第4話 妖精族

 現れた顔は俺と撃ち落とした蜂の死骸の山を、交互に見比べて目を真ん丸にしている。

 

 又、少数の蜂が近づいて来たのを撃ち落とす。

 

 それを見て樹の洞から覗いていた人がひょい、と頭から飛び降りた。

 慌てて助け様としたが周りは蜂の死骸だらけで歩けない。

 飛び降りた小さな人は地面に落ちる前に背中から羽根が生え、ふわりと浮き上がり俺の前に来た。

 

 「大丈夫だったかい、怪我は無いかい」

 

 小さな人は小首を傾げて俺を見、何か伝えたい様だが判らない。。

 色々云ってみたが通じ無いし聴こえない、思わず。

 

 「ニホン・ゴ・ワカリ・マスカ・フフン♪」

 

 イヤ、冗談だけどね、覚醒してから一度も日本語を使って無かったから思わず云っちゃた。

 

 羽根が動いて無いけど浮いているって事は多分魔力の羽根で自在に出し入れ出来るのかな。

 目の前にゆっくりと近づいて来たが、身長30センチくらいで6等身位の少しぽっちゃり幼児?少年?体型。

 軽い日焼け程度の肌色に濃い緑の髪、目は金色と赤のヘテロクロミア虹彩異色って奴だ。

 オーオまるでラノベだぁ、感心していると。

 

 目の前で俺を指差し自分の額を示してから掌を額に当てるゼスチャー、何かを伝えたい様なので頷く。

 俺の額に掌を当て俺の魔力と自分の魔力を軽く同調させた。少し後ろに下がると

 

 《聴こえるかな》

 

 頭の中に響く声にびっくりしたが、これって念話だよな。

 

 「うん聴こえるよ」

 

 返事をすると

 

 《魔力を使って話し掛けているの、頭の中で考えて話掛けて呉れれば判るよ。声に出しても人族の言葉は判らない》

 

 《大丈夫かい》

 

 《有り難う、助かったよ人族の人》

 

 《あぁ、俺はアルバートってんだ》

 

 《フィーィだよ。でも人族がこんな大森林の奥まで良く来られたね》

 

 《まぁね、土魔法と防御結界に雷撃魔法が有れば何とか成るからね》

 

 その後色々話したが襲って来た蜂はハンタービーと呼ばれている肉食の蜂で、一度住居が奴等に見つかるとしつこく襲って来るらしい。

 もう三度襲われているのでそろそろ住居を移動しようかと思っていると聞いた。

 可哀相なので俺が立ち枯れの巨木を土魔法でコーティングし、ハンタービーが侵入出来ない様にしてあげる事になった。

 

 先ず出入口と窓・換気用の穴等の目印を付けてから巨木全体を土でコーティング、魔物が襲って来ても壊れない様に強化する。

 後は出入口や窓等に庇を付け、窓には頑丈な格子を出入口は大きめの扉を扉の中央に10センチ程の丸い穴とそれに合わせた格子の扉を付けた。

 通常は丸い穴から出入りし荷物等は出入口を開ける様にした。

 

 フィーィが不思議そうな顔でこの穴は何って聞く、穴の上の握り棒を掴んで足から中に入るんだよ。

 これならハンタービーの頭は通らないだろう、格子戸を閉めればそれより小さな動物の侵入も防げると説明すると大喜びされた

 

 結局その日は妖精族の住む樹の隣に大きめの夜営用ドームを造り、フィーィやその仲間達遅くまで話し込んだ。

 フィーィ達妖精族は人族とは殆ど接触が無い、てか相手にしない。

 昔は人族と付き合いをしていたが小さいからと妖精族を見下したり、籠に閉じ込めてペットにしようとしたりと散々だったらしい。

 

 その度に妖精族は防御結界を張り仲間を呼んで各種魔法で反撃し懲らしめたら、自分達の悪事を隠し妖精族は無闇矢膤と人族を攻撃すると噂を広め嫌われる様になった。

 人族の余りに身勝手な言い分に呆れてて相手にしなくなったらしい。

 

 今は親交が在るのはエルフやドワーフ猫人族らと、妖精族を見下さず対等に付き合える固体だけだと教えてくれた。

 大森林で生きる妖精族なら知っているだろうとエルクハイムの方角を聞くと、エルクハイムの近く迄案内してくれる事になった。

 方角を教えても地形的に真っ直ぐ進め無いらしい。

 

 翌朝フィーィとフィーェ、エフォ、キュー、ファール、クーッの六名の妖精族と出発した。

 森を歩きながら妖精族の知る様々な薬草を教えて貰って採取したり、出会う魔獣や美味しいと鑑定に出た動物を倒して空間収納にポイ。

 

 妖精族達は防御結界と雷撃に空間収納は皆持っており、その他に平均2~3種類の魔法が使えるとの事だ。

 ハンタービー相手でも2~3時間は結界を張ったままでも戦えるが、何せ相手の数が多いので仲間達と共同で闘うのだそうだ。

 故に妖精族は複数で行動し猛禽類やハンタービー等を撃退していると聞いた。

 

 エルクハイムに向かってから七日目、確かに方角だけ聞いて歩くのは無理だと理解した。

 森を歩いていると突如として目の前に地面の巨大な割れ目が現れる。

 岩の壁としか思えない岸壁が出現して迂回するのに一日掛かり、漸く迂回したと思ったら壁を越えての逆戻りだものな。

 

 妖精族の案内無しならエルフに道案内を頼まな無ければ、フィーィと出会った場所からでは森の中で確実に迷子になるだろう。

 今日も夜営の為のドームを造りフィーィ達6名と就寝準備を終わらせ、日課の魔力を使い切る為に森を彷徨う様になってから始めた魔力玉を作っていた。

 

 《アール何故そんな物を作るの》

 

 《今有る魔力を使い切って寝ると目覚めた時には少し魔力量が増えるんだ。でも最近は魔法を使って魔力を使い切るのが大変だから魔力玉にしているんだよ》

 

 《出来ればその魔力玉の魔力を吸わせて貰えないか》

 

 《何故?》

 

 《僕達妖精族の食事は植物から魔力吸収するのと草木の実や花の蜜なんだ。だけどアールと魔力を同調させた時、アールの魔力が美味しいと思ったんだ》

 

 《良いよ試してみて》

 

 同意して魔力玉を差し出すと、フィーィはゆっくりと両手を魔力玉に添えて目を閉じた。

 他の妖精族と俺が見守る中フィーィの全身から淡い光が溢れ、フィーィが微笑みながら目を開けた。

 光がおさまると手を離し

 

 《凄いねー、僕の魔力が倍以上になったのが解るよ》

 

 他の妖精族達が我先にと魔力玉に手を差し出すのを止め、フィーィに身体の調子を尋ねたが快調! と一言。

 取り合えず一晩様子を見て明日の朝、増えた魔力で魔法を使って結果を見ることにした。

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