第21話 茶番劇高みの見物

 「喧しい!!!陛下の御前で在る。分を弁えろ!!」

 

 近衛騎士団長の怒声に一瞬にして沈黙する一団

 

 「騎士団長はその無礼な男を何故咎めぬ!」

 

 おっ、勇気在る発言(蛮勇だな)

 

 「お前達は先ほど予が申した事を聞いてはおらぬか、宰相先程予が申した事を今一度彼らに教えてやれ」

 

 「陛下は、【之から予が会う相手には、エルゴア王国国王シャイニー・エクスノール・エルゴア以下、王家とその家臣たる貴族の全てに対しアルバートは如何なる言動無礼も勝手たるべし。との一筆を認め与えて有る心せよ】と申されました」

 

「その後念を押して」 

 

 「【アルバートに対し地位や権威に依る如何なる威嚇や言動も厳罰に処す】と申しました」

 

 「お前達は予を何だと思っているのだ、良い先程から怒声罵声怒号を挙げていた全ての者を拘束せよ」

 

 近衛騎士団長の合図と共に貴族の列の最上位に居る公爵様が玉座の傍らに控えていた騎士に引き摺り倒される。

 逸れを合図に公・候・伯・子・男と爵位階級の全ての者が近衛騎士に引き摺りられ倒され拘束されていく。

 

 見渡せば概ね四人に一人は騎士に拘束されているな。

 

 「お前達は予を侮り過ぎだな。あれ程念を押してさえ無視し、予とアルバートの会談を邪魔出来たな。其奴等をそれぞれの控室にて拘束しておけ」

 

 宰相閣下が国王の目配せを受けて静かに謁見の間から下がる。

 憶測だが拘束した貴族の護衛騎士達の武装解除と監禁だな。

 この調子だと拘束された貴族の王都の各屋敷には王国騎士団が派遣されてるな。

 江戸時代なら上意書を示し閉門蟄居で該当貴族の屋敷を封鎖し貴族家の騎士の武装解除にと大忙しだろうな。

 

 「アルバート、恥を晒したな許せ」

 

 要らぬ事は言わぬが吉、軽く一揖する。

 

 「別室でゆっくりと話したい、暫し待ってくれ」

 

 静まり帰っている謁見の間、その貴族達を見渡し。

 

 「先程宰相からも聞いたと思うが再度念を押して於く、エルゴア王国国王シャイニー・エクスノール・エルゴア以下、王家とその家臣たる貴族の全てに対しアルバートは如何なる言動無礼も勝手たるべし。との一筆を認め与えて有る、心せよ。アルバートに対し地位や権威に依る如何なる威嚇や言動も厳罰に処す。尚アルバートには一切手を出すな出すなら覚悟を持ってせよ」

 

 俺は謝意を現す為に45度の最敬礼で応える。

 

 「エスコンティ伯爵以後も卿の統治する地にアルバートが住まう限り支援を頼む」

 

 「はっ心得ております」

 

 国王陛下が静かに謁見の間から去る。

 エスコンティ伯爵と手持ち無沙汰にしていると従者が呼びに来てくれた。

 

 「エスコンティ伯爵様アルバート様陛下がお待ちです」

 

 ◇  ◇  ◇

 

 「エスコンティ伯爵様アルバート様です」

 

 声を掛けドアを開けると脇に下がり一礼する、うむ流石は王家に仕える従者だな。

 部屋に入ると国王陛下がソファーに深く腰を沈めお茶を飲んでいた。

 

 「まぁ礼は不要だ座って茶でも飲め」

 

 思いっきりざっくばらんになってますやん陛下。

 

 「この期どうすべきかな、アルバート」

 

 軽く小首を傾げ陛下と伯爵を伺う、何やら話しが出来上がっている様子だな。

 思い付くままを述べる。

 

 「拘束した貴族の王都の屋敷を抑え別命在るまで家族は蟄居謹慎、護衛の騎士達は武装解除の後一室に監禁かな」

 

 「ふむ」

 

 「それと拘束した各貴族の館や王宮の貴族控室の捜査。拘束した貴族は永年蟄居でしょうかね。無傷で嫡子に爵位の継承は無理でしょうから降格と領地の縮小転封に高額の謝罪金を課して力を削ぐかな。貴族の領地の反乱防止の為には領地の家族は即刻王都の屋敷に呼び寄せ領地は一時官僚の手に委ねる・・・って処ですか」

 

 「アルバートお前本当に14才かぁ?」

 

 「15才になってます」

 

 陛下の視線に気づいた伯爵様が

 

 「私はアルバートに依頼はすれど要求はしませんし詮索もしません」

 

 エスコンティ伯爵様が肩を竦めて陛下を見る。

 

 「今回の功績は大きいぞ報償は何を望む」

 

 伯爵様困った顔をして首を振る。

 

 「陞爵も領地も要らぬのか」

 

 「領都エルクハイムの城壁を300メトル押し広げ新たな城壁を築いたばかりです、。領地を移る気も爵位を上げたいとも思っておりませんので」

 

 「まぁその辺はまた後ほどな。アルバートはどうだ何か欲しい物は在るか」

 

 「あー魔獣野獣の在庫が溜まり過ぎて処分したいので、せめて十頭程度は纏めて買い取りに出したいのですが」

 

 「おおそれは王都の冒険者ギルドに連絡しておこう。と云うかオークションに出す様な物を多数持っているのだな。純白の狐でレッドとか云っていたが」

 

 「はい冒険者ギルドの図鑑には無い種類で拙い鑑定では狐・美味しい・危険としか鑑定出来ません」

 

 国王様爆笑しているよ。気分が悪いので口封じしてやろう。

 

 「陛下少し献上したい物が在りますが鑑定能力の高い方をお呼び下さいませんか。果物二種類と果実酒です」

 

 伯爵様頬が引き攣ってますよ。

 陛下は面白そうな顔をして・・・期待してますね。

 

 従者に大皿を一つ大きめの木箱に台車を一つ要求

 大皿には紅玉を山盛りに木箱には妖精の実を、大きくて余り入らないので四つ程と発酵した物を二つ出す。

 妖精の実は初めて見ると呟き口を切っている二つに興味を示す

 

 「これは発酵しています。この果実には果肉が無く果汁と種のみです。果汁も美味しいのですが口を開け一晩於くと発酵を始めまして酒に成ります」

 

 鑑定をした結果無毒果汁美味、果汁発酵した物は美酒と出た。紅玉も味香り良しの結果だ。

 果実二つと発酵している物を厨房に送り果実は切り分けて皿に、発酵酒はデキャンタに入れて持って来させる。

 ジュース用のグラスは三つ有るのに発酵酒用のグラスが二つしか無い、ぶんむくれだわ。

 先ず伯爵様が毒味と証して香りを楽しみ酒を口に含んで、良い笑顔だぜ。

 陛下が待ちきれずグラスに手を伸ばす、一口含んで鼻から息を抜き、おって顔をする。

 

 もう残りは出してやらないからな。

 宰相閣下が何時の間にか座っていて紅玉をしゃくしゃく食べている。

 

 「おっそうだ」

 

 陛下が酒のグラスを片手に内懐を探り一枚のカードを差し出してきた。

 

 「アルバートこれをやろう」

 

 グラスを片手に伯爵様が噴き出した。

 名刺サイズ漆黒に金色の王家の紋章に横線、裏には俺の顔が点描で画かれていて下に名前とエルクハイムの文字

 

 宰相閣下が説明してくれた。

 国内最強カード、通称ブラックカード国内なら如何なる街もフリーパスだし貴族にも面会を強要出来る便利物。

 しかも、しかもですよ奥さん!

 

 「アルバート君冒険者ギルドと商業ギルドで金の出し入れが出来ます。後で魔力をカードに流して於いて下さい、それで他人は金の出し入れは出来ませ」

 

 ほぼ無敵!

 

 「これってヨルムハイド男爵が渡してくれたコインの強化版ですか」

 

 伯爵様グラスを掲げてウンウン頷きながら笑っている。

 酔っ払いの相手よりせっかく王都に居るんだから見物とお買い物を楽しみたいのでとっとと帰りましょう伯爵様。

 

 「白い狐は後ほど連絡するからその時に見せてくれ。気に入れば買い取るぞ」

 

 陛下グラスを掲げて呑む気満々ですがその前に遣ることがあるでしょ、青い顔をしたお貴族様が大量に待ってますよ。

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