第25話 力の誇示
街の通過は面倒だが、そこは陛下から貰ったブラックカードを使わせて貰う。
時に小僧がブラックカードを出すものだから衛兵に疑われるが、責任者が呼ばれた時点で解決する。
まぁ見た目何の変哲も無い馬車だし、護衛は冒険者二人に見えるからね。
ウーニャ達には揃いの冒険者風の衣服と革鎧にブーツを与えているので、一見裕福なお家のボンボンと護衛の一行に見えるらしい。
王都アラマダに着いたのはエルクハイムを出て18日、のんびりしすぎたかな。
貴族専用の通路に進む様にキルザに伝える。
通路の途中で衛兵が馬車の前に立ち塞がりキルザを怒鳴り付けてくるが、降りていきカードを見せると即座に道を開け敬礼してくれるが、責任者を名乗る騎士から声を掛けられた。
「アルバート様ですか」
「はい、アルバートです」
「宰相閣下とエスコンティ伯爵様からの伝言です。宰相閣下からは、王都に到着したらなるべく早く王宮に来て欲しいそうです。エスコンティ伯爵様からは到着次第連絡を頼む、との事です」
馬車を預けて泊まれるホテルの場所を尋ね、礼を言ってホテルへ向かった。
皆初めて王都に来たので興奮気味、ホテルは中々のものでお高いんでしょう。
と突っ込みたくなるが自制する。
フロントでブラックカードを示し、俺と護衛の四人の部屋を借りる。
序でに紙とペンを借り、オーセン宰相に王都到着とシリエラホテルに投宿した事を記した書状を、フロントに渡し王宮の門衛にアルバートから宰相閣下へと告げ渡す様に頼む。
エスコンティ伯爵様にはウーニャとヘムに道を覚える序でにと、王都到着とシリエラホテルに投宿したと伝言を頼んで送り出した。
オーセン宰相からは明日、迎えの馬車をホテルに差し向けるので参上されたしと返書が届いた。
返事がはやいねー、じりじりしていたのが目に見える様ですよ宰相閣下。
エスコンティ伯爵様は、夕食前にホテルに来ましたよ。
部屋を準備して待っていたのに、ドガール様も会えるのを楽しみにしていたので残念がっていたと伝えられた。
伯爵様とは、夕食を共にしながら話し合い。
「伯爵様もお気づきでしょうが、私一人でエスコンティ領の全兵力とぶつかっても負ける気はしません。王都の全兵力が相手でもです」
「そうだろうとは思っていたよ。特に城壁建設の見本を見せて貰った時にね。少々の大軍相手でも壁で囲って押し潰せば一人で十分だとね。君が見本に建てた壁は無敵の強さを誇っている。城壁より少し強固にして有ると言った壁すら、小さな穴を開けるのにどれ程の時間と魔法の全力攻撃を必用としたか」
「その俺が妖精族の力を手に入れたと王家や宰相は考えるでしょう。エルクハイム救援にどれ程の妖精族が来ましたか」
「百以上の群れだったよ。そう群れ単位で行動し攻撃と交代に休憩と見事な連携だった」
「妖精達の一族は、いや集落は300人~400人で行動します。フィーィの一族は300人少々です。一群300人として100群で30.000人の空中機動軍団が出来上がります。魔法の威力も十分以上有りますしね」
「ああ、書状で妖精族に対して如何なる攻撃や捕獲をも禁じ、小石一つ投げるなと書いていた意味が良くわかったよ」
「彼等は人族からの迫害に殺さない程度の反撃で許して来ましたが、それが何時までも続く保障は無いのです。私は彼等と友誼を結びましたが、エルゴア王家や貴族連中にそれが出来ますか」
「王家は説得出来るかも知れない。貴族は判らないし、妖精族の本来の力を知れば利用しようとする輩は必ず出て来ると思う。他国もな」
「陛下に伝えて下さい妖精族に手を出すなと、明日陛下との話し合いが決裂すれば私はこの国を出るつもりです。その際はエルクハイムに有る私の資産と権利は全て放棄しますので宜しくお願いします」
伯爵様の返答を聞かず席を立ち踵をかえした。
多分伯爵様はこのまま王宮に向かうだろうが、説得出来れば良し駄目なら切り抜ける覚悟が必用になるな。
死ぬ気は無い防御結界と土魔法が有れば逃げる事など訳は無いが一服盛られたらアウトなので、油断は禁物だ。
翌朝ウーニャ達に、俺が連絡も無く3日経っても帰って来なければ護衛の任務は解除すると伝え、一人金貨10枚を渡しておく。
その際はエルクハイムでの仕事は伯爵様が引き継ぐと伝え、迎えの馬車に乗った。
* * * * * * * *
「アルバート様がお越しです」
従者の声に入室の許可が出る。
部屋には陛下と宰相閣下にエスコンティ伯爵、他に近衛騎士か王都防衛責任者と魔法使いの様に見える。
「お招きにより参上しました」
「単刀直入に言おう。妖精族をどうするつもりだ」
国王陛下、直球で来ましたね。
「何も、何もしませんよ。私は妖精族と友誼を交わし共に歩むだけです。妖精達を攻撃し、無用な手出しをしてきたのは人族です。人族が妖精達を攻撃し迫害を続け、捏造の悪辣狂暴な妖精像を喧伝してきただけでしょ」
「お前は、一国の軍事力にも匹敵する力を手にしているのだぞ! 彼等をどう使う気だ」
笑っちゃうね。
如何にも軍人の思考そのもので、話しも聞いちゃいない。
「一国の軍事力ですか、それ位の力なら俺一人で持ってますよ。話しを聞いていましたか? 妖精族に対して何もしないと言ったのを」
「済まぬ、座ってくれアルバート君。エルクハイムでの魔獣野獣に対する妖精族の報告を受け、衝撃を受けているのが実情だ」
「人族と妖精族との確執は知っていますが、私は介入する気は有りませんよ、宰相閣下」
「報告を受ける限り、妖精共は強力な魔法攻撃を連続で放ち、魔獣達を蹂躙していたと有る。これは由々しき事態だと思わないのか」
「何故です」
「我々にとって、極めて危険な存在が直ぐ傍に居るのだぞ」
「陛下、彼等は何者です。話の出来る相手ですか」
「侮辱する気か小僧!」
血相を変えて立ち上がる二人に、殺意を向けた。
魔獣や野獣に対するときには使う事も在ったが、人に対しては初めてだった。
「陛下、話が聞きたいとの事で参上したのですが、此は査問の場ですか」
二人に殺意を向けたまま、国王に問い掛ける。
伯爵様必死に立ちあがり何か言おうとしているが、顔が蒼白っての初めて見たよ。
あー陛下も宰相閣下も極めて顔色が悪いね、大丈夫かな。
「まっ待ってくれ、アルバート」
部屋の外が騒々しい、ってか踏み込んで来ないのか。
「エスコンティ伯爵様、妖精族がエルクハイム救援に来た時に私が持たせた書状の内容を陛下や彼等に話ましたか」
扉の外には多数の人の気配、しかも明確な殺意を持って続々と集まっている様だ。
「私が魔獣や野獣が集まり、エルクハイムに向かっていると知ったのは、暗闇の森と呼ばれる裂け目を越えた向こう側です。森の里と呼ばれる集落にいた時に、妖精族の一団が気配に気づき知らせてくれたのが最初です。距離にして歩いて12日の遠さです。伯爵様ご存知のフィーィ達の一族が私と共に居て、エルクハイム救援を申し出てくれました。私はフィーィ達一族だけでは無理だと思いましたが、知らせてくれた別の一族も協力を申し出てくれ他の部族にもエルクハイム救援の要請を発しました。それが陛下が知りたいエルクハイムに多数の妖精族が集まった真相です」
「一つだけ聞きかせてくれ。何故妖精族が君にエルクハイム救援を申し出たのだ」
陛下が喉に痰が絡んだ様な声で聞いてきた。
「簡単ですよ。私とフィーィは妖精族の名に掛けて、と友誼を誓った仲です。討伐が終わっても何一つ要求しなかったのは、俺と妖精族の友誼の為に力を貸しただけで、報奨の為じゃない」
「私と敵対しますか、妖精族をこれからも迫害しますか。返事は三日待ちましょう。それと以後妖精達に対し、攻撃や捕獲等冗談でも彼等に危険を及ぼす行為には死をもって報復します。例え子供が投げる小石に対してもです。小石と謂えども、当たれば妖精達にとっては死を意味しますからね。死にたく無ければ妖精達に手を出すなと告知して下さい」
そう告げてから、馬鹿な二人に対する殺意を消した。
「宰相閣下、帰らせてもらいますのでご案内願えますか。通路に控える者達を殺したくはないでしょう」
蒼白な顔で震えるオーセン宰相の露払いで、王宮からホテルに戻る。
* * * * * * * *
アルバートが出て行った部屋では、国王の怒りが爆発していた。
「お前達の間抜けな言葉に冷や汗が出たぞ! 同席させたのは失敗だった。お前達二人には謹慎を命ずる。下がれ!」
「魔獣のレッド種を一撃で屠る相手に対し、大した事が無いと高をくくり、殺意を向けられただけで震え揚がって一言も言えずか。笑ってしまうが、陛下はどうなされるつもりですか」
「敵対出来ると思うか」
「彼は王国を、陛下を信頼していませんよ」
「何故だ?」
「一つは彼との約束を破り、笑い話で済ませた事。先程の軍務卿と魔法総監の同席です。私が昨日彼と話し合った内容を伝えても、尚あの有様です。彼の意思は伝えましたが、陛下は彼を軽んじて対応を間違えたのです」
オーセン宰相が室内に戻ると、青ざめた顔のまま沈思する国王と、それを冷ややかな目で見る伯爵の姿があった。
「陛下、直ちにアルバートに謝罪すべきです」
宰相の言葉に力無く頷く国王と、渋い顔のエスコンティ伯爵
「謝罪は宜しいが、何を謝罪されるおつもりです。先程の二人の態度ですか、謁見の時の素顔を晒さない約束を反故にした事ですか。今回アルバートを呼び寄せた事に対してですか」
「今回エルクハイム救援でアルバートの知る詳細を聞きたかったが、妖精族に対する侮りとも取れる数々の言動に対してだ」
「なら取る手立ては一つだけ、妖精族との和解です。妖精族に対し現在迄の迫害を謝罪し、今後王国として妖精達、妖精族に対し如何なる攻撃も許さず断罪すると約束する事です。今一つは現在流布される妖精達に対する言われ無き中傷を訂正する事です。お約束出来ますか」
エスコンティ伯爵の言葉に、頷く国王と宰相。
「ではお客人をお招きしたいのですが、宜しいですか」
何の事か良く判らないが、今は伯爵だけが頼りなので頷く二人。
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