第36話 力の誇示

 国王に対する暴言を華麗に無視して、サロンに案内してくれるエメラ。

 侯爵様の所に辿り着くのは至難の技と思い、ホールの片隅で喉を潤していると出ましたよ。

 エレミー嬢とエスコンティ侯爵様が、にこやかに俺の所にやってくる。

 

 「他のお客様を無視して宜しいのですか」

 

 「いい加減疲れているのだ、息抜きくらいさせろよ」

 

 侯爵様、投げやりですな。

 

 「エレミー様、御婚約おめでとう御座います。ハイド子爵とは驚きですね」

 

 「馬鹿な貴族のボンボンや、爺様からの求婚にはうんざりしていたのよ。ハイド子爵なら気心も知れていると父も喜んでいるわ。わたしもね」

 

 祝いの品だと、小さな壷と二房の宝珠果を差し出して。

 

 「果物ですから早めにお召し上がり下さい。壷は若い妖精木の粉末で衣装部屋の片隅に置かれますと長く移り香を楽しめます。決して身に付けないで下さい香り過ぎますので」

 

 「妖精木の粉末!」

 

 「あー王家には献上しちゃ駄目ですよ。妖精木は、王家がハイド子爵から買いますのでね」

 

 「まだ陛下に嫌がらせをしていますの」

 

 「嫌がらせをされているのは俺ですよ」

 

 他の貴族の邪魔になるので早々に切り上げたが、ウーニャを置いて帰れ無いので泊めてと侯爵様にお願いする。

 

 苦笑いで頷く侯爵様。

  

 翌日ウーニャを無事エスコンティ邸から送り出し、俺はアラモナに向かって飛ぶ。

 今回は珍しくフィーィの一族だけだ、それでも留守番を残して250人以上の編隊飛行は中々の見物である。

 

 子供達と遊びで、雁行、山形、横一列、V字と色々組み合わせて飛んでいたら、バラバラで飛ぶより編隊飛行の方が飛び易いとなり、集団で飛ぶときの基本になってしまった。

 最近は山形の5、7、9、11人の編成で斜行陣や高低差を付けた密集陣で飛んだり、離合集散を繰り返している。

 ハンタービーや襲って来る猛禽を、見事な編隊行動で撹乱撃退している。

 

 アラモナのハイド子爵邸の庭に直接降りる。

 フィーィからファールに連絡し、ファールがハイド子爵に伝えてくれるので庭にはハイド子爵直々のお出迎えだ。

 

 「婚約おめでとう」

 

 若い妖精木を小さな壷に納めた物を差し出す。

 中には太さ3cm長さ10cmの妖精木を一本入れている。

 恐々と受け取るハイド子爵。

 

 「アルバートが呉れる物は恐ろしいからなぁ」

 

 「香りが強いので壷から出さない方が良いですよ。前回の物より数段上物ですから」

 

 「こりゃー我が家の家宝に成りそうだな」

 

 「いざと言う時の切り札は何枚合っても良いでしょう。それから結婚式の披露宴用に良いお肉を提供するよ」

 

 王都とエルクハイムから人を送る事を約束し、ファールとその一族に挨拶してさっさと引き上げる。

 僅かの間にファール達も、フィーィに教わった編隊飛行で見送ってくれた。

 こりゃー、妖精族全てが編隊飛行を取り入れる日も近いな。

 

 王都に帰ると久し振りに冒険者ギルドに顔を出す。

 サブマスのランカーさんにお願いして、ゴールデンベアのレッド種を一体解体して貰い、お肉と魔石は引き取り他は売り払うと告げる。

 

 「最近オークの肉が品薄でな、バッファローとかも欲しいな。それに」

 

 「はいはい何が必要ですか。最近森を歩いてないので、余り在庫は増えてないですよ」

 

 「それよ、お前飛べるんだってな」

 

 「森の里のエルフに、お前なら飛べるだろうと言われて、飛び方はフィーィ達に聞けと言われましてね、練習したら飛べる様になっちゃいました」

 

 「でだ、緊急時に妖精族を使って通信をしたいのだが頼めないか。報酬は払うから」

 

 「それは無理じゃ無いですか、報酬って何を報酬に支払うつもりです。人族基準の報酬って、彼等には無価値なものですよ」

 

 「エルクハイムが魔獣達に襲われた時には、凄い数の妖精達が救援に駆けつけて魔獣や野獣を蹂躙したって話しじゃないか」

 

 「あれって、如何なる報酬も受け取って無いですよ。当時エルクハイムの領主エスコンティ伯爵様が、謝礼の申し出をしましたが拒否されました。妖精族と人族とでは価値観が違い過ぎるのです」


 「では何を報酬に・・・」


 「人族と妖精族との反目が何故起きたのか判ります。人族が妖精達を遊び半分で攻撃し、石を投げたり捕らえて小鳥の様に飼おうとしたのが全ての原因ですよ。今度は話しが通じるならと、妖精族を利用しようとするのなら、俺が敵に回りますので覚悟をしておいて下さい。貴方の後ろにいる方々にも警告しておきますよ」

 

 「わっ、判った。今の話しは無かった事にしてくれ。ギルドには警告を伝えておく」


 一度王族や貴族、それにギルドの連中に力を見せつけておく必要あると思い、ウーニャにオーセン宰相宛ての面談要請の書簡を届けて貰う。

 返事が来た翌日二輪馬車で王宮に向かうと、城門をすんなり通されウーニャに暫く待っている様に頼んでオーセン宰相の所にいく。

 

 応接室で宰相閣下に冒険者ギルドでの提案を話し、如何なる相手であろうとも妖精族を利用させる気は無い。

 彼等も人族と和解したとは言え、易々と利用はされないだろうと伝える。

 

 国王陛下の俺には一切手を出すなとの命令は、王家の力の及ぶ範囲のみ有効だ。

 冒険者ギルドの様に王国の支配から外れていたり、大商人の様に金の力を使う者や諸外国の高官が色気を出して来るだろう。

 この際力の一端を奴等に見せつけておこうと思うので、王国騎士団の猛者と魔法総監支配下の精鋭部隊と模擬戦をしたいと告げる。


 場所は王都郊外の草原で、土魔法使いを使って頑強な砦を築いて貰いたい。

 砦は幅50m高さ20m厚さ5mの壁で良い、出来るなら最強の物を造ってくれと伝えた。

 

 他に必要な物は俺が用意するので国内の有力貴族や冒険者ギルドのお偉方と、力の有る商人や外国高官に招待状を送って欲しいと要請。

 その際冒険者ギルドには高ランクの魔法使いや猛者が居るので、彼等を模擬戦に参加させたいので、希望者は参加自由だと伝えて欲しいとお願いする。

 これは各国からの駐留外交官や軍事顧問に対する、デモンストレーションにもなるだろといっておく。

 

 宰相は顔色を変えていたが、陛下に伝えるので暫し待ってくれと応接室を出て行った。

 陛下を連れて応接室に帰って来たが、先程の話しは陛下に伝えたがどうしても遣るのかと尋ねてきた。

 

 「俺が何故土魔法しか使わないのか、それも含めて俺と妖精族に手出しをしない、嫌出来ないと奴等の頭に刻み込む必要が在りそうなんでね。それと俺と妖精族とは友誼を結び片方に対する敵対行為にはもう片方も敵対する事になると知らせておいて下さい」

 

 「判った魔法総監に命じて最強の壁を造らせよう。その他の要望も全て受け入れる。準備に暫く掛かるが完成次第知らせるので、王都に居てくれ。関係者を招待しての模擬戦には日程の調整も必要だしな」

 

 4、5日は留守にするが、それ以後は王都に居ると伝えて辞去する。

 森の奥に飛び倒れている巨木を20m程度の長さに揃えて数十本持ち帰る。

 それからは街の散策や、俺の所へ訪れる妖精族との交流の日々を送る。

 フィーィから話しを聞いた妖精族達が、我も我もと参加を希望して来たが籤引きで5部族の参加に止めた。

 

 全ての準備が整ったのは二月後で、当日王国魔法部隊と王国騎士団の猛者達に冒険者ギルドから派遣された魔法使いと高ランク冒険者達が揃う。

 彼等の前には幅50m高さ20m厚さ5mの壁、その前に4本2列で8本の巨木が立ち並んでいる。

 巨木一本の太さが6m程あり、壁の左右にもそれより太い巨木が4本ずつ並んでいる。

 

 宰相閣下が参加者達の前に立ち、巨木を如何なる攻撃でも良いので倒してくれ。

 攻撃に際し全員で攻撃しても問題無いし、是非持てる力の全てを使って攻撃して貰いたいと告げる。

 

 半信半疑で聞いていた冒険者の一人が巨木の一本や二本なら何とでもなると嘯いている。

 

 「では王国の魔法部隊がやってくれ」

 

 宰相の命令に従って魔法部隊の一斉攻撃が始まる、ファイアーボールの一斉射に続き、風魔法で切り刻み雷撃や氷槍を撃ち込む。

 見事8本を打ち倒し後方の壁の攻撃に移るが表面は削り取るが虚しく砕ける魔法の数々、やがて魔力が尽きたのか立つのもやっととなり攻撃が終る。

 

 「中々のものですが、これに何の意味が有るのですかな」

 

 外国の高官が冷笑混じりな声で、慇懃に陛下に問う。

 それを苦笑で返す陛下。

 

 「本番はこれからだが、我が王国と友誼を結ぶ者がいてな。如何なる手出しもしないと誓い、臣下にも手出し無用と申し命じてある」

 

 「その様な戯れ事を本気で」

 

 「ああ、その彼が皆に力を示し、彼自身や彼と友誼を結ぶ妖精族達にも手出し無用と教える為に、この場を設けたのだよ」

 

 あざ笑う彼等を200m程下がらせる。

 直後に現れる大量の妖精族の大編隊、小編隊は11人編成で先頭が指揮者左右に5人ずつ続く。

 火魔法,風魔法,水魔法,氷魔法,雷撃魔法を得意とする者達が指揮者に従い飛ぶ。

 その編成で無数の妖精族の大編隊が綺麗な雁行陣で続々と現れては壁の左右の丸太に攻撃を掛ける。

 

 それは見事な連続攻撃で一つの雁行陣が火魔法,風魔法,水魔法,氷魔法,雷撃魔法を順番に一斉攻撃し去ると、次の雁行陣が現れて攻撃を開始する。

 あっという間に左右の大木はボロボロになり倒れる。

 次に始まったのは大編隊の一斉射である、火魔法の一斉射だけで百雷の響きと共に壁が削られる。

 風魔法,水魔法,氷魔法,雷撃魔法と続く、厚さ5mの壁に穴が開いた処で攻撃が終わった。

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