第45話 面倒な日々
その頃アルバートはヘラルドン帝国のカザンカの隣町への道をてくてく歩いていた。
主要街道なので人の通りも多く色々な人種を見掛ける、セルコの街を抜けムーラトの手前で今夜は夜営の予定だ。
久し振りの歩き旅で快いが、不愉快な奴は何処にでも居る街道を外れドームを作って一休み。
「よう兄さん俺達も寝かせてくれねえか」
「断る、俺の後をつけていたのは知っている。俺はお前達に用はない失せろ!」
「でかい口を叩くじゃないか、たった一人で俺達の相手をする気か」
「頭数を揃えなければ能書きの一つも言えない屑野郎が、失せろと言ったのを無視した自分を恨め」
一瞬で五人の薄汚い男達が地面に沈む。
男達は自分が何をされたのか気付かず、穴の中でもがいている。
声を掛けると漸く自分の状況を理解したのか怒鳴りだす。
落ちた彼等の周囲を変形させて直径1メトル程の球体にし、一晩その中で良く考えろと告げ空気穴だけを残して閉じる。
何か喚いているが良く聞こえないので無視する。
目覚めて彼等の様子を見るとかなり消耗している、空気穴を少し広げて俺の質問に素直に答えるか聞けば罵詈雑言の嵐だ。
煩いので再び穴を小さくして放置、朝食の用意をしてのんびり食事とお茶を楽しむ。
《アール街から衛兵が来るよ》
《有り難う、何人居る》
《6人だよ》
《降りて来ないでね》
声が聞こえはじめたが不穏な言動だな。
之はなんだ、奴等は何をしているとか何とか。
「おいお前此処で何をしている」
「宿賃を浮かして夜営してますが何か」
「こんな所で夜営だとふざけたガキだな。此処に五人の男が来ただろう」
「あーあれね、失せろ!って言ったら消えちゃいましたよ」
「オイオイ奴等はそんな腰抜けじゃない。本当の事を言え、さもないと痛い目をみるぞ」
「衛兵の様だけど柄が悪いね、奴等と仲間かい」
ベッドや椅子テーブルを空間収納にポイポイ放り込む。
衛兵の目付きが変わりお互いに目配せすると、自然な様子で取り囲む。
「取り合えず詰め所まで来て貰おうか、五人の事を詳しく聞きたいのだがな」
「お仲間の事が心配ですか、それとも別口かな」
「つべこべ言わずに大人しく詰め所に来い!」
後ろの衛兵に小声で収納持ちだ応援を呼んで来い、金に為るぞってねー。
聞こえてるんだが、こいつ等も埋めちゃおぅ。駆け出す衛兵から順番に穴に落とす。
金に為るぞって言ってた奴から尋問だな。
落とした奴の穴を球体に換えギリギリまで小さくしてからお話しのお時間だ。
「お前さっき収納持ちだ金に為るぞって言ってたよな、どう金にするのか教えて欲しいんだがな」
「糞、なんだ之は出せ!出さないと痛い目に遭う覚悟は在るのか」
「状況判ってます、捕まっているのはお前尋問しているのは俺ですよ」
球体をもう少し小さくする、ウグウグ言っているが知ったことか質問に答えれば苦しまなくても済むのになぁ。
「さっきの質問に答える気になったかな、嫌ならもう少し小さくするかな」
止めとか苦しいとかお願いしますとか色々言ってるが、質問には答えないのよねこ奴は。
「どうかな答える気になったかな、えっ奴隷の首輪を掛けて売り飛ばす。収納持ちは高く売れるからだとさ・・・阿漕だねー。お前達が聞いて来た五人も仲間かな」
息も絶え絶えに認める。
一人二人の旅人を彼等が襲い、強い相手には衛兵が事情を聞く振りをして後ろから首輪を嵌める手口だって。
常習犯だが衛兵とグルなら上司も信用ならんな。
仕方がない面倒だが乗り掛かった舟だ、奴に始末を付けさせるか。
球体を少し大きくし、出入口は妖精族に作って貰った。
100人程の妖精族を残しておく。
カザンカの街までは一っ飛びだ、気分はス〇ーマンだな。
王宮壊しちゃったから何処に行けば会えるかな、周辺の貴族の館かホテル・・・は無いな。
一番大きな貴族の館に降りよーっと、門衛が血相を変えて飛んで来る。
おーお、俺以外にも飛べる奴がいるのかと一人ボケをかます。
「ヨセフ・オーソン・ヘラルドンに会いたい、俺はアルバートだ」
門衛が硬直しているよ、騒ぎを聞き付けて人が集まり中の幾人かが俺の顔を覚えていて連絡してくれたらしい。
案外早く会えたのでムーラトの街の手前に衛兵とグルの賊を捕まえているが衛兵も仲間なので迂闊に街の責任者に渡せないのだと説明。
奴等を尋問したら違法に奴隷の首輪を嵌め奴隷商等に売り付けていたらしい。
お前が処理してくれと頼む。
ガチガチに為りながらも承諾し責任者と騎士を多数派遣し、街の責任者以下を厳重に調査すると約束してくれた。
派遣責任者を呼んで貰い妖精族との通話が可能な様に魔力合わせをする。
序でにヨセフにも妖精族と魔力合わせをし、いざという時には連絡が取り易い様にした。
5編隊55名の妖精族を道案内に派遣責任者達が出発したのを見届けて今後の事を考える。
ヨセフが安定した統治が出来るなら、エルゴア王国と手を取り地域の安定に寄与出来るだろうから手を貸しておくか。
王宮は俺がぶち壊したからなぁ、済んだ事は悔やまない!、聞けば取り潰した公爵家の空き家に仮住まいすることにしたらしい。
ヨセフに許可を貰いこの地に塔を建てカザンカの塔と名付ける、住民不在だが入居者募集の不動産広告を出すか。
フィーィに周辺の妖精族にカザンカの塔が出来たが、空き家なので住みたい一族がいるならどうぞと知らせて貰った。
ヨセフには俺に連絡したい事が有ればこの塔に住まう妖精族に頼めば俺に伝わると教えた。
但し利用はするなよと釘を刺す。
言ってる傍から入居希望の妖精族が表れた、ミールとその一族がカザンカの塔を希望したのでヨセフに引き合わせた。
《ミールと申すカザンカの塔に住まうことを許されよ》
《ミール殿ヨセフと申しますカザンカの塔に様こそ》
《アールにミールとその一族がご挨拶を》
《アールにご挨拶を》
どうも気になる、奴等の言っていた奴隷の首輪。
「ヨセフ気になる事が在るから捕らえた奴等の取り調べに俺も参加させて欲しいが良いかな。それとムーラトの町に入るのにエルゴア王国の通行証なら持っているが、ヘラルドン帝国の通行証が無いんだ一枚貰えないか」
「直ぐに手配致します」
「そんなに畏まらなくても良いよ」
帝国皇帝発行の通行証と取り調べに参加する旨を認めた書類をを貰うと、ムーラトの町に飛んだ町の入口はごった返していたが通行証と書類のお陰であっさりと通れた。
衛兵の案内で取り調べ責任者で在るジェクトの下へ行く。
責任者のジェクトが俺の顔を見ると直立不動で敬礼してきたよ、怖がられているなぁ。
まるで怪獣扱いだ泣くぞ!
取り合えず捕縛している者全てを集めて貰った、15人居るぞ11人から増えている。
聞けば埋めていた連中の蓋を妖精族に外して貰い、連行してきたら4人が逃げ出そうとしていたので取り合えず縛り上げて置いたらしい。
俺の捕らえた11人を前に再会の挨拶をする。
「お前だったな続きを始めるかな。喋るか嫌か? 喋るのか良しよしこの他に仲間は何人居る?」
反対番の衛兵隊長と町の責任者の補佐に衛兵が後6人いると喋る。
自白する奴を声高に罵る衛兵の一人を土魔法で包み込みゆっくりと絞り上げていく。
変な声が聞こえるが気にしない、責任者のジェクトが嘔吐しそうな顔で見ている。
「お前煩いよ、俺が聞いているのはお前じゃない。次に聞くからそのまま暫く黙って待て」
仲間の事は後でも良い、問題は奴隷の首輪だ奴隷の首輪を誰が幾つ持っているのか提供者は誰か聞く。
首輪の数は5個衛兵隊長が持っている、提供者は帝都カザンカの街で奴隷商をするタスケイと言う男だと吐く。
責任者の騎士に即座にタスケイの捕獲と従業員の確保を頼み、その際横の繋がりや協力者とタスケイの支援者が居るかも知れないので絶対に接触させるなと指示する。
首輪の説明をさせる。
持ち主が魔力を首輪に流してから相手の首に当てると自動的に絞まる。
奴隷の首輪を嵌められた者は首輪の持ち主の命令に逆らえない逆らえば激痛が襲う。
奴隷の首輪を嵌めると魔法が使えない。
奴隷の首輪を外そうとすれば激痛が襲う。
主人の命令に背くと激痛が襲う。
主人の不利益な事をすれば激痛が襲う。
主人から一定以上離れると首が絞まる。
騎士から奴隷の首輪を借り魔力を流し、先ほど罵っていた衛兵の首に嵌める。
「さてと今は俺がお前の主人って事だよな」
忌々しげに睨むが頷く衛兵、態度がちぐはぐですな。
「態度は丁寧にしろ!睨むな返答ははっきりしろ」
「分かりました」
「ほぅ中々の優れものだな。この場にいない仲間の名前を言え、嘘はつくなよ」
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