第14話 再び森へ
住宅街が周囲を囲む誰にも見られない敷地、良いものを作ったなぁと自画自賛。
敷地の中央に立ち魔力を絞りソフトボール大の水球をイメージする。
先ず水滴を思い浮かべ、その水滴に雨の如く次々と水滴を加える。
ふと目を開けると、巨大な水球が目の前に有るではないか。
びっくりしてイメージが途切れた瞬間、水球は崩れ落ち俺はびしょ濡れになった。
うん、ラノベのお約束のだね。
此処での魔法の練習は不味いので森に行こう、森の奥なら少々の魔法を使っても誰にも知られないし安全だ。
それと他人に知られずに、自分の魔力量と魔法の潜在能力が知りたい。
それに妖精達や使用人達の能力を知るためにも魔力測定盤が必要だが手立てが無い、伯爵様に相談するのが最善か。
ノイエマンに今度は30日程度森に行くと伝え、コステロには大量のスープとパンやステーキにその他の副菜を作ってもらう。
森に行くと言えばノイエマンが煩いだろうから、先手を打ってハイド男爵に面談を申し込む。
翌日エスコンティ伯爵邸に出向き、執事のナリヤードに迎えられてハイド男爵と面談。
「暫く森に行こうと思っているのですが、ノイエマンが煩いんですよ。で、こちらから護衛を差し向けられても邪魔なので前もってお断りに来ました」
しれっと一々干渉するなと釘を刺しに来たと告げる。
ハイド男爵が苦笑している。
「今度はどれくらいの間行くつもりだ」
「まぁ一月位の予定ですけど。それと伯爵様がお帰りになられたら、教会に有る様なお高い魔力測定盤が欲しいのですが、御協力頂けるか聞いてもらえますか」
「あんな物をどうするのだ、金を溝に捨てる様なものだぞ。教会に行けば銀貨5枚で調べてもらえるのに」
「色々と考えている事が有りまして」
ニヤリと笑って答えを濁す。
「護衛はなぁ」
「どうせ裂け目より奥に連れて行くつもりは有りませんし、冒険者だって行きたがりません」
「いや森の奥より街中の事がな」
言葉を濁すハイド男爵に伯爵家が信頼出来る冒険者を、数名護衛に付けて森入るのはどうだと提案する。
但し今回は20日近くも待ってもらう訳にもいかないので、裂け目迄行きすぐに引き換えすと約束させた。
2日後には出かけると伝えると、その日の朝には俺の家に向かわせると話がついた。
ノイエマンに森に行くから2日後の朝、護衛の冒険者が迎えに来ると教える。
先手を打たれたと悟ったノイエマンは、はいと返事を返すだけに止めた。
ヤーナに冒険者達が迎えに来ていると起こされ、もそもそと起きる。
冒険者達の食事の用意を頼んで食堂へ行くと、5人の冒険者が食卓に座っていたが2人は前回も同行したドルマンとキリンザだ。
立ち上がろうとする冒険者達を手で制して挨拶をする。
「おはようドルマン、キリンザ今回も来てくれるんだ」
「あぁ、楽して稼げる仕事は逃さないさ」
キリンザの軽口に笑いが起こる。
ドルマンが「伯爵家からの依頼だからな、断るなんて怖くてよ」と追従するので、他の冒険者も肩の力が抜けた様だ。
「ハイド男爵も大変だねぇ」
「人事の様に言っているけど、街中と森の浅い所には気をつけろって念を押されているんだ」
「森の奥と言わないところが何とも」
ドルマンとキリンザの掛け合いに、肩を竦めて返事の代わりにし朝食に取り掛かる。
ノイエマンが森の近くまで馬車で送ると言うのを断り、歩いて南門を出る。
「今回は前回と少し方角が違うので俺が先頭に立つよ」
そう言って森に入る。
《フィーィ・フィーェ道案内宜しくね》
《任せて、皆張り切っているよ》
《おいおい又沢山来ているのか》
《うーん半分位かな、。子供達の訓練序でだからねー》
《冒険者達に見られない様にしてね》
《分かってる。高い所をにいるから見えないよ》
魔法の訓練に最適な、樹木の少ない広い場所を目指してさくさく進む。
出会す野獣を、地面からの槍の一突きで仕留めて行くので、慣れているキリンザとドルマン以外は静かだ。
討伐でなく護衛任務なので倒した野獣や魔獣は埋めてしまうのだが、余録は必要だろうと思い、ブラウンベアとグレイウルフ3体を冒険者達のマジックバックにいれる。
七日目に裂け目に到着した。。
今回の場所は裂け目どうしが複雑に絡み、ジグザグなっていて下手に進むと崩れる恐れが有る危険な状態。
ドルマン達とは少し手前で別れ、絶対に先に進まない様に念を押しておく。
地面に絨毯の様に固定した通路を作りながら前進、少しの衝撃で轟音を立てて崩れ落ちる所が多数、見ている冒険者達の顔が引き攣っているけど何とか渡り切る。
(護衛達に別れの手を振り、アルバートは一人森の奥へと向かうのであった)
と心の中でナレーションを入れて遊んでいると、フィーェが肩に乗って来てもう見えないよと教えてくれる。
五日かかって到着した所は、至る所倒木が積み重なり根こそぎ倒されていた。
少しは持ち帰って建材にしようと思い、風魔法が使える妖精達に手伝ってもらい切断する。
《アール、この木はとっても良い匂いがするの》
漆黒に所々白い筋が入った固い木だが、太さはさほどないので手近に有る10m程を3本程収納する。
鑑定では香木となっているので、妖精族の好む香りなのだろう。
適当に木を取り払った所に、高さ20m横幅30mの壁を造る。
50m程離れ、お約束のファイアーボールからだ。
ファイアーボールの要諦は、熱い火球と速度だ。
溶鉱炉の中をイメージして大きさはテニスボール大、スピードはユーチュウーブで見た海面上を音速を超えるスピードで飛ぶ戦闘機だ。
先ずファイアーボールはテニスボール大に、よしっ熱ッツゥぃぃぃ。
ファイアーボールを、掌の上で作ってはいけないと学習した。
もう一度、今度は掌を前に向けて1m前にファイアーボールを作り、行け!
ヘロヘロヘロと飛んで行き、何とか壁に当たってポシュン、と消えた。
速度のイメージを忘れていた、てへ。
間抜けな失敗を繰り返す事数十度、何とかボンって音と共に的に当たる。
先は長そう、土魔法ならさして考えもせずに思い通りに使い倒しているのに、経験の差かな。
でも生活魔法で風水火は使っているので、まだイメージ出来るんだよな。
日々之練習に次ぐ練習、時々妖精族の子供達とじゃれあい。
魔法のイメージはバッチリだが、実力が俺について来ない・・・カラオケで、俺の声に曲が着いて来ないって言っているのと同じだな。
自分で下手と認めては駄目だ! 頑張れ俺、負けるな!
気が付けば料理長のコステロに作ってもらった大量のスープやパンにステーキ等作り置きの食料が無くなりかけていた。
風水火に氷は一応使える迄になった、なったが風水火と氷の威力の制御が今三くらいに下手だ。
自分でも下手糞と思うので、威力を気にせず周囲の被害も無視出来る時に使おう。
周囲の被害を気にしなければ立派に使えるんだからね、うん。
食料が無くなりかけているので、一月は過ぎているのだろう。
ぼちぼち我が家に向かうべきだが、直行直帰は味気ないのでフィーィ達と森を探索しながら帰る事にする。
妖精族の子供達は飛行能力も格段に上がり、魔法も俺の横でバンバン撃ちだし百発百中の腕前で、俺は泣きそう。
子供の成長は早い! と喜んでおこう。
妖精達は周辺を探索しながら、日々その数の増減を繰り返す。
周囲にいる妖精族が訪れて来たり、俺の家にいる者達が様子を見に来たりしている。
時に珍しい果実や花の場所に誘導してもらったりと、充実した毎日だ。
珍しい果実とは大きな瓢箪型で縦80cm胴回り30cm位で中央部分が少し窪んでいる、中に果肉は無く果汁と種で瓢箪の様に上部をくり抜いて飲む。
鑑定にも名前が出ないので一般に知られていないのだろう、勝手に名前を妖精の実と名付ける。
味も良いが香りが何とも言えず爽やかで、完熟だと教えてくれる実をホイホイと空間収納に放り込む。
夜に妖精の実を飲み、空間収納に仕舞い忘れた翌日果汁が発酵しているのに気付いた。
試しに数本口を開けておいたが発酵せず。
飲み残しが発酵したのなら口噛みの酒と同じかと、飲み残しで試してみると見事に発酵している。
一々口を付けるのも面倒なので、発酵した果汁を新たに口を開けた物に少し入れておくと発酵したので、以後この手法で酒造りに励む。
妖精達には同じ果実を探してもらい数百本の在庫を抱える事になった。
花は希少種の艶麗草で衣服と共に置いおくと良い香りが長く続くらしい。
沢山咲いていたのでヤーナやメイド達の土産に、少し摘んでお土産とする。
後は妖精達が魔力を吸い上げる為の樹木を、敷地に植える為に樹高5m程度で葉が大きく肉厚で魔力を良く溜める木を数十本採取。
グラデーションレッドの木も探してもらい、挿し木用に数十本切り取る。
鑑定してみると雌雄の木が有り、雌雄一対の木がなければ結実しないとな。
雌の木は20m以上なのに雄の木は10m程で雌の木とは似ても似つかない姿だった。
* * * * * * * *
エルクハイムに帰り着いた時は、二月近く経っていた。
南門で入門待ちをしていると衛兵が駆けてきて、アルバート様ですよねと確認され頷くと、即効で御注進に及ぶべく駆け出した。
責任者らしき衛兵がどうぞどうぞと通してくれたので、会釈して通る。
伯爵やハイド男爵は無視して、家に帰ろうーっと。
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