第15話 妖精族の隠れ家

 3階に上がると敷地側の一番右が執事室、続いて左に俺の執務室、隣が居間で次がトイレや浴室でその奥が寝室だ。

 向かいは廊下で壁を挟んで街路側に食堂やノイエマンやヤーナの自室で、他の部屋は客間として開けてある。

 

 夕食はノイエマンとヤーナと共に取り早めに居間に引き篭る。

 寝室は掃除の時以外は入室禁止、居間も掃除と呼ばれた時以外は入室禁止にしてある。

 お茶位自分で容れるし此処と寝室は妖精族のたまり場になって居るので不味いのだ。

 なので居間と寝室の天井には緊急避難口として4個所ずつ穴を開けて蓋は軽く押し上げると飛び込める仕組みだ。

 

 使用人達には理解出来ない物が居間と寝室に有る、壁に沿って張られた4本のロープだ。

 天井から70センチ壁から1メートル離して張られたロープは、妖精族が部屋に遊びに来た時の休憩場所なのだ。

 妖精族達がロープにずらりた並んで止まると壮観である。

 

 この部屋は道路側の屋根の部分と繋がっていて、急傾斜の屋根裏は道路側の家屋からは入れない仕組みだ。

 敷地内の塀には通路側の屋根裏に繋がる隠し扉が沢山有るので、中は妖精族の住宅や仮の宿になっている。

 工事中は遠慮していた妖精族も工事終了と同時に遠慮無く遊びに来るし、子育てには森の中より安全だと此処に移り住んだ者も沢山居る。

 何かベビーラッシュが起きているんですが、俺の魔力玉のせいではないよね。

 

 安全な場所ではあるが子供達には狭すぎるのと、飛行訓練や森で安全に生活していく知識は此処では教えられない。

 

 話しあった結果、森に子供達の訓練専用宿泊施設を造る事にした。

 ノイエマンに暫く森に行くと告げると護衛を付けると煩かったが一人の方が安全だし。

 翌朝朝食を済ませこの街に来た時に作った冒険者御用達の服装を纏い腰に大振りの鉈を下げる。

 玄関ホールに行くとお馴染みのガルムとバルドスの二人が如何にも森に行く格好で立っている。

 

 「どうしました二人共」

 

 「森に行くなら護衛に付けと伯爵様に命じられてね。アルバート君は今やエスコンティ領の重要人物の一人だから」

 

 「森の奥裂け目の向こうに行くんですけど連れて行けませんよ。他人の安全まで保障出来ません」

 

 どう説得しても頑として聞かないので森の裂け目までなら冒険者を雇って彼等と行動する事を条件に許可した。

 但し裂け目の向こうには連れて行かない、冒険者達と共にキャンプ地で待つこと。

 16日程度で戻る予定だからそれを過ぎたら冒険者達と引き返すことをくどい程念をおした。

 

 冒険者ギルドでサブマスターにお願いして森の裂け目まで行ける冒険者を5名程推薦して貰い彼等と共に森の奥へ向かう。

 冒険者の4人はシルバーランクて1人はゴールドに為ったばかりだと聞いた。

 

 仕事内容を聞いた冒険者達は難色を示したがギルドマスターが森の裂け目の手前までの護衛で、行き帰りに各八日で待機期間の16日を過ぎれば勝手に撤収しても良いと確約して不詳不精納得。

 手当もシルバークラスに一日銀貨5枚、ゴールドクラスに銀貨8枚を約束した。

 目の前で日当分の金貨42枚をギルドに預ける。

 

 森に入って三日目に程よい立ち枯れの巨木を発見したので泥でコーティングし目立たぬ様に出入口の扉を付けておく。

 

 《フィーィ、皆に木をくり抜くのは自分達てやってと言って於いてね》

 

 《分かった沢山付いて来ているから半数は此処で住宅造りをさせるよ》

 

 《頼むねー》

 

 冒険者に何をしているのか聞かれたので時々森の目印を作っているんだと答えておく。

 六日目に森の裂け目に着いたので此処にベースキャンプ用の大型のドームを土魔法で作って此処で待つように指示し裂け目を越える準備。

 まっ、フィーィ達に聞いて裂け目の小さい場所に誘導して貰ったんだけどね。

 裂け目は30メートル程度なので対岸とこちら側からアーチ状の橋を架けて渡る。

 

 呆気に取られる冒険者を無視して橋を渡っていると早速お客様のシルバーフォックスのお出ましだ。

 前足を地面に減り込ませて固定し少し左右に開き動け無くして、すかさず下から土槍で仕留める。

 

橋を崩してからシルバーフォックスを回収し、ガルム達に手を振って森の奥に向かう。

 

 「とんでもねぇなぁ。一人で向かう筈だよ」

 

 冒険者達にはガルムとバルドスが約束通り帰っても話題にするなよ、と念を押す。

 

 二日目の昼前に良さそうな枯木を見つけた、と言ってもフィーィ達が上空から探して道案内をしてくれるので楽だ。

 

 俺一人なので妖精族の風魔法が使える者達で風刃を使って木に穴を開ける、木っ端は風魔法で吹き出して又風刃を打ち込んで穴を広げる。

 あっと言う間に大きな洞を造る。

 

 彼等にとってのキャンプ地で寝るのは何時もハンモックなので丁寧に造る必要が無い、洞で充分なのだそうだ。

 大きな洞を造ると上下に通路用の穴を開け、又洞を造る。

 何段も洞を造り大人数でも充分にキャンプ出来る様にし、最後は火魔法で焼いて刺やささくれをなくす。

 後は土魔法でコーティングして出入口を付けて終わり。

 

 森の上部に木の梢が出ていて目印も付けているので妖精族なら通り縋りでもキャンプ地や集落だと分かるんだと。

 成るほど土魔法で枯木をコーティングするとき梢までコーティングしてくれと言う訳だ。

 

 周囲を警戒していた妖精族の一人が美味しい実が成っている木が有ると報告に来た。

 実は薄い紅色のグラデーションの綺麗な実で周囲は甘い香りが充満している。

 

 数人が最初のキャンプ地設営組に知らせると言って飛んで行く、近くまで飛べば念話で知らせて念話の方角に飛べば合流出来るので迷う事は無いと教えてくれる。

 

 2時間もしないうちに合流したが増えて無いか?、キャンプ地が出来たので街まで知らせに行ったら待ちきれない子供達にせがまれて親共々来たらしい。

 途中俺に魔力玉の礼を言いにき来た集団と合流して、一つの集落がそっくり移転してきた様な騒ぎになった。

 子供達に美味しい実の成る木を教え蜜を堪能すると森の中を高速で飛ぶ訓練を始めた。

 残りの妖精族で実の収穫、程よく熟れた実だけでも数百個あるし完熟し過ぎたのは絞ってジュースにする。

 急いで漉すために布を出し漏斗と蜜を容れているのと同じ壷を造る。

 後はひたすら絞るだけだが大きな漏斗の上に格子状の台を付けひたすら押し潰す。

 6本目で終わり、大収穫で良いお土産になったと喜んでいたら飛行訓練組が帰って来た。

 

 火炎蜂の巣を見つけた、あれ欲しいの大合唱で催促される。

 

 《40本近く持っているから今日で無くても良いだろう、又今度にしようよ》

 

 説得は聞き入れられず

 

 《アール、あれ欲しい、蜂の蜜取ってよ》

 

 の大合唱で子供達や大人迄が俺がどうやって火炎蜂の蜜を収穫するのか興味があるらしい。

 

 

 

 小さな妖精族の子供達のおねだりに負けて火炎蜂の巣を見に行く。

 火炎蜂の巣は比較的小さく蜜にして大徳利4~5本分位かなと言った大きさだ。

 大人達は子供達に防御結界を張らせ蜂が来たら、結界に雷撃魔法を重ねて気絶させるんだよと教えている。

 

 俺は気付かれ無いように少し近づき土魔法で出入口を残して素早く巣を塞ぎ後は出入口から蜂を追い出す為に巣を叩く。

 驚いた蜂は巣から飛び出し俺に纏わりつくが結界に雷撃魔法を乗せて気絶させる。

 後は下を漏斗状にして蜜受けの壷を置いたらゆっくり土魔法で覆った巣を、女王蜂を殺さない様に気をつけて絞っていくだけだ。

 子供達は興味津々で壷に落ちる蜜を眺め、大人達は今の魔力量なら俺達でも出来そうだと話し合っている。

 

 七日目の朝に待ち合わせの場所に戻りさくさく帰宅した。

 冒険者達には無理を言って来て貰ったので途中で狩ったブラウンベアを一頭渡し無事予定日迄に帰宅した。

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