第35話 婚約祝い
森の里エルクに二泊して王都に帰ったが、他の一族の反応が凄くて結局他の妖精族の住み家も順次造る事になった。
元々そのつもりもあったのだが、反応良すぎだろう。
床板を大量発注し、出来上がり次第各地へ出向き塔を建てる事にした。
もう慣れた作業となっていて、妖精族の拠点から拠点への旅も何度となく熟し、飛行速度も上がった。
時にはエルクハイムの屋敷に顔を出し、懐かしいコステロの料理を楽しむ。
飛行速度と言えば、フィーェに飛んでいるときの結界を視覚化して見せてもらうと、球形だったのでラグビーボールの様な形にすることを提案する。
絵を描いて説明すると真似て飛び、集団の中フイーェ一人抜け出す速さに喜んでいたが、直ぐに真似られていた。
俺、俺は元々遅いから空気抵抗の減少は必須なので、初めからラグビーボール形の結界だ。
* * * * * * * *
王都の屋敷での夕食時に、ウーニャが「アル魔力の循環と操作の訓練をしていて、何かもやもやした感じが続いているんだが何だろう」と尋ねてきた。
俺はピンと来たね。
「それって小さな物でそこに在るのは判るけど何か判らないって感じのものだろう」
「そっ、そんな感じで気になって気になって困っているんだよ」
「おめでとう空間収納の発現だよ。今日からは魔力の訓練を済ませて寝る前に、魔力の全てをそのもやもやに注ぎ込め。一月経ったら使い方を教えてやるよ。注ぎ込む魔力に依って収納力が変わって来るので、魔力の全てを注ぎ込めよ」
ウーニャが喜んだね。
「収納量に依っては、高額の賃金で引く手数多だぞ」
「いやいやアルの所を辞める気は無いよ。飯は旨いし酒はなお旨い、仕事も楽しいからね。それにアルがぶっ飛んでいるし。魔法を教えてくれて有り難う」
一ヶ月後ウーニャを呼んでスプーンを手渡す。
「もやもやの中に袋が有るとイメージして、袋に放り込むつもりで投げてみろ」
十数度の失敗の後スプーンが消えた。
「成功だ袋の中にスプーンが有るのが判るか」
頷きながら泣いているウーニャ、仲間達が祝福している。
「よし感覚を忘れない内にどんどん練習だ」
逸れからは俺が土魔法で作った50cmの球体を次々に収納させた。
それ等を全て取り出させて、今度は1mの球体だ10個収納したところで取りだし。
次は5mの球体を5個収納した処で半分埋まった感じがすると言ったので小さな家一軒分位の収納量だと教えておく。
これからは、生活用品の全てをそこに入れ、出し入れの訓練する様にさせた。
そして他人には教えず、知られても冒険者用のザック2、3個分だと答えろと言っておく。
* * * * * * * *
王都とエルクハイムから送った者達の様子も知りたかったので、久し振りにハイド子爵の顔でも見ようとアラモナに向かった。
何時ものフィーィ達や訪れていた他の一族を含む大編隊で飛行、アラモナの城壁をいきなり飛び越えるのも不味いので、門衛に領主の屋敷の場所を尋ねる為に着地。
一瞬不審者扱いをされかけたが、ブラックカードを出して無事に教えてもらい、再び飛んで領主の屋敷に向かう。
門衛がびっくりしていたが、俺が飛ぶのに驚いたのか妖精族の大編隊に驚いたのかは不明だ。
領主屋敷の門衛にブラックカードを示し、ハイド子爵に面談を申し込む。
門衛の一人は俺の顔を知っていて「良い勤め先をご紹介いただき有り難う御座います」と最敬礼をされた。
良い扱いを受けている様で安心した。
屋敷の前では執事らしき男が向かえてくれ、ハイド子爵の所へ案内してくれた。
「やあアルバート伯爵良く来てくれた、領主ってのは忙しくて大変だよ」
「お久しぶり振りです、ハイド子爵様」
「様は止めてくれ爵位は君の方が上だぞ。アルバートに言われると背中が痒くなる」
笑いあった後は近況報告となった。
王都とエルクハイムからアラモナに来た者達は、一人も辞めずに良く仕えてくれると嬉しそうだ。
お茶を持って来たメイドは見知った顔だったので、元気かと尋ねると「アルバート様にはお世話になり、有り難う御座います」と此処でも礼を言われた。
人手は足りて居るのか尋ねると何とかなっているが、王都も此処ももう少し欲しいと言ったので、王都とエルクハイムに知らせておくので希望者がいれば連絡すると伝える。
「然し凄い数の妖精達だな、どうしたんだい」
「最近は妖精族の住み家を建てて回っているんだよ」
「なら家の庭にも建てておけば良いよ。領民達も妖精達を見慣れれば、余計な事もしないだろうからな。俺からも厳しく伝えておくよ」
お言葉に甘えて領主の屋敷裏に、高さ30m直径6mの塔を建てる。
最近は新たな塔は30mに統一して規格化しているので、40mの塔は必要無くなった。
ハイド子爵は慣れているが、執事や他の使用人達は目を丸くしている。
出来上がった塔に妖精木を取り付け、香炉に削り屑を落として完成だ。
ハイドの塔と命名する。
フィーィについて来た妖精族達に、森へ帰ったら此処にも塔が有るので気に入ったら自由に使って良いと伝える。
一人が我等が住み家にしても良いのかと聞いてきたので、自由にどうぞと認める。
「アールにファールとその一族が感謝を」
見ていたハイド子爵に説明する。
《ヨルム・ハイドだ、ハイドと呼んでくれ。ファールとその一族がこの地に住まう事を歓迎する》
《ファールと申す。宜しく頼むハイド》
《ハイドに、ファールとその一族が感謝を》
《アール、ハイドの塔を有り難う》
胸に拳を当てて腰を折る。
ハイドにも同じ返礼をする様に、教えて礼をする。
家財道具はどうするのか聞かれたので妖精族は皆空間収納が使えるので旅する時は持って出るので大丈夫だと伝える。
屋敷に戻りお茶をしていて思い出した。
執事にワゴンと大きな皿を用意してもらい、宝珠果を皿に山盛りにして手土産だと差し出す。
「見慣れぬ物だが、又暗闇の森の産物かな」
「そうだよ妖精木の生えている近くになっていたんだ。宝珠果って言うんだ美味しいから皆で食べてね」
「宝珠果ですか、王家に献上しなければ」
「あっ、いいよいいよ陛下なんぞに食べさせるのは勿体ない」
執事が硬直し、ハイドは苦笑い。
「気にするな、アルバートはこんな性格だ。年金貴族とはいえ伯爵にされたのを恨んでいるので、陛下に嫌がらせをして楽しんでいるんだ。ところ貴族になったのだから、姓は何て付けたんだい」
「ショーゴ・アルバートだ家紋は丸を縦に二つ横に二つを重ね合わせた物にした。面倒だよな貴族って、貴族らしい事をする気はないけど」
一晩ハイド子爵の家に泊まり、翌日王都に戻った。
帰る前に以後街の門を通らず直接屋敷に来るので、ファールに連絡して来ることを伝えると言っておく。
序でに執事とメイド長くらいは、妖精達と会話が出来る様にしておいてと頼む。
* * * * * * * *
ウーニャとヘムを残して他の四人はエルクハイムに帰ると言いだした。
四人共エルクハイムに家族が居るので無理も無い。
今までの感謝を伝え、エルクハイムから乗って来た馬車を送り帰す序でに乗って行って貰う。
ウーニャとヘムは俺の行くところへついていくが、王都も面白いので暫くは王都に居ると残った。
格好付けの護衛が要るので<教育している中から使えそうなのを選ばせ、ウーニャとヘムの責任で鍛える様に言っておく。
二輪馬車で王都の冒険者ギルドに顔を出し、サブマスのランカーさんに宝珠果を二房渡して売却を依頼する。
唸りながら又暗闇の森からかと問うので、オークションでとお願いする。
「此を通常で売り捌くのは無理だぞ」
「だからオークションに出して、どの程度の値が付くか知りたいのですよ」
「沢山有るのか?」
「有るけど妖精族の為に収穫した物だから、出すつもりは無いよ」
溜息と肩を竦めて首を振る器用な芸を見せて、運搬係のマジックバックにしまわせている。
代金は何時もの様に振り込んでおいてと頼み、街の散策に出る。
* * * * * * * *
エスコンティ侯爵令嬢エレミー様の嫁ぎ先が決まったと聞き、祝いの品を持参する。
先触れなんて出す気が無いので、ウーニャに二輪馬車の御者を頼んで侯爵邸に向かった。
お~お、すんごいね~♪。
今を時めく侯爵令嬢の婚姻ともなれば、祝いに駆けつける貴族の数も凄いや。
ウーニャに馬車を厩番に預ける様に指示し、玄関で貴族の対応をする執事長のナリヤードに手を振り、メイド長のエメラの所へ行く。
「エレミー様の嫁ぎ先はハイドだって、この間会ったけど何も言わなかったよ。あの野郎」
「アルバート伯爵様、決定し公表する迄は迂闊に漏らせません。例え伯爵様にでもです」
「水臭い奴だねぇ、で侯爵様と当事者の御令嬢は何処に」
「御挨拶の対応に朝からサロンに詰めております」
「大変だね、これお祝いの品だけど渡しておいてくれるかな」
「駄目ですよ、直接お渡しするのが礼儀です。まして、貴方様は伯爵様で御座います」
「だから貴族なんかに成りたくないのに、あの糞野郎は一度ファイアーボールを王宮にぶち込んでやるからな」
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