第27話 身体強化の解明

 「今から各自に妖精族からの挨拶が有る。名前を覚える必用は無いが、返答は頭の中で考えて、相手に答えよ。念話と呼ばれる通話方法だ、何も聞こえ無かった者は進み出よ」

 

 玉座の間に再び貴族達の驚愕の声が沸き起こるが、静まるのを待って宰相の声。

 

 「最後に現在迄妖精族は人族を嫌い攻撃的な性格だと伝えられているが、侮蔑や暴行嘲笑捕獲等に対する反撃をしただけで、殺してはいない。

 攻撃的で執拗に攻撃して来ると伝えられ恐れられているが、攻撃を受けている者は過去に妖精達に対して攻撃や捕獲等を試みた者で、妖精達に近づかない様に排除しているだけだ。

 

 此以後エルゴア王国内で妖精達に対する攻撃や捕獲等の不正行為が有れば強力な反撃で報いて欲しいと妖精族にエルゴア王国として願った。

 万一死に繋がろうとも、妖精族を咎める事は一切しないと約束しているので、問題が起きた時はそれを思い出せ!」

 

 陛下が宰相を押さえ、貴族達と向かい合う。

 

 「予が以前アルバートと謁見する時に申した事を貴卿等は覚えているか。エルゴア王国国王シャイニー・エクスノール・エルゴア以下、王家とその家臣たる貴族の全てに対し、アルバートは如何なる言動無礼も勝手たるべし。との一筆を認め与えて有る心せよ。と」

 

 暫し各貴族達の反応を確かめた後続ける。


 「アルバートに対し地位や権威に依る如何なる威嚇や言動も厳罰に処す。と言ったが此には妖精族に対してもだ。忘れるな!」

 

 次は無いと思え、の恫喝とも取れる陛下の言葉に青ざめる貴族が結構いるなぁ。

 

 「宰相閣下、フィーィから全員に伝えたい事が在ります」

 

 宰相閣下が頷くとフィーィが全員に

 

 《エルゴア王国の旗の下にある場所で妖精達と出会い、妖精が自分の額を指差し貴方方を指差したら意思の疎通を望んでいる。恐れず目を閉じて受け入れる様に、貴方達の領地の皆に教えておいて欲しい。貴方達が私達に話掛けたい時には、話したい相手を見て心の中で語り掛けて下さい》

 

 「以上です閣下」

 

 静かに一揖して玉座の間を後にする。

 やれやれ終わったな。


 王宮から帰りのんびりお茶を楽しんでいると来客の知らせが、やれやれどうせ伯爵様だろう。

 この時間に抜け出せるのは彼しかいないと思い、応接室に向かう。

 

 「エルクハイムに戻って来るんだろうな?」

 

 開口一番がそれですか、苦笑いと共に頷く。

 

 「明日王都を立とうと思っています。のんびりしていては飢えた野獣の群れに襲われそうですから」

 

 「我が家にも訪問の打診が多数来ているし、押しかけて来る者もいる。今日の事でアルバートと繋ぎを持ちたい者がまた増えて、押しかけて来ると思うと頭が痛いわ。黙って領地に帰り勅命を実行した方が、陛下の覚えも良かろうにな」

 

 「謁見の時の事を覚えている者は控えるでしょう。物忘れの良さそうな方々が多数見受けられましたので、退去の挨拶にも伺いませんが陛下に宜しくお伝え願います」


 帰って行く伯爵様は大分お疲れの御様子で、苦労の程が窺われる。

 ウーニャに明日王都を出ようと思っていると伝える。

 支配人にも言っておくか、人の世の柵はかくも面等極まりない。

 

 出立には支配人以下ずらりと並んでのお見送り、オーセン宰相の訪問以来扱いが数段上がった様だとヘムが笑っていたが、それもおしまい 

 城門を出てエルクハイムに向けて、のんびり旅だと思うと肩の力が抜けるねぇ。


 * * * * * * * *


 帰りの道中はひたすら、じゆうりよくの解放と空に落ちない工夫に明け暮れる。

 

 最初は布を丸めた物を使用して投げて、落ちる力を断ち切る練習をするが難儀なり(笑)

 妖精族は自力で浮き上がっているが、でもじゆうりよくを解除または制御している様には見えない。

 

 長老達は何と言っていた、妖精族は魔力を纏いし後に羽根がでるとだが、魔力を纏うのは身体強化の基本だぞ。

 キルザに聞いてみると魔力を纏って身体強化した場合、最大で1.5倍の身体能力アップになる感じらしい。

 但し最大では5分も持たないと歎いていた。

 俺が森を歩くときは身体能力アップは2倍位だ、それ以上上げると身体が軽すぎて着地に時間が掛かり、森の中では危険なのでキルザや皆にも注意をしておかなきゃ。

 

 キャンプの食事のときに皆に魔力を纏っての身体強化は、1.2~1.5倍位の感覚が最良でそれ以上強化すると極めて危険だと忠告する。

 理由は身体強化を2~3倍にすると確かに強くなるが反対に隙が多くなり対人戦や獣相手では死を招く事になる。

 

 解り易いのが踏み込みは蹴り出した後、着地する迄は空を飛んでいる事になる。

 1.2~1.5倍なら直ぐ着地出来るが2~3倍だとその間何も出来ない事になるんだ。

 実験して見せる為に身体強化を3倍位にして踏み込み、皆には横から見て貰った。

 正面から見れば鋭い踏み込みだが他の角度から見れば隙の塊だ、皆唸っている。

 熟練冒険者が身体強化を上げるとき足は地面から余り離さない歩法を使っているのだろう。

 

 じゆうりよくを断ち切り空に落ちない方法は解ったので、後は簡単なので皆に協力してもらい、試してみる事にした。

 お茶を楽しんだ後ロープを取り出し、馬車の車輪に一端を結びもう一方は腰に回して抜けない様にする。


 「これから身体強化をするが、強化し過ぎるとどんなに危険か良く見ていてくれ」


 まず3倍でジャンプ、ウーニャの胸の辺りまで上がったが落ちて来るのが遅いその間隙だらけだ、次は5倍だ軽くウーニャの頭を越えるが落ちて来る間に初心者でも楽々攻撃が出来る。

 8倍ではウーニャとキルザにロープを持って貰い軽く地面を蹴る、ふんわりと浮き上がって行く俺を見て皆が呆気に取られている。

 ロープが伸びきった所で身体強化を少し上げると空に浮いたままになり二人にロープを引いてもらって降りた。

 

 何故どうしてと質問責めだが、皆の魔力量では無理だろう。

 ウーニャが今の10倍位の魔力量が有れば、少しは出来る可能性が有るかもだ。

 飛べたとしても魔力切れで墜落の危険が在るので止めときなと諭す。

 身体能力の優れた猫人族のウーニャでも、身長の10倍の高さから落ちたら大怪我間違いなしだ。

 

 じゆうりよくの話として、物が落ちる力を簡単に説明したが解って無いな。

 物は下に落ちるのが絶対の常識だ、これを断ち切れば無限に垂直に飛び上がる。

 つまり空に落ちるのだ。

 

 少し大きな町を抜けるときに、長いロープを買いその夜再び実験だ。

 ロープを両足に括り付け反対側は車輪に止め魔力を纏って身体強化をする、魔力量をじわじわと上げると身体がふわりと浮き上がって行く。

 普通の身体強化に纏う魔力量の9倍だ8倍だと昨日の様に軽く地面を蹴る必用が有ったが9倍だと勝手に浮き上がる。

 第一段階クリア、ロープは伸びきり俺は夜店の風船状態で安定しない。

 直ぐ隣でフィーィとフィーェが興味津々で見つめている。

 

 《アール、飛べる様になったんだ》

 

 《いや、飛べるというより浮いているだけかな。もう少し練習すれば飛べると思う》

 

 纏う魔力の量を調節して上下に動く、動くというより浮くと沈むって感じかな。

 両手を広げ掌だけ纏う魔力量を少し上げる、両掌を上に向けると沈んで行き下に向けると浮き上がる。

 掌の向きを様々に変えクルクル回る前転後転と思いのままに操れる。

 やっぱり羽根は身体のバランスを取っているんだ、手でやると飛行中は何も出来ないし腕も疲れる。

 

 妖精の子供達がワラワラやって来て、浮いている俺をつつく足のロープを引っ張ると玩具にし始めたので中止。

 

 基本が解ったので今日はおしまいにする、下で皆が呆れている。

 

 《フィーェ飛んでいるとき結界を張ってる》

 

 《張ってるよ。だって虫とぶつかったら痛いし汚れるから》

 

 そりゃそうか、俺だって身体強化しているとき防御結界を張っているもんな。

 後は飛行中腕を自由にして飛ぶには、羽根が必用ってか、必須だね。

 エルフの長老曰く魔力を纏い羽根が生えるて言ってたので、羽根は纏った魔力を羽根の形にしているだけだろうと思う。


 エルクハイムの街が見えて、皆久し振りの街を懐かしそうに見ているのは三月振りだからかな。

 家の前に着くと階段の前を塞ぐ柵と貼紙、通用門にお回り下さいって内装完成していたんだ、すっかり忘れていたよ。

 

 久し振りの我が家だが違和感ばりばりで慣れない。

 妖精族の子供達は、天井付近に付けられた下向きのスイングドアを使って縦横無尽に飛び回っている。

 新しい使用人達が驚いているが直ぐに慣れるだろうし、そこはノイエマンとヤーナに任せて置けば安心だ。


 新しい家の前で日々飛行訓練だ、魔力を纏い羽根を作るとゆっくりと前進左旋回右旋回後進停止などをひたすら繰り返す。

 

 ノイエマンがやって来て収支報告書の確認と、住宅の賃貸状況の説明で訓練の邪魔をする。

 文句を言えば王都の冒険者ギルドで魔獣や野獣を相当数売り払った、その代金の振込みを確認してくれと言われた。

 

 暇な時にギルドに顔を出しサブマスやギルマスの求めに応じ、魔獣や野獣に薬草と大分売り捌いたからな。

 薬草も結構引く手数多で、ギルマスがホクホクしていた。

 最後には各種パープル種とレッド種を三体ずつ置いていけと脅されるし、時々オークションに出して購買欲を煽って高値で売るぞと張りきっていたギルマス。

 

 妖精の実の自然発酵熟成された酒は見せなかった、此は暫く市場には出さずに俺一人で楽しむんだ。

 持って来てくれた一族の長の名から、サランドの酒と命名する。

 此はエルクハイムに帰り着いてからフィーェ達が遊びがてら競争で森に行き沢山収穫して来るので在庫が膨れ上がっている。

 

 ノイエマンに見せたところ、地下の食料庫の隣に酒蔵を造る嵌めになった。

 集まったサランドの酒は例の蜜を入れている徳利と同じ物を作って入れ保管しているので、元の材料がどの様な物か分からないだろう。

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