第18話 魔獣品評会
陛下が周囲を巡り、毛並みを確かめ額の紅い炎の模様を確認している。
後ろの騎士達の声が聞こえて来る。
「おい見ろよ額の一撃だけだぜ」
「他には何処にも傷が無いぞ」
「暗闇の森ってこんな化け物が居るのか」
「おいこの化け物を一撃だぞ」
「化け物を一撃で倒すなんて、化け物以上かよ」
なんて、俺も化け物扱いかよ。
「純白って聞いていたけど輝く様な毛並みだねぇ」
「これを見ただけで来たかいがあるな」
「綺麗ねー」
等と、ご婦人方の声も聞こえてくる。
「皆さん次からは魔獣を出しますので、気に入った物があればお譲りします」
白い狐をしまい、ブラウンベアのレッドから行きますか。
ブラウンベアのレッド、体高約3.3m、体長約9.5m、全長約12.5m
「おいおい、これも一撃だぜ、魔獣の弱点は額の模様なのか?」
おいおい、そんなところが弱点なんかじゃないぞ。
変な声が聞こえるが無視だ無視だぜ。
「ギルマスさん、これってオークションで最低どれくらいなの」
「そうですねーこの大きさで無傷だと金貨300枚からの競り値に成りますね」
「じゃー私、金貨600枚出します」
「700枚」
「750枚」
「800枚」
「あー、ちょっと待って下さい。ヤンセンさん、正規のオークションではないですよね」
「確かにそうだが、始まってしまっては捨て置く訳にもいかないだろう」
「では出品者の権限で、今日売る物を10体並べます。ヤンセンさん買い取りが決まれば手数料を払いますのでギルドの方で責任持って運搬して下さい」
「それは良いが、どうするんだ」
「レッド種を各種10体並べますので、これはと思う物を決めて自分の名前と固体名買い値を書き、ギルマスのヤンセンさんに渡して下さい。同じ固体に何度でも構いません納得のいく金額にして下さい。複数の固体に入れても結構です。では全員壁際まで下がって下さい」
ゴールデンベア・レッド
ブラウンベア・レッド
ブラックウルフ・レッド
斑のラッシュウルフ・レッド
シルバーフオックス・レッド
グリーンフオックス・レッド
ホーンボア・レッド
ビッグホーンボア・レッド
ワイルドボア・レッド
フォレストタイガー・レッド
「以上10体です。これはと思う固体名と買値を書いて、ギルマスのヤンセンさんに渡して下さい。投票が終われば全ての紙を公開します」
「考えたな」
「陛下ー、止めて下さいよー。面倒事は」
「流石に各種のレッド種を並べると壮観だな。未だあるんだろうパープルや普通種を出して無いし」
「有ります。さっさと片付けたいのですが増えちゃうんですよね」
「良し決めた。白い狐のレッドを金貨2.000枚出そう」
「止めて下さいよ陛下、高く売りたい訳じゃ無いんです。そこそこの金が有ればいいんですから。別に討伐が趣味でも無いのです」
「それにしては多過ぎないか」
「森の奥に行けば、餌と間違えて襲って来るので、返り討ちにしているだけですからね。殺せば捨て置く訳にも行かないので、マジックバックに入れているだけです」
「お前、空間収納が使えるだろう」
「うーぅ、黙ってて下さいね。そうだ陛下、半値で良いですから教会に有るような最高の魔力測定盤が手に入りませんか」
「ありゃー金貨500枚位だろ」
「最高品質の物が欲しいのです。陛下の買い取り価格から差し引いておいて下さい」
予定外の事になってしまったが、高品位の魔力測定板の目処が立ったので良しとする。
夕方には伯爵邸に帰れたが、迂闊に陛下の呼び出しには出向かない様にしようと心に誓う。
* * * * * * * *
少し遅い夕食は伯爵家の家族と共にする。
謁見時のゴタゴタが続いたが、俺の顔も名も公になってしまったので、伯爵様のご家族と顔を合わせたのだが、貴族同士の付き合いに巻き込まない事が条件だ。
伯爵様には陛下に魔力測定盤の最高品質の物が欲しいとお願いしたので、以前の頼みは忘れて下さいと謝罪。
明日は冒険者ギルドに行って普通種のオークやホーンラビット、ホーンボア等を、どの程度なら一気に処分出来るのか聞いてみよう。
伯爵様に道案内の者が欲しいとお願いしておいた。
自室にもどるとフィーィに呼びかける。
この屋敷って警備が厳重で俺を監視している訳では無いのだが、迂闊にフィーィやフィーェを部屋に招くと見つかるおそれが大きいんだよね。
今フィーィ達妖精族の面々は王都から一日程離れた森に居て、少数が街道沿いや耕作地に点々と有る巨木の梢で遊んでいる。
どうせ狩った獲物を大量に処分するときの為に、王都か周辺に目立たない家を買って拠点にするかな。
エルクハイムでは、王都程大量に処分出来ないからなぁ。
朝食の時に、伯爵夫人のサランナ様から王都案内の護衛をホールに待たせていると聞かされた。
「注意して行くのよ。貴方は未だ成人前なのですから」
まさか護衛の方達はエスコンティ家の騎士の格好はしてないよね。
確認の為にサランナ様に尋ねると、王都では当然騎士の出で立ちですと言われてがっくり。
目立ちたく無いので私服を要求、駄目なら案内は要らないと強行に主張して私服に替えさせる。
ホールに行くと、何故かトカレス様が平民の格好で護衛らしき二人と話している。
嫌な予感がするが、気にしたら負け!
「トカレス様どうしたのですか、まさか一緒に行くなんて言わないですよね」
「え、行くよ。父上にもアルバートと冒険者ギルドに行きたいと許しを得ているからね」
ニッコリ笑って爆弾を落としやがる。
トカレス様身長約180センジ、チョコレートブラウンの髪、金色の瞳。2cm程の角2本と中々のハンサムボーイで目立つんですけど。
「冒険者ギルドの用事を済ませたら買い物に行きますが、宜しいので」
「アルバート、逃げようたってそうは行かないよ。面白そうだし冒険者ギルドにも興味が有るんだ」
期待感満載のキラキラお目々でいやがる。ギルドで野獣をホイホイ出したら又面倒事になりそうだが勝手にしろ! だ。
護衛は冒険者風のエルフ族の男性ヤハトと見るからに動き重視の服装で俊敏そうな猫人族の女性で、クースと名乗る。
外観は地味で目立たないが、用意されている二頭立ての馬車が立派過ぎて釣り合わない。
まぁ伯爵家に貧相な馬車がないのは仕方がないか。
冒険者ギルドの中に入り、買い取りカウンターの所へ直行する。
「坊主買い取りか」
「はい野獣を少々」
「物は、数はどれくらいだ」
「えーとホーンラビットが50匹位にホーンボアが10頭位マウンテンシープも10頭位後オークも10頭位出したいのだけど大丈夫ですか」
「あーんお前何しに来た。ガキの冗談に付き合ってられないぞ。帰れ!」
怒り出したので、ブラックカードを出す。
「ギルドマスターのヤンセンさんが、纏まって引き取ると言ってくれたのですがヤンセンさん居ますか」
ブラックカード見て態度が変わったよ。
「ギルマスのヤンセンですか、少々お待ちを。失礼ですがお名前を」
アルバートだと名乗るとそそくさとカウンターの奥に消える。
ブラックカード凄げぇなー。
成人前でギルドカードを持てないので、良い身分証だと思っていたがギルドカード作らなくても良いかな。
「アルバート様お待たせしました。今日はどの程度卸して頂けますか」
「先ほども言いましたが、ホーンラビットが50匹位とホーンボアが10頭位とマウンテンシープも10頭位、後オークも10頭位出したいのだけど大丈夫ですか」
「その位なら問題ありません。ですがオークはどの程度お持ちですか」
「オークは・・・多分100は超えるかな」
「分かりましたオークをもう10頭程出してもらえますか。只今解体場に案内致します」
「ヤンセンさん敬語は不要ですよ。それにアルバートと呼び捨てで結構です」
「いえいえそう言う訳には参りません。周囲の者達が問題を起こさない様にする為にも必要です」
肩を竦めるだけにして解体場に案内してもらう。
解体場の責任を呼び、俺の事を説明してから場所を指定してしろと命じて居る。
先ずホーンラビットを50匹、間違わない様に10匹ずつ並べる。
次にホーンボアを10頭とマウンテンシープを10頭。
オークは20頭欲しいと行っていたので、20頭並べる。
並べる終わると解体責任者のバルカが唸りながら他にも持っているか確認してきた。
何が欲しいのか聞くとバッファローが欲しいのだが、最近獲れないのだとぼやく。
ご要望に応えて、バッファローを10頭並べると喜ばれた。
「王宮でレッド種10体を出した、アルバートってのはお前か?」
「はい、そうですけど余り話題にはしないで下さいね」
「判った。ギルマス、暗闇の森の獲物も出してもらっても良いか。最近品薄で困っているんだよ」
「パープルやレッド種は無しだぞ。王宮で各種10体も売り払ったすぐ後で、ギルドから売り出すのは不味いからな」
後ろで俺達の遣り取りを聞いていた、トカレス様と護衛のヤハトとクースが呆れている。
その後追加でゴールデンベア、ブラックウルフ、グレイウルフ、ブラウンベアやら、ラッシュウルフ等十数頭にフォレストスネイクまで要求されて提供した。
ギルマスのヤンセンさんに、レッド種の支払いが有るのでギルマス執務室まで来てくれと言われる。
執務室のソファーに座ると、黙って一枚の用紙を差し出された。
ゴールデンベア・レッド、金貨850枚
ブラウンベア・レッド、金貨680枚
ブラックウルフ・レッド、金貨760枚
斑のラッシュウルフ・レッド、金貨880枚
シルバーフオックス・レッド、金貨1050枚
グリーンフオックス・レッド、金貨630枚
ホーンボア・レッド、金貨550枚
ビッグホーンボア・レッド、金貨800枚
ワイルドボア・レッド、金貨750枚
フォレストタイガー・レッド、金貨900枚
合計金貨7.850枚
ギルド手数料20%金貨1570枚
差し引き金貨6.280枚 628.000.000万ダーラ。
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