第13話 新たな住居と同居人
安全確実な仕事に多数の人が集まり南門の工事現場の近くに飯場村が出来た。
稼ぎを掠め取る輩もいない安全な場所と知れ渡り物売りまで現れる始末で笑ってしまった。
但し工事現場は飯場村からは見えない様に高い塀に囲まれ、夜間は出入りが出来ない様に完全閉鎖している。
俺は皆とは別のドームに篭り尋ねて来る妖精族達と会合、と云う名のお喋りを楽しむ。
週に1度の休みには時に冒険者ギルドに顔を出しサブマスターを通してオークやホーンボアを解体して貰いお肉を持ち帰る。
そんな日の夕食は現場で働く者達全員でお肉三昧である。
ウーニャ達6人には工事が終ったら俺が貰う土地に建てた住宅の管理運営をして貰おうと思って居るのでそれとなく話しておく。
城壁側の住宅の管理は別の考えが有るのでそれはまたってことで。
完成したのは2ヶ月少々してからだが城壁内に周回道路を造ったり城壁に住宅を造る為の仕切り壁を付けたりと付帯工事に案外時間を取られた。
一応完成したので伯爵様と共に確認作業を済ませて引き渡し、翌日は内輪の祝いをウーニャ以下の冒険者も招いて伯爵邸でおこなわれた。
俺は約束の土地を南門の近くに冒険者ギルドが移転するのでギルドと反対側で250メートル程離れた場所を貰った。
城壁の内側に造った住宅と俺の貰った土地に作る住宅の管理運営はウーニャ以下6名の冒険者と、後から加わった15名の21名を確保出来た。
他にも工事に関わった者達を多数雇うつもりだ。
これは城壁造営が本格化する前に冒険者を一同に集め、工事が完成した後一ヶ月金貨2枚と銀貨2枚の22万ドールで永続的に雇用する約束をしていたからだ。
それと働いてくれるなら俺の自由に成る住宅を各自に一軒、月に銀貨1枚で貸すと言った。
但し読み書き計算の出来ない者は読み書き計算が出来る様に成る事、やる気が有るなら教師は俺が手配して無料で教えると約束した。
読み書き計算の出来る者はどの程度か確認し能力の低い者は勉強し直して貰った。
貰った土地は4階建ての住宅をぐるりと廻らせ城壁とは逆の構造にした。
つまり俺の建てた塀の外側に住宅が道路に向かって建っていて、敷地内は見えない構造だ。
屋根に上がって覗こうとしても、4階の上は急勾配の屋根にしているから上がれないし屋根裏部屋が無い作りにした。
出入りの門は4個所有り正門と裏門を南北に、東西には通用口をと振り分けて造った。
家を建てるのは暫くお預けにして俺は道路側に向かって建てられた3LDKと隣の2LDKを合体させ、本来背後は壁になる筈の処にも部屋を作った。
つまり2~4階部分は道路側と敷地内に向かっての各5室の10LDKの広さで2~4階合わせて30室を確保している。
敷地内に向かう部屋の窓は全て逆向きの鎧戸になっていて開かない、風を通し陽の光は差すが敷地内は見えない造りだ。
1階部分は厨房と通用口や倉庫になっている。
困ったのは馬車置場だ、しかたが無いので通用門から中に入ると厩と馬車置場を作ったが敷地内は一切見えない入れない構造だ。
お陰で新たな家は通用門の近くになってしまったよ。
執事長のナリヤードとメイド長のエメラに、執事ほど大袈裟でない使用人の取り纏め役と家事全般が出来る人を斡旋して貰ったので、ある程度の部屋数は必要になったのだ。
そこそこの広さの家になったが少数の使用人以外は周辺の住宅に家族共々住んで貰う事にした。
何だかんだで忙しいのも一段落してきたのでほっとしている。
◇ ◇ ◇
城壁建設を始めて1ヶ月も立つ頃にフィーィとフィーェ達から別れ集落に帰ったエフォ、キュー・、ファール・、クーッが多数の妖精族を引き連れてやって来た。
フィーィ達と再会を喜んだ後、ファールが俺の処にやって来てお願いが有ると言いだした。
俺から預かった魔力玉を持って集落に帰り、集落の全員に魔力を吸収させた。
皆魔力が上がり魔法の威力も上がって大喜びしたが、他の集落に親兄弟親類縁者友達が居て彼等にもこの力を分け与えたい。
そう言い出し魔力玉を携えて周辺集落を回ったのだそうだ、魔力玉にも限りが有るので一人一回の吸収にして貰い少しでも多数の同族の力を上げて安全に暮らせる様にと願ったが魔力玉の数が足りない。
で、エフォ、キュー、ファール、クーッの4人で俺の居るエルクハイムに魔力玉を分けて貰えないかとお願いに来たのだ。
お礼と云っても人族の俺に価値ある物を差し出せ無いので、俺が森に居る時は妖精族が全力で補助しよう。
《妖精族ファールの名に賭けて誓う》
そう云って胸に拳を当て頭を下げ、それに倣ってエフォ、キュー、クーツも胸に拳を当てて
《妖精族の名に賭けて》
と云って頭を下げた。
嬉しかった、自らの名と種族に賭けて誓ってくれた事に応えよう。
《頭を上げてくれ、足りるか判らないが今有る魔力玉は全て渡そう。君達妖精族全てに行き渡る事を願っているよ》
空間収納から有るだけの魔力玉を出してファール達に渡した。
ファール達はそれぞれの空間収納に手分けして収納してゆく。
《之からも魔力玉は増えて行くから時々受け取りに来て、俺の魔力が限度まで吸収出来て魔力量が増大したら皆もっと安全に暮らせるだろう》
《妖精族の皆にも伝えると喜んで貰える。有り難とう。魔力玉の魔力を吸収した皆はアールの魔力を判っているので、森で会ったら出来る限りの事はするよ》
そう云って他の冒険者達に知られない様に静かに森に帰って行った。
それから2ヶ月位たった頃ファール達の集落から子供連れの妖精族が数十人単位で訪れて来る様になった。
俺の魔力を吸収したお陰で魔力量が増大したので、伴侶を得て魔力を掛け合わせて卵を造ったらしい。
聞いていて頭の中が???マークで一杯になる。
何と妖精族は伴侶と魔力を合わせて小さな卵を造るらしい、産むんじゃ無いんだ!
出来た卵に二人で魔力を注ぐと、数週間で妖精の子供が誕生するのだと。
聞いてこの世界の神秘を垣間見た思いになる。
生まれた妖精族の子供は2~3年間は、常に親の傍を離れず行動し生活全般を覚えるんだと。
魔力量の増大した今は安心して子連れで飛べるのでお礼の挨拶に来たのだと聞いた。
増大した魔力により念話の距離も7キロ程度になり緊急救助要請でも瞬間的なら20キロ程度なら話せる。
連続飛行も普通に飛ぶなら半日程度は軽いと云われた。
全力で飛ぶとどれ位飛べるのかと聞いたら多分40~50分位飛べるけど一休みしないと飛べなくなるらしい。
一つ困ったのは妖精族って小さい上に良く似ているんだよな、つまり誰が誰だか判らない。
名乗ってくれても直ぐに判らなくなるから参ったよ。
子供達は親が俺の魔力のお陰で魔力量が増大して子供を作ったから俺の魔力パターンが刷り込まれていて兄弟同然に懐かれ纏わり付かれて大変だった。
彼等の食事は基本植物で魔力の実と呼ばれる瓢箪型果実の汁から魔力の吸収と花や樹液の甘い物に草木の実だ。
魔力の実から果汁と共に魔力を取り込むので、フィーィが俺の魔力を美味しいと思い魔力玉の魔力を吸収したいと思ったのも頷づける。
魔力自体は自然回復するが外部から取り入れる魔力は味が在って良いらしい。
因みに魔獣野獣の魔石からの魔力吸収も出来るが要らないと言われた、とっても不味いそうだ。
彼等が訪ねて来ると火炎蜂の蜜を提供している、これは喜ばれる火炎蜂の蜜は好物の一つらしい。
妖精族が30センチ程の身体なのに蜂の大きさが8センチ程有るから防御結界を張っても、大量の大型犬に飛び掛かられた人の状態になり蜜集めは大変だそうな。
蜂を殺して蜜を採取すれば蜂の数が減って蜜が取れなくなるので、火炎蜂を殺すのは御法度らしい。
勿論御土産は火炎蜂の蜜だ、小さな湯呑み程の入れ物に入れて渡すと喜んで貰えて俺も嬉しい。
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