平気で嘘ついてるこの人。
コメントでは、
「俺がいるよー」「家に行ってあげる!」「どこらへんに住んでるの?」
と流れてる。
俺も対抗してコメントする。
「わかった。明日は鍋にしようか」
とんでもないマウントだな。
そもそも凛は普通に話が上手い。
トークスキルもあるし、変な質問への対応も完璧だ。
だからバラエティとかテレビにめっちゃ呼ばれるんだろうな。
「じゃあそろそろ終わりかなー」
コメントで、
「えーもう終わり?」「早いよー!」「またね!」
と流れる。
「家で待ってるよ」
とコメント。
「じゃあみんなまたねー!」
そういって配信が終わった。
さすがアイドルといった配信だったな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
プルルルル、電話をかける。
「もしもし、どうしたの?ちょうど今配信終わったとこだよー」
「見てたよ」
「えっ!見てたの!?」
「うん」
「もー、恥ずかしいから見ないでよ!」
「可愛かったよ、早く帰っておいで」
「はーい」
電話を切る。
ごめんな凛のファンのみんな、
俺は今、最高の優越感に浸っています。
でもこれぐらいは許してくれ、俺は軟禁されているんだ。
さあ、ゲームでもしながら凛の帰りを待つか。
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