第28話 アルバートの帰還

 全てが終わり普段の生活に戻った頃にアルバートはエルクハイムに戻って来た。

 

 街の入口で入門待ちの人々に混じり佇んでいると、衛兵が走って来て敬礼と共に伯爵様がお待ちですと大声で呼ばわる。

 列を離れ衛兵の案内に従って門を潜ると伯爵家の馬車が待機しているではないか、手回しの良い事でと溜息を一つ。

 渋々乗って伯爵家に向かう、馬車を降りるとフィーェが肩に飛び降りて来た。

 

 《フィーィは》

 

 《伯爵さんの所だよ》

 

 それで伯爵家の馬車が待機していたのか。

 やれやれフィーィや妖精族の皆には余り伯爵家や冒険者ギルドに関わるなと言わなければ面倒事が増えるだけだ。

 執事長のナリヤードに迎えられ伯爵の待つ執務室に入る。

 満面の笑みで伯爵が立ち上がり

 

 「アルバート君妖精族の派遣感謝する」

 

 「今回は支援して貰えたが次が有るとは思わないで下さいね」

 

 フィーィが頭の上に乗って来て寝転んでいる。

 

 「でだ、彼らに謝礼を申し出たのだが拒絶されて困っている。君から彼等に有用な物を都合して貰えないか、費用はこちらで全て出すから頼むよ」

 

 「必用無いってか彼等と対等に付き合いたいのなら、如何なる攻撃もしなければ良いだけです。まあエルクハイムに被害が無くて良かったですよ」

 

 「何時の間に彼等と知り合っていたんだ」

 

 「初めてエルクハイムに来た数日前にですよ」

 

 余り正確には教えてやらない。

 

 冒険者ギルドが非常呼集を掛けたので冒険者達に報酬を支払わなければならないのだが、討伐の殆どを妖精族が担ったので最低限の報酬しか支払えないのだと言われた。

 話しが良く判らないので先を促すと、冒険者ギルドのマジックバッグに保管した魔獣を王都に送り売却した金を冒険者に配りたいのだそうだ。

 

 それは構わないが何故王都なのかと問えば魔獣野獣の死骸を片付けるのに小物は埋めその他は妖精族に依って谷底に投棄した。

 それでも大量の獣の肉をエルクハイムの街のみならず近隣の町や村にも呼び掛けて配ったので、エスコンティの領内では売れないらしい。

 

 笑ってしまった供給過剰で値崩れし、二束三文でもパープル種やレッド種が売れないなんてね。

 

 「伯爵様と冒険者ギルドで自由にして下さい。俺にも妖精族にも異存は有りません。マジックバッグに入って居るなら、他の領都にも売り込みに行けば多少高値で売れますよ」

 

 伯爵様暫し考えてギルドとも相談して割り振ろう、他の領主達に振る舞えば王都ででかい顔が出来ると言う物だと悪い顔をして笑っている。

 

 我々も各種の良い肉が多数手に入り当分は美味い肉が食べれるとほくほく顔だ。

 付き合ってられないので伯爵家を暇乞いし馬車で家まで送ってもらった。

 帰る間際に伯爵様が陛下から預かっている物だと手渡されたのは魔力測定盤だ、これが一番嬉しい。

 

 久し振りの我が家だな。

 玄関前でノイエマンとヤーナが出迎えてくれた。

 

 「「お帰りなさいませ。アルバート様」」

 

 「あぁただいま皆無事で良かったよ。紹介するよフィーィとフィーェだよ後で皆を集めて改めて紹介して話す事がある」

 

 ホールでも皆の出迎えを受けた後久し振りの居間で腰を下ろす。

 

 ウーニャ、キルザ、エミリー、サイナム、キューロ、ヘムの六名と屋敷のメイド・コック・厩番から御者まで全員をホールに集めフィーィ達妖精族を紹介する。

 300数十人の妖精族と御対面の後皆に妖精族と話しが出来る様に魔力を合わせる。

 皆目を白黒させていて見ている分には面白い。

 妖精族は俺の居間と寝室から通じる隠し部屋に住んでいることを教え、以後は掃除等では自由に居間寝室に入っても良いと許可する。

 

 ヤーナが溜め息混じりにそういう訳だったんですねと呟いている。

 

 ◇  ◇  ◇

 

 さぁ魔力測定盤の実験だ50センチ角の四隅を切り落とした八角形だ。

 外周の円に目盛りが有り0~100の数字が時計回りに刻まれ、次に二重の円に各区分けされ舛が一回りしていて内周には又目盛りと0~100の数字がこれも時計回りだ。

 中央に手形のマークが有るだけ。

 

 手を置くが何も起きず、魔力を込める。

 一瞬淡い光と共に0~100数字の下で紅色の線が時計回りにグングン伸び五重の円が出来て止まり、再び真紅の線が紅色の線の上に伸びる。

 止まると内周の所に紅色の線が現れ又時計回りに線が伸びこれは一周で止まった。

 結局外回り十回廻って五本の真紅の線、内回り一本の線が描かれて終わり。

 外周と内周間に四角く区切られた所には生・風・水・火・土・雷・・結・空・・・・・の文字が浮かび赤い円が見える。

 

 生・風・水・火・土・雷・・結・空・・・・

 とはっきり浮かび上がり俺が現在使える魔法を示していた。

 薄い文字で氷・聖・闇が見え文字の頂点に赤い点が一つ。

 

 生・土・雷・結・空の文字のは赤い線で囲まれているが・風・水・火・は線が途中で止まり真円にはなっていない。

 赤い線が一周しているのは完全に物にしている魔法だ、風水火は習得途中で有ることを示しているかその程度の能力しか無いかのどちらかだろう。

 問題は赤い点だけの表示だ、推測では潜在能力は有ると思われる。

 

 フィーィ達を紹介した後夕食を共にしてから用事が有ると居間に誘った。

 ウーニャ達六人の前に魔力測定盤を出す、何か<ウゲッ>って声が聞こえた様な・・・考えたら負け!

 

 ウーニャ、キルザ、エミリー、サイナム、キューロ、ヘムの顔を一人づつ見渡し魔力測定盤は知っているな。

 頷く彼等に之はその上位版で潜在魔法能力の有無まで確認出来る。

 鑑定魔法ではよく判らないが之なら各自の魔法の潜在能力迄確認出来ると思う。

 試す試さないは自由だがこの部屋を出たら忘れてくれ。

 

 ヘムが即座に試すと名乗りを挙げる。

 他の者には少し離れて貰い魔力測定盤に魔力を流して貰う。

 外周の線は一周目時計の文字盤で7辺りで止まり、内周は9の辺りだ。

 生・風・火の字が浮かび丸い線が途中で止まっていて、雷・結に赤点が付いている。

 ヘムに推測を説明する。

 

 「生・風・火は現在ヘムが使える魔法を示し雷・結の赤点は多分潜在魔法能力有りだと思う。

 練習して使えるかどうかは判らないが方法は有るが効果は人による。外周の赤線は魔力量を示していると思われる。魔力を増やす練習をすれば増えるかも知れない」

 

 ヘムが使える魔法は当たっているし使える魔法の回りに有る赤い線の長い程得意で強い魔法だと教えてくれ、なら赤点が示すのは使えるかも知れない魔法だと思うと嬉しそうだった。

 

 「正直手に入れたばかりで詳しい事は言えないが潜在魔法能力は間違い無いと思う」

 

 とても教会に高い金を払って教えて貰う事では無いので感謝された。

 

 次の希望者はエミリーが名乗り出た。

 結果は魔力量はヘムとほぼ同じ7程度だが内側の線が10の辺りだ、潜在魔法能力だが生・風の二つに赤点が付いている。

 エミリーにもヘムと同じ説明をして生活魔法はヘムに教われば使える様になるかも、後で皆を集めて詳しい話しをするから待ってて貰う。

 キルザとキューロは魔力が3程度で内側の線が8で潜在魔法能力無し。

 ウーニャが赤線一本と半周で内側の線が一周していた、潜在魔法能力は生・水・土・結・空と合ったので潜在魔法能力有りで説明をしていたが途中で待てとお座りさせる。(嬉しさの余り発狂)

 サイナムも魔力量が5少々有り内側の線は6の辺り生・火の潜在魔法能力有りと出た。

 

 先ず皆を集めて魔力測定盤の事は秘密にと口止め、無料で魔力測定や潜在魔法能力の有無を教えているのが知られたら教会を敵に回す恐れが有るからと説明。

 

 「銀貨五枚だもんねー」

 

 ウーニャのぼやきに皆が笑う。

 ウーニャ・エミリー・サイナム・ヘムには使える魔法の威力アップの方法を教えるが威力が上がるか否かは人によりけりで保障は出来ない。

 

 キルザとキューロには魔力量が少なくて潜在魔法能力が発現していない可能性が有ること本人の努力では魔力量を増やす手だてが無いか一つ試したい事が有るので協力を依頼する。

 全員毎日寝る前に魔力を練る、魔力を循環させる練習をして貰い一月後に再度検査する事で解散した。

 

 魔法の教師は・・・妖精族の中にそれぞれの教師が居るではないか。

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