第46話 森に生きる
ペラペラ喋り出したよ、知りうる限りの事を躊躇いもなく喋るので記録係がストップを掛ける。
ジェクトが感心仕切で奴隷の首輪にこんな使い方が在るなんてと唸っている。
取り調べが簡単で確実とくれば処置が早くて済む、面倒な拷問等より簡単迅速便利だもんね。
「之は質問を的確にし曖昧な問い掛けは嘘を言わずに躱されるから注意が必要だな。基本的質問のマニュアルを作って追及し、事件内容により疑問点等を別途質問して行く様にした方が良いな」
ジェクトが最敬礼でその様に致しますと、早速部下に質問内容の一覧を作らせ取り調べに活用していた。
ふと思い出してお前達が拉致した人達はどうして居るんだと、質問したら近くの集落の空き家の地下に監禁していると判明し慌てて救助に向かうひとこまも。
皆奴隷の首輪を嵌められていて逃げ出す事も出来ずにいた様だ。
首輪を嵌めている衛兵の首輪に手を触れて軽く魔力を流すと、衛兵が悲鳴を上げて倒れた。
起こして座らせる、落ち着いたので今度は雷撃魔法を強めに首輪に流す。
<バチン>って音と同時に首輪から煙りが出て外れた、もう使い物にならないのは一目瞭然だわ。
《フィーィ之から俺に奴隷の首輪を嵌めさせるから俺に危険が在るようなら助けてね》
《いいよー、一人では無理そうだから皆で首輪に雷撃魔法を撃つよ》
責任者のジェクト隊長に頼んで首輪を嵌めて貰う。
大分嫌がったが首輪の性能を調べるだけだからと頼み込んで首輪を嵌める。
先ず土魔法で首輪を外すことを試すが頭を激痛がが襲い断念、首輪を指で挟み指先に集中して雷撃魔法を発動させた。
同じ様に激痛は在るが<バチン>と音がして首輪が下に落ちた。
見ていたジェクトが呆れている、奴隷の首輪二つを駄目にした事を詫びて実験終了。
ジェクト隊長にこ奴等を上手く使えば芋づる式に犯罪者を捕まえられる。
万が一貴族が関与していたら不味いのでヨセフに相談してから一気に行け、上手く遣れば出世の糸口に為るだろうと唆すのを忘れない。
カザンカのヨセフ皇太子今は皇帝陛下かな、の屋敷の庭に降りる。
ミールに頼んでアールがヨセフに会いに来ることを、伝えていたので直ぐに執務室に案内された。
ムーラトの町での出来事をかい摘まんで話し、カザンカの奴隷商や町の責任者の補佐が絡んでいるからには注意が必要だ。
貴族が関与の畏れも在るので一気に徹底して遣らねば、今後の貴族相手の駆け引きにも影響するぞと話し後はヘラルドン帝国の事なので任せる。
一晩ヨセフの屋敷に泊まり色々話したが中々話せる奴では在る、好感度アップって処かな。
翌日ムーラトの町に飛びジェクトにヨセフに一部始終を伝えて在ると告げて、旅の再開の為に町を出る。
ムーラトの町を後にしのんびりと歩く、時々子供達が頭や肩に降りてきて遊んでいる。
《アール森に行こうよ》
子供達の大合唱で仕方が無いと飛び上がり森に向かう、のんびり歩き旅を楽しみたいが泣く子には勝てない。
泣く子と言うより悪戯子の集団だが、俺の魔力玉の影響を受けているので懐き方が半端でない。
一緒に飛び始めると遠くにいた子達迄集まって雲霞の如くになり前が見えない。
《皆少し離れて前が見えないよ。よし先頭から螺旋飛行始め!》
号令を懸けて俺を中心に半径20メトル程の螺旋を作らせる。
ちょっとブルーイン〇ルス気分だが、新しい遊びは気にいったのか螺旋飛行から分裂反対回りや二重三重の螺旋にと変幻自在に飛び回る。
先行していた子供から連絡が入る。
《アール馬車がね・・・大きな犬に・・かじられているよ》
《はぁ、犬にかじられている》
《うん、黒い大きな犬がたくさんいるよ》
《あーフィーィ前方で馬車が黒狼に襲われているらしいから助けてあげて貰えるかな》
《今行ってるよ、見つけた!》
《皆射撃の練習だよ、黒い狼の鼻面に一撃を叩き込んで倒した者が偉い! 早いもの勝ちだ行け!》
《ウォー キャー ワーイ》
様々な掛け声歓声と共に子供達が黒狼に殺到する。
ドーン パシュ パリパリとか様々の音の競演は一瞬の間で直ぐに静かになった。
《アール終わっちゃった》
《アール終わっちゃったよ》
《もう無いの、僕まだ何もしてないよ》
《あー じゃー誰か木の葉を撒いてくれるかな、木の葉の標的撃ちの練習をしよう》
《私がやってあげるよ》
《フィーェ有り難う頼むね》
馬車の上に到着すると馬車の周囲には鼻面を撃ち抜かれた黒狼がそこかしこに散乱している。
護衛と思われる数名が頭上を旋回する妖精族を口を開けて見ている。
「大丈夫かな、怪我した人はいるかい」
馬車の前に降りると護衛の一人が何故空を飛べるんだと呟くのが聞こえて来るが、自分の心配しろ!って言いたくなるアルバート。
馬車から下りてきたのはでっぷり太っ腹・・・太ったオヤジ、親父じゃない一番出会いたくないタイプ。
脂ぎったテカテカの顔と短い指に光る大粒の石ころ、見なかった事にして逃げようかな。
「もう少し早く来れないのか、死ぬ思いをしたぞ」
「俺はあんたの護衛じゃない死にたくなければ護衛の数を増やせ! お前達怪我は」
「あっああ済まない助けてくれて有り難う。このちっこいのは妖精族って呼ばれている危険な奴等だろ」
「それはお前達次第だな、捕まえようとしたり攻撃しなければ何もしないぞ」
「オイ聞いているのか、小僧」
助けて貰ってその態度中々の下衆と見ましたが何様ですか、と思ってピンと来たね。
「お前達カザンカから来たのか」
「そうだが何か?」
「カザンカを出たのは昨日だな」
頷く冒険者達、顔色がハッキリ変わったね太っ腹オヤジ
「お前の名前は何だどうしてカザンカから急いで出たんだ、馬車に似合わぬ見劣りする身なりで少ない護衛」
冒険者に聞くとカザンカの街でいきなり声を掛けられ、一日銀貨2枚10日分前払で貰って護衛に付いたがとにかく先を急ぐ様子だったって。
仲間は4人で馬車の中に女達が居るが良く判らないと聞いた。
臭う臭うくさーいな脂ぎった太っ腹オヤジ。
「なあオヤジお前」
「無礼者、男爵たる儂にオヤジとは・・・」
「じゃ馬車の中を改めさせて貰うわ」
慌てる太っ腹オヤジの足下を固めて馬車のドアを開ける。
後ろで喚くオヤジの鼻にデンパチを食らわす、鼻水と涙を流しながら俯いている。
女が三人、フードを深く被り顔を隠している。
失礼と断って許可も貰わずフードを剥ぎ取り首を晒す、三人とも奴隷の首輪付きだ。
首輪を指で挟み雷撃を一発、薄い煙りを吐いて壊れる。
「制約無く話せるから質問に答えろ。望んで奴隷に為ったのか」
首を振る、拉致され強制的に首輪を嵌められ売られた事。
街の門衛も知らぬ顔で奴隷商人から賄賂を受け取って王都から連れ出され、途中で此の馬車に乗せられた。
溜息しか出ないね、残り二人の首輪も外しムーラトの街にいるジェクトに渡すのが一番だな。
然しこ奴俺が冒険者を埋め帰らぬ冒険者の事を知って、逃げ出したとしたら危険に対する嗅覚は大したものだが・・・
「なあオヤジ、女三人を何処から買い付けた。三人と話しが違えば何発でも鼻に食らわすぞ」
子供達では制御が甘いので殺しかねないからフィーィ達大人達を呼び寄せる。
先ず治癒魔法が使える妖精族に依って鼻を治して貰う。
「どうだ鼻は治っただろう、話さなければもう一度鼻に雷撃を食らわすぞ」
「お前男爵位の儂に傷を負わせてただで済むと」
「思ってるよ」
合図して鼻に一撃食らわせる。
鼻を押さえて呻く太っ腹オヤジに聞くが渋とく話さないので手足を大の字に拘束する。
合図とともに又鼻に一撃食を食らって呻くオヤジ、治癒魔法で又治してやる俺って優しいね。
で、再び鼻にバッチンと雷撃が5度程繰り返したら涙ながらに話したよ。
最初の5人が帰らない事に異変を察知した奴隷商人の手下が連絡して、万が一に備えて街を出た際買い付けに来ていた男爵に教えた様だ。
奴隷商人の名前はゴーシュ、何処に向かったか知らないらしい。
ムーラトのの街に居るジェクトに後は任せるかな、男爵様に有り金全て出させて冒険者それぞれに金貨2枚を渡す。
女性三人をムーラトの街に居る衛兵責任者のジェクトの所に送り届ける事を依頼する。
女性三人には金貨100枚づつを持たせ奴隷商人と男爵からの慰謝料だから気にせず受け取れと渡す。
「ジェクトに会ったら逃げ出した奴隷商人はゴーシュって野郎だから逃がすなと伝えてくれ。妖精族を介してジェクトには伝えて置くから心配の必要は無いぞ。ムーラトの街迄は妖精族が護衛に付くから道中は安全だぜ」
冒険者のリーダーヤフムと魔力合わせをして意思の疎通が可能に為ったので送り出した。
面倒事の連続にうんざりなので、ヤフムに就けた彼等が帰ってきたら森に向かう事にした。
暫くはエルクの里でのんびり過ごか、それとも妖精木を収集した辺りにもう一つ塔を建ててそこで暮らすかゆっくり考えよう。
エルクハイムや王都の屋敷には2~3年に一度くらい顔を出せば良かろう。
◇ ◇ ◇ 完 ◇ ◇ ◇
一応完結です。お読み下さり有り難う御座います。
いずれ続編を書きたいと思っていますが、現在妖精族に関するものを8話まで書いて行き詰まっています。
ポチポチ書いて発表したいと思っていますので気長にお待ち下さい。
改訂版 妖精族を統べる者 暇野無学 @mnmssg1951
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