第18話 王城
七日歩いて着いた所は至る所倒木でまさに根こそぎ倒されていた。
少しは持ち帰って建材にしようと思い風魔法が使える妖精族に手伝って貰い切断する。
《アールこの木はとっても良い匂いがするの》
漆黒に所々白い筋が入った固い木だが太さはさほどないので手近に有る10メートル程を3本程収納する。
鑑定では香木となっているので妖精族の好む香り何だろう。
適当に木を取り払った所に高さ20メートル横幅30メートルの的を造る。
50メートル程離れてお約束のファイアーボールからだな。
ファイアーボールの要諦は強い火球と速度だなテレビで見た溶鉱炉をイメージして大きさはテニスボール大でスピードはYouTuberで見た海面上を音速を超えるスピードで飛ぶ戦闘機だな。
先ずファイアーボールはテニスボール大でよしっ熱ッツウぃぃぃ!
ファイアーボールを掌の上で作ってはいけないと学習した。
もう一度、今度は掌を前に向けて1メートル前にファイアーボールを作り、行け!
ヘロヘロヘロと飛んで行き何とか壁に当たりポシュン、と消えた。
速度のイメージを忘れてた、てへ。
間抜けな失敗を繰り返す事数十度、何とかボンって音と共に的に当たる。
先は長そう土魔法ならさして考えもせずに思い通りに使い倒しているのに、経験の差ですかね。
でもこれって生活魔法で風水火は使っていたからまだ簡単にイメージ出来るんだよな。
日々之練習に次ぐ練習、時々妖精族の子供達とじゃれあい。
魔法のイメージはバッチリだが実践が俺に着いて来ない・・・カラオケで俺の歌声に曲が着いて来ないって言っているのと同じだな。
自分で下手と認めては駄目だ! 頑張れアルバート負けるな!
気が付けば料理長のコステロに作って貰った大量のスープやパンにステーキ等作り置きの食料が無くなりかけていた。
風水火に氷は一応使える迄になった、為ったが風水火と氷の威力の制御が今三くらいに下手だ。
自分でも下手糞と思う、使う時には威力を気にせず周囲の被害も無視出来る時に使おう。
周囲の被害を気にしなければ立派に使えるんだからね、うん。
食料が無くなりかけているので1ヶ月は過ぎているのだろう。
ぼちぼち我が家に向かうべきだが直行直帰は味気ないのでフィーィ達と森を探索しながら帰ろう。
妖精族の子供達は飛行能力も格段に上がり魔法も、俺の横でバンバン撃ちだし百発百中の腕前に泣きそう。
子供の成長は早い!と納得しておこう。
妖精族達は周辺を探索しながら日々その数の増減を繰り返す、周囲にいる妖精族が訪れたり俺の家にいる者達が様子を見に来たりしている。
時に珍しい果実や花の有る場所に誘導して貰ったりと充実した日々だ。
珍しい果実とは大きな瓢箪型で縦80センチ胴回り40センチ位で中央部分が少し窪んでいる、中に果肉は無く果汁と種で瓢箪の様に上部をくり抜いて飲む。
鑑定にも名前が出ないので一般に知られて居ないのだろう、妖精達が飲む魔力の実に似ているので妖精の実と名付ける。
味も良いが香りが何とも言えず爽やかで完熟だと教えてくれる実をホイホイと空間収納に放り込む。
夜に妖精の実を飲んで空間収納に仕舞い忘れた実の果汁が発酵しているのに気づいた。
試しに数本口を開けておいたが発酵せず。
飲み残しが発酵したのなら口噛みの酒と同じかと飲み残しで試してみたら見事発酵している。
一々口を付けるのも面倒なので発酵した果汁を新たに口を開けた物に少し入れておいたら発酵したので以後この手で酒造りに励む。
妖精達には同じ果実を探して貰い数百本の在庫を抱える事になった。
花は希少種の艶麗草で衣服と共に置いておくと良い香りが長く続くらしい。
沢山咲いていたのでヤーナやメイド達の土産に最適だね。
後は妖精族達が魔力を吸い上げる魔力の実のなる木を敷地に植える為、樹高5メートル程で葉が大きく肉厚で実が魔力を良く溜める木を数十本採取。
紅玉の木も探して貰い挿し木用に数十本切り取る。
鑑定してみると雌雄の木が有り雌雄一対の木が近くになければ結実しないとな。
雌の木は巨大なのに雄の木は10メートル程で雌の木とは似ても似つかない姿だった。
エルクハイムに帰り着いたのは二ヶ月近くなってからだった。
南門で入門待ちをしていると衛兵が駆けてきてアルバート様ですよね、と確認され頷くと即効で御注進に及ぶべく駆け出した。
責任者らしき衛兵がどうぞどうぞと即効で通してくれたので会釈して入る。
伯爵やハイド男爵は無視して帰ろうーっと。
◇ ◇ ◇
王家へゴールデンベアとブラックウルフのレッド種を献上したい旨の申入れをしても、一向に連絡が無かったが漸く王都に参上せよとの連絡が来た。
王家の封蝋がなされた手紙にはゴールデンベアとブラックウルフのレッド種を持参し、王都に到着次第宰相に連絡せよと合った。
ゴールデンベアとブラックウルフのレッド種二体とは信頼出来ずに献上を受ける前に確認しようとする姑息な事に鼻白む。
最もこの二種のレッド種が討伐された記録が見当たらないのにいきなり二体だから無理もないか。
屋敷でアルバートからゴールデンベアとブラックウルフのレッド種二体を受け取り、冒険者ギルドの運搬専門の者のマジックバックに収納。
翌日2台の馬車で王都に向かった。
伯爵家の護衛騎士30名と冒険者ギルドの護衛30名が2台の馬車の前後左右を囲んでの旅は物々し過ぎるがやむを得ない。
王都に到着し伯爵邸に入ると即座に執事に用意の手紙を持たせ王宮に向かわせた。
何時もなら改めて王家の使いが手紙を持って参上するのだが、返事は即座に執事に持たせて来た。
翌日正午にゴールデンベアとブラックウルフのレッド種を持参し王宮に来られたし、と宰相の
名で記されていた。
先ず宰相閣下が御検分なされるか、皮肉な笑みが零れる。
アルバートの気持ちも判るよ。
翌日冒険者ギルドのギルドマスターと運搬係護衛の騎士30名を従えて王宮に参上、4名の護衛と共に先ずエスコンティ伯爵家の控えの間に入る。
然る後宰相閣下に面会を申し込む。
待つことなく従者が現れ宰相閣下がお会いになられますと面会場所に先導する。
曲がりくねった通路を抜けた先は近衛騎士団の屋内訓練場で在った。
既に宰相閣下と国王陛下が待っており慌てて臣下の礼を執るべく跪く。
「良い、エスコンティ伯爵久しいのう」
「陛下には御機嫌麗しゅう」
「固い挨拶は抜きにして見せて貰おうか」
「はい、ですが倒して即座にマジックバックに保存していた物で、出せば血が滴り汚れますが宜しいですか」
「良い、出してみよ」
「はっ御検分下さい」
ギルドの運搬係に合図する。
いきなり魔獣が目の前に現れる。
ゴールデンベアレッド種、
体高約4.5メートル、体長約12メートル、鼻先~尾の先迄約約16メートル、重量約6.500キロ
ブラックウルフレッド種
体高約5メートル、体長約12メートル、鼻先~尾の先迄約21メートル、重量約4.600キロ
国王陛下も宰相閣下もお付きの近衛騎士や従者も魔獣の巨体を見て呆けている。
「陛下御検分を」
伯爵に声を掛けられても目の前の魔獣の大きさと血の匂いに膝が竦んでいる様だった。
仕方がない伯爵が説明するが討伐の様子は説明出来ない。
冒険者ギルドに持ち込まれたが衆目に晒すのは不味いと討伐者に仕舞わせて見た者には箝口令をしいた事。
伯爵が確認の為に伯爵邸で極身近な者と確認の為に見て、今回運搬の為に出したのみで未だ血が滴り硬直もしておりません。
唸り続けていた陛下が
「良くぞ之程の魔獣仕留めらる猛者が居るとは」
「陛下良く御覧下さい、二体共顎から脳天に掛けて一撃で仕留められています」
驚愕な表情のまま伯爵の顔と横たわる魔獣を二度三度交互に見るとゴールデンベアの頭の所に行き傷を確認する。
レッド種を示す眉間に有る真紅の炎の模様が貫かれている。
ブラックウルフの傷も額の炎の模様を貫かれているのを見て再び低い唸り声を漏らす。
ギルドの運搬係に二体を収納させクリーンの魔法で清掃させる。
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