第10話 城壁調査
東門に二人の冒険者が待っていて合流、猫人がウーニャ狐人族がキルザと名乗った。
新たに雇ったのはエミリー、サイナム、キューロ、ヘムでヘムが猫人で三人は人族だ。
各自紹介が終わったので東門から右回りに調査開始、10メートル毎に城壁に印しを付け距離を書き込む。
記録係のヘムは俺の隣で距離数を書きながら、50メートル4とか1とか俺の指示に従って書き込む。
5良好、4良い、3普通、2やや悪い、1悪い修理要、×破損の6段階に記録する。
それに加えて壁の上下を確認しヘムに伝える。
《アール何しているの》
《お仕事だよ。近くに魔獣は居ないよね》
《んーホーンラビットにゴブリンとグレイスネイクが一匹居るね》
《グレイスネイク、何処にいるの》
《アールの左側窪地で寝て居るよ》
《分かった有り難う。起きたら教えてね》
左側の窪地か約200メートルってところかな、確認の為じっと見ているとガルムが不審そうに近寄って来る。
「アルバート様何か?」
「ガルムさん様は付けなくて良いですよ。一寸大きめな野獣の気配がするものですから」
冒険者のキルザがえって顔をする。
唇に指を当て静かにさせ、こちらに気づいていないから静かに行こうと話す。
エミリー達の緊張が伝わって来るので楽にして仕事の続行を伝える。
5分もしない内に騒ぎが起こった。
数匹のゴブリンの群れがホーンラビットの縄張りに入った為、ホーンラビットがゴブリンにが突っ込んだみたい。
<グギャワー、ギャギギガー、ゴワーゲッ>
とか煩いの何の
《アール、グレイスネイクが起きたよ》
あっ首を持ち上げてゴブリンもだが俺達も見つけた様だ。
ウーニャとキルザが前に出るのを止めて下がらせ、ガルムとバルドスが左右に立つのを少し離れて貰って足元を10メートル程持ち上げる。
早い、もう50メートル程先まで来ている。
蛇って嫌なんだよなー、等と考えながら進行方向に土魔法で大きな輪を作り頭が入ると一気に絞り込む。
25メートル先で首を絞められたグレイスネイクがのたうち回る、大きさは17~8メートル胴回り40~50センチってところかな。
蛇は厄介だね首だけで無く頭全体を包み込む様に土魔法で押さえてから下から土槍で突き上げる。
頭を潰しても胴体は暴れるので暫く放置、足場を下げると冒険者達は全員武器を手にしている。
「仕留めたけれど胴体が当分の間のたうつから収まるまで休憩しよう」
ガルムとバルドスに声をかける。
「ウーニャとキルザ達も休憩しよう。阿保なゴブリンも居なくなったみたいだよ」
ウーニャが嫌そうな顔で
「蛇はしぶといから嫌ですねー」
「まぁね仕留めても当分ジタバタ暴れるので、マジックポーチに入れる気にも為らないしね」
「でも凄いですね。グレイスネイクをあっと言う間に仕留めるなんて、どちらが護衛何だか分からないや」
他の冒険者達も呆気に取られているが無視してお茶にする。
ガルムさんとバルドスさんも苦笑いしながら隣でお茶を飲む。
良い天気だよねー。
休憩中にウーニャの冒険者カードを見せて貰う。
銀色のカードで片面が盾に槍と剣が交差する絵柄の下に登録地名と番号、反対面に持ち主の顔とその下に名前と性別年齢で一番下に赤い横線が2本入っている。
顔は魔法で写すらしい、その下は名前と性別年齢で一番下の2本の線は2級で1級の上の区別線だと。
つまりウーニャは、エルクハイム登録の登録番号〇〇〇番でウーニャ♀ムニュムニュ才でシルバーランク2級ってことか。
1級、2級と上がり次の階級になるって事か、なるほどね。
因みにアイアン・ブロンズ・シルバー・ゴールド・ミスリルの5段階でミスリルの上に特級って名誉階級が有るってさ。
◇ ◇ ◇
東門から始めた調査は南門までも行けずに終わった。
冒険者の方々に聞けばウーニャとキルザは数日間拘束されているので明日は南門で待っていて貰う事にした。
エミリー、サイナム、キューロ、ヘム、の四人には明日も来てくれるなら、個人的にも雇いたいと話したら来てくれる事になった。
調査中に倒したグレイスネイクは冒険者達に受け取りを拒否されたので空間収納にぽいする。
ホーンラビットが思いのほか取れたので全て冒険者に受け取って貰う、臨時収入は良いことだしね。
そんなこんなで伯爵邸に帰還執務室で今日の調査結果の報告をする。
借りた地図と今日の調査範囲からエルクハイムの街は、直径約6キロメートル程の少し歪な円形で馬車で通った限りでは手狭に感じた。
調査出来た範囲では城壁は土台部分が弱い為に下から傷んでいて現在のままなら遠からず崩れる部分が出ると思われる。
ヘムに書かせた10メートル置きの報告書は↓(基礎)1(最低レベル)×(不良)の印しばかり、壁自体の状態も3~1ばかりで状態の良い場所が殆ど無い。
以上の事を報告し土魔法で土台の補強と外壁の表面部分だけを補強するのが早くて安上がりだと報告する。
伯爵からは現在の城壁は高さ約5メートル厚さ2メートルで、上部を歩ける様にしているだけだと聞かされた。
土台から修復すれば1メートルで金貨数枚では無理だろう、一度崩して基礎を固めて城壁を積み治すと新たに城壁を築くより高額になる。
明日も調査は続けますが多分残りも似た様な状態だと思うと告げる。
序でに急遽雇ったヘム達4人も引き続き来てもらうにしたと告げて報告を終る。
労いの言葉を受け部屋に引き上げると入浴を進められ、お風呂でのんびり過ごす。
◇ ◇ ◇
執務室にガルムとバルドスが静かに入ってきて目礼する。
「どうだった」
「14才の才覚では有りませんね」
「城壁の調査に際し見事な手際と運営でした」
「調査報告書を御覧になられたかと思いますが、側で見ていて最初は何をしているのか解りませんでした」
「専門家でも無いでしょうに10メートル間隔で区切り、基礎、城壁の下段、中段、上段と判別し記録していくとは予想外でした」
ガルムとバルドスが交互に話す。
「そしてあのグレイスネイクを討ち取った手際です」
ガルムが頷きバルドスに同意する。
「最初は城壁の点検中です、彼は突然城壁から遥か離れた地点を見ていたのです。聞けば一寸大きめの野獣の気配がする。と言ったのです。だがこちらに気がついていないからと仕事を続ける様に指示しました」
「それから5分もせずに騒ぎが起きました。ホーンラビットの縄張りに入ったゴブリンが攻撃されて騒ぎ出しました。グレイスネイクが気づいて我々の方に近づいて来ました。アルバート様が足場を高くしグレイスネイクの方を向くと、突然グレイスネイクが大暴れしだしたのです。後から聞くと土魔法でグレイスネイクの首を押さえ付け、地面から脳天に向けて土槍を突き刺したと」
「確かにあれは蛇が首を押さえられた時の暴れ方でした。しかし冒険者も我々も何をする事もなくあっと言う間に終わりました」
「遠くの野獣の気配を察知し、襲って来るとなった時の素早い攻撃は見事でした」
「それに自分の足元を土魔法で高く上げ、視界を確保し敵を確認攻撃した手際が良すぎます。流石に暗闇の森を彷徨っていたと聞いた時には信じられませんでしたが・・・」
「魔獣では無い只の野獣とは言えあの大きさのグレイスネイクですからね」
「笑ったのはグレイスネイクを倒した後です。蛇は首を落としても暫くは胴体が暴れますが、彼はお茶にしようと座り込みましたよ」
「直ぐ傍で死んでいるとは言えグレイスネイクがのたうち回っているんですからね」
そう言ってガルムとバルドスは疲れた様子でお茶を飲んだ。
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