第5話 話し合い

 冒険者ギルド2階応接室で、ギルドマスターとサブマスに向向かい合い、ハイド男爵と俺が座る。

 ハイド男爵の後ろには騎士や従者が控える。

 開口一番ハイド男爵はギルドマスターに、解体場にいて俺が出した物の事を漏らさない様に全員に箝口令を敷く事を要求した。

 

 ギルドマスターもサブマスから話しを聞いていたので、渋い顔ながら了解する。

 その上で猪とオークのレッド種とパープル種を、一体ずつで良いのでギルドに卸す事を要求、これをハイド男爵も受け入れた。

 俺抜きで話しが進んでいる。

 

 「何故そんな話しになるのかな、買い取って欲しいので出したのだが」

 

 ハイド男爵が、ギルドマスやサブマスと顔を見合わせて苦笑する。

 

 「すまんなアルバート、お前の出した魔獣や野獣が通常種なら未だしも、進化種のレッド種やパープル種は迂闊に市場に出せないんだ」

 

 ギルドマス曰く通常のオーク一体で金貨3枚、状態が良いので銀貨5枚を上乗せして35万ダーラになる。

 オークのパープル種で最低金貨7枚の70万ダーラだが、レッド種だとオークションに掛けられるので、最低落札価格は金貨15枚から上限無しだと言った。


 それと猪と言っているホーンボアで金貨3~4枚、パープルで金貨7枚は固い。

 レッド種はオークションに出せば、最低落札価格は金貨12~14枚は確実にするそうだ。

 ざっとオークとホーンボア六体で、金貨40 枚は確実だそうだ。

 

 それに金毛のゴールデンベアにブラウンベア、ブラックウルフにグレイウルフとシルバーフォックス。

 進化していない通常種とはいえ、森の最深部にしか居ない化け物揃いなので、オークションに掛けるべきと言われてしまった。


 一体金貨20枚として5頭で金貨100枚合わせてざっと金貨150枚だそうだ。

 半金の金貨75枚を仮払いしておくが、それで良いかって何よ。

 オークションに掛ける物の最低金額は、オークション開始価格なので落札者次第で最終価格は不明だと言われる。

 つまり残り半金より増える事はあっても、少なくなる事は無いので安心しろって言われた。

 

 このままでは厄介ごとに巻き込まれるのは必死なので、条件付ける事にする。

 

 「パープルやレッドを、オークションに出すには条件が有る」

 

 「話しを聞いてからだな、無理なら断るとギルマスに言われる」


 「面倒事は御免なので、今回も含めてエルクハイムの冒険者ギルドに俺が持ち込む物については、一切他言無用にして欲しい」

 

 「まぁそうだろうな。判った、今後は受付で俺かサブマスを呼んでくれ。俺はギルドマスターのヤドニスだ」

 

 「ナムラード村のアルバートです」


 「ああ、此から宜しく頼む」

 

 「もう一つ、辺境育ちで成人前の物知らずな為に、魔獣や薬草等冒険者ギルドで売れる物の知識が無いので教えて欲しいのですが」

 

 「それは大丈夫だ、読み書きが出来るのならギルドの資料室を解放してやる。出来ないのなら、専門の職員を紹介してやるのでそいつに聞け」

 

 「助かります。俺の鑑定では野獣や魔獣は、危険・旨いとしか解りません。薬草も薬草・毒草・食べられるですから、名前すら解りませんので」

 

 「処で後どれ位持っている」

 

 ギルマスの問いに、さっき見せた以外にも金毛熊や狼に狐等数頭から十数頭いると少なめに答えておく。

 それとは別にパープルやレッドも多数持っているし、オークや猪なら数十頭持っていると答える。

 他にはの問いに用途は知らないが薬草が数十種類、炎の様に真っ赤な蜂の蜜がたっぷり有ると答える。

 

 「オイオイ火炎蜂の蜜だって、一寸出してくれ」

 

 土魔法で作った大型の徳利を一本出すと、詮を抜いて香を確かめ買い取り専門の鑑定使いを呼び鑑定させた。

 

 「上物の火炎蜂の蜜に間違い無いですね、王家や貴族達が競って買ってくれますよ」

 

 興奮気味に話す鑑定使いに、此処で見聞きしたことは他言無用ときつく言って下がらせる。

 

 「どれ位持っている」

 

 「壷にして40以上、一壷でそれと同じ容器なら30本以上入るよ」

 

 「上物なら小さな壺一つでも金貨2枚は下らないぞ」


 と、ギルマスが唸りながら教えてくれた。


 「一気に出せば混乱が起きるので、売りたい物は一つ一つ確認してから査定しよう。薬草や蜜等は商業ギルドでも買い取って貰えるが、森の奥で採取した物ならとんでもない物が多数有るんだろうな。商業ギルドにも話しを通しておくので、売りたい物は一応査定して貰え、査定の為の鑑定料は銀貨1枚だが損にはならない筈だ」


 と教えてくれ、査定の結果を見てから、冒険者ギルドに売るか商業ギルド売るかを決めれば良いと良心的なお言葉。

 

 仮払いの金貨75枚を貰って冒険者ギルドを後にする。


 冒険者ギルドを出ると、ハイド男爵が是非領主の館に来てくれとしつこい。

 行けば領主と顔を会わせる事になるのだが、王侯貴族にへいこらする気は無いので断る。

 

 俺はこの街で獲れた獲物を売り、服や日用雑貨に塩や香辛料等を仕入れに来ただけだ。

 約束なので、貴方の処に顔を出すつもりで通行手形を使わせて貰ったんだと伝える。

 

 「では私がご領主様に話をして、頭を下げる事も丁寧な言葉も不要と約束を取り付けて来る。それまで彼を街の案内に付けるから、商業ギルドでも街の服屋でも好きな所に行ってくれ」

 

 「嫌ですよ。気に入らない相手に対して、武器に手を掛けて威嚇する様な人は」

 

 護衛の騎士が、顔を真っ赤にして唸り声を上げるが知った事か。

 ハイド男爵が苦笑いで傍らの文官風の男に「では君が彼を案内してくれ。行き先の連絡は冒険者ギルドに頼む」と命じている。

 使いを出してサブマスか受付に伝言すれば、判る様にギルドにも話しておくからと言って領主の館へ向かった。

 

 「ザイマンと申します。アルバート様、何処に御案内致しましょうか」

 

 「ザイマンさん、様は要りませんよ。私は辺境の村育ちの無教育な子供ですので」

 

 「いえいえ、カナード・エスコンティ伯爵さまのお客人ですので、呼び捨てになど出来ません」


 きっぱりと言われてしまっては返す言葉が無い。

 

 「では冒険者の方達が着るような服が買える所を教えて下さい」

 

 ザイマンさんが案内してくれたのは、如何にも冒険者御用達って感じの店で武器、防具、衣服、夜営用品を一括で扱う店だった。

 三ヶ月近い森での生活で、服が大分くたびれていたので先ず衣服だと探したが、14才の自分にはどれも大き過ぎてぶかぶかだ。

 多少の大きさは紐や縫い込みで調節出来るが、動きに支障をきたす様では駄目だ。

 案内の店員と相談して誂える事にする。

 

 そこそこ良いもので丈夫な生地を使うと、ズボン一着で10万ダーラにシャツが4万ダーラ、フード付き上着20万ダーラを各3着で102万ダーラ。

 金貨10枚と銀貨2枚と中々のお値段だが、既製品が無く注文製作だから仕方がない。


 次にフード付き膝丈のローブを一着12万ダーラ、ロングブーツ25万ダーラ、ショートブーツ18万ダーラに下着と靴下を各5着で15万ダーラ。

 

 ラノベでは古着とはいえあっさりと買っているが、無茶苦茶高い。

 生地一つ織るのも機織機でガチャコンガチャコン人力なので、無理もないか。

 

 後は夜営用の鍋釡に食器類、寝具と木製だが折り畳み式のキャンプ用ベッドが有ったので購入した。

 鍋釡にフライパンはステンレスによく似た白銀色の錆びないから便利だと言われて即決、今使っているのは土魔法で造った物で重い。

 此処で24万ダーラ使った。

 

 最後は刃渡り50cm程のショートソードと、40cm近い剣鉈に似た刃物を購入。

 使わないが服に見合った武器は必要と強く言われ、ショートソードが80万ダーラ剣鉈に30万ダーラ払った。

 何かコーナー毎に支払う仕組みになっているようだ。

 後は作業台に椅子とテーブルが欲しいが此処には無い。

 結局金貨30枚と銀貨6枚のお買い上げだ、銀貨6枚をおまけして貰って店を出る。

 

 次は家具だが、自分の身長に合わせると注文制作になるんだろうなぁ。

 ザイマンさんに聞くと、家具類は家具の販売と製作所が一体化していて、庶民の基本的な家具は予め寸法が決まっているそうだ。

 後は顧客(富裕層や貴族)の要望や間取りに応じて、注文生産しているとの事。


 今日は家具購入を諦めザイマンさんと市場へむかう。

 塩,砂糖(超貴重品)香辛料(貴重品)等を買い漁る。

 

 《アール》

 

 《どうしたのフィーィ》

 

 《フィーェも居るよ、あのね暇だから貴方の上に居るの》

 

 《下から見えないかい?》

 

 《大丈夫♪ でね、さっきの建物を出た後からズーッと貴方の後をついて来ている人族がいるの》

 

 《有り難う、危なくなったら助けてね。でも姿は見られない様に気を付けて》

 

 さて、どうしようかなーと考えていると。

 

 「アルバート此処にいたか、御領主様のお許しを得てきたぞ」

 

 聞きたくない声がする。

 

 《フィーィ・フィーェ俺の後ろをついて来ている奴の顔を覚えといて》

 

 《大丈夫、魔力を覚えたから何処にいても判るよ》

 

 《これからこの街の領主に会うんだけど、何か有ったら助けてね》

 

 《任せて!》

 

 「判ったよ。行くけど気に入らなければその場で帰らせて貰うからね」

 

 ハイド男爵の言質を取り、渋々後をついて行く。

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