第22話 即売会
茶番の後始末も落ち着いたので白い狐が見たいと陛下からの伝言が伯爵様経由で来た。
王宮に行くと王都の冒険者ギルドのギルドマスターのヤンセンさんも居るではないか。
挨拶して何用かと聞くと貴族や大商人も集まっていて、俺の出す魔獣の品評会兼即売会だと言われた。
近衛騎士の屋内訓練場に行くと大勢の人と暇そうな近衛騎士が多数、明らかに非番の者だ。
陛下と宰相閣下が現れると皆一斉に頭を下げる。
「陛下何も聞いていませんが何の集まりですか」
「うむ、すまないアルバートに貰った妖精の実で造る酒を酌み交わした者達で白い狐の事を話したら我も我もとなってのう」
「名も顔も知られてしまったので魔獣を売るのはやぶさかでは在りませんが事前に一言下さい。嫌なら逃げますから」
「おいおい逃げる気満々かよ。まぁ皆裕福な者達で買い渋る事はなさそうだぞ」
「はいはい、で宰相閣下は何故」
「アルバートは暗闇の森から珍品を持ち込むので今日も何かないかと思ってな、それに妖精の実で造る酒が妙に後を引いてな妻も妖精の実が有るなら購ってこいとの命令じゃ」
「皆さん大変ですねぇ。んじゃ出しますか最初は白い狐ね。これは今日は売りませんよ。皆さんもっと後ろに下がって下さい」
皆を下がらせた場所を薄く固めると、白い狐を出す。
体高約2.5メトル、体長約9.5メトル、鼻先から尻尾の先まで約16メトル、体重約2100キロ流石は狐だ改めて見て尻尾の見事なこと。
「皆さん仕留めて即座にマジックバックに入れているため未だ血が流れていますのでご注意下さい」
一瞬ウオーって声が上がる。
ギルマスのヤンセンさんが初めて見るし聞いたことも無い固体だね。
これオークションに掛けたら天井知らずになるな。
怖い事を言うなぁ。
皆周囲を巡り毛並みを確かめ額の紅い炎の模様を確認している。
後ろの騎士達の声が聞こえて来るのだが〔おい見ろよ額の一撃だけだぜ〕とか他には〔他には何処にも傷が無いぞ〕〔暗闇の森ってこんな化け物が居るのか〕〔おいこの化け物を一撃だぞ〕
俺も化け物扱いかよー
中には〔純白って聞いたけど輝く様な毛並みだねぇ〕〔これを見ただけで来たかいが在るな〕〔綺麗ねー〕って楽しんでいただけているようです。
「皆さん次からは魔獣を出しますから気に入った物が有ればお譲りします」
白い狐をしまってブラウンベアのレッドがら行きますか。
ブラウンベアのレッドです。
体高約3.3メトル、体長約9.5メトル、全長約12.5メトル
「おいおいこれも一撃だぜ、しかも額にだ」
変な声が聞こえるが無視だむしだぜ。
「ギルマスさんこれってオークションで最低どれくらいなの」
「そうですねーこの大きさで無傷だと金貨300枚からの競り値に成りますね」
「じゃー600枚出します」
「700枚」
「750枚」
「800枚」
「あー一寸待って下さい。ギルマスのヤンセンさん正規のオークションでは無いのですよね。では出品者の権限で今日売る物10体並べます。ヤンセンさん買い取りが決まれば手数料を払いますからギルドの方で責任持って運搬して下さい」
「判ったがどうするんだ」
「レッド種を各種10体並べますからこれはと思う固体に、自分の名前と固体名に買い値を書いてギルマスのヤンセンさんに渡して下さい。同じ固体に何度でも構いません納得のいく金額にして下さい。複数の固体に入れても結構です。では全員壁際まで下がって下さい」
ゴールデンベア・レッド
ブラウンベア・レッド
ブラックウルフ・レッド
斑のラッシュウルフ・レッド
シルバーフオックス・レッド
グリーンフオックス・レッド
ホーンボア・レッド
ビッグホーンボア・レッド
ワイルドボア・レッド
フォレストタイガー・レッド
「以上10体です。これはと思う固体名と値を書いてギルマスのヤンセンさんに渡して下さい。買い取り者が決まったら全ての紙を公開します」
「考えたな」
「陛下ー、止めて下さいよー面倒事は」
「流石に各種のレッドを並べると壮観だな。未だ在るんだろうパープルや普通種を出して無いし」
「有ります。さっさと片付けたいのですが増えちゃうんですよね」
「良し決めた。白い狐のレッドを金貨2.000枚出そう」
「止めて下さいよ陛下、高く売りたい訳じゃ無いんです。そこそこの金が有ればいいんですから。別に討伐が趣味でも無いんです」
「それにしては多過ぎないか」
「森の奥に行けば勝手に襲って来るから返り討ちにしてるだけですからね。殺せば捨て置く訳にも行かないからマジックバックに入れているだけです」
「お前、空間収納出来るだろう」
「うーぅ黙ってて下さいね。そうだ陛下半値で良いですから教会に有るような最高の魔力測定盤が手に入りませんか」
「ありゃー金貨500枚位だろ」
「最高品質のが欲しいんです。陛下の買い取り価格から差し引いておいて下さい」
◇ ◇ ◇
夕方には伯爵邸に帰れたが迂闊に陛下の呼び出しには、出向かない様にしようと心に誓う。
少し遅い夕食は伯爵家の家族と共にする。
謁見が終わった後ゴタゴタが続いたが俺の顔も名も公になってしまったので、伯爵様の家族とは貴族同士の付き合いに巻き込まない事を条件に顔を合わせたのだ。
伯爵様には陛下に魔力測定盤の最高品質の物が欲しいとお願いしたので、以前の頼みは忘れて下さいと謝罪した。
明日は冒険者ギルドに行って普通種のオークやホーンラビット・ホーンボア・等を、どの程度なら一気に処分出来るのか聞いてみよう。
伯爵様に道案内の者が欲しいとお願いしておいた。
自室にもどるとフィーィに呼びかける。
この屋敷って警備が厳重で俺を監視している訳では無いのだが、迂闊にフィーィやフィーェを部屋に招くと見つかる畏れが大きいんだよね。
今フィーィ達妖精族の面々は王都から一日程離れた森に居て、少数が街道沿いや耕作地に点々と有る巨木の梢で遊んでいる。
どうせ狩った獲物を大量に処分するときの為に、王都か周辺に目立たない家を買って拠点にするかな。
エルクハイムでは王都程大量に消費出来ないからな。
朝食の時エスコンティ伯爵夫人のサルニナ様から王都案内の護衛をホールに待たせて在ると聞かされた。
「注意して行くのよ。貴方は未だ成人前なのだから」
まさか護衛の方達はエスコンティ家の騎士の格好はしてないよね。
確認の為にサルニナ様に聞くと、王都では当然騎士の出で立ちですと言われてがっくり。
目立ちたく無いので私服を要求、駄目なら案内は要らないと強行に主張して呑ませる。
ホールに行くと何故かドガール様が平民の格好で護衛らしき二人と話している。
嫌な予感がするが気にしたら負け
「ドガール様どうしたのですか、まさか一緒に行くなんて言わないですよね」
「え、行くよ。父上にもアルバートと冒険者ギルドに見学に行きたいと許しを得ているからね」
ニッコリ笑って爆弾を落としやがる。
ドガール様身長約180センチ、チョコレートブラウンの髪、金色の瞳。2センチ程の角が2本中々のハンサムボーイで目立つんですけど。
「冒険者ギルドの用事を済ませたら買い物に行きますが宜しいので」
「アルバート、逃げようたってそうは行かないよ。面白そうだし冒険者ギルドにも興味が有るんだ」
期待感満載のキラキラお目めでやがる、ギルドで野獣をホイホイ出したら又面倒事になりそうだが勝手にしろ!だ。
護衛は冒険者風のエルフ族の男性ヤハトマと見るからに動き重視の服装で俊敏そうな猫人族の女性クースと名乗る。
ドガール様のお守りをお願いしますよと予め言っておく。
外観は地味で目立たない馬車が用意されているが二頭の驢馬が立派過ぎて釣り合わない。
まぁ伯爵家に貧相な驢馬は居ないし仕方がない。
冒険者ギルドの中に入り買い取りカウンターに行く。
「坊主買い取りか」
「はい野獣を少々」
「物は、数はどれくらいだ」
「えーとホーンラビットが50匹位野豚が10頭位マウンテンシープも10頭位で後オークも10頭位出したいのだけど大丈夫ですか」
「あーんお前何しに来た。ガキの冗談に付き合ってられないから帰れ!」
怒り出したよ、仕方がないからブラックカードを出して見せる。
「ギルドマスターのヤンセンさんが纏まって引き取ると言ってくれたのですがヤンセンさん居ますか」
問い掛けにフリーズしかかったが持ち直したよ。
偉い!!!
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