おまけ 風邪③
へ?
は?
目が覚めると俺の腕の中で愛莉が気持ち良さそうにスヤスヤと寝息をたててた。
夢?
反射で自分の頬をつねる。
痛い。
これは夢じゃなく、現実だ。
「はにゃ?」
もぞりと体が動いた。
そして奇妙な声を出した。
「うぅぅん。こーくん、おはよう」
まだ眠そうな目をぱしぱしを瞬かせ向くりと起き上がった。
今の現状を理解しているのかいないのか、マイペースにこしこしと目をこする。
そして、俺の額に手を伸ばす。。
なんの気無しに手が俺のおでこに乗った。
ぴと。
「んー。だいぶ熱下がったね。良かった」
彼女は俺に触れ、体温を感じながらのんきそうに呟く。
.....。
「あの、なんで俺の家にいるのか?ってとこから突っ込んでもいいのか?これ」
「それとも、なぜ、俺たちが一緒に寝ていたのか?ってとこから尋ねるべきなのか?」
俺は居てもたってもいられず、まだ少し重みの残る体を持ち上げた。
「ん?」
不思議そうに、首を傾げる。
や、だから.....。
「誰も居なかったから勝手にお邪魔したよ?」
衝撃発言をしれっと溢す。
「?」
不思議そうな瞳が俺の目をくり抜いてくる。
「そうじゃなくて....。や、それも大問題ではあるな....」
「あーっと、えっと。なんだ.....」
俺は質問をしたい事は山程あるがその山をどれから切り崩して行くべきなのか迷う。
「こーくんはもう少し寝ていてください」
そう言って彼女は俺をベッドへ押し付けてきた。
「このお屋敷に来たのも久しぶりだなぁ。こーくんのお部屋も久しぶりだよ」
彼女は嬉しそうに部屋を見渡す。
もう、3年くらい前になるよね?
そう言って、愛莉は俺の向かいに腰を下ろした。
ベッドの上の俺と、座椅子に座る愛莉の目線が重なる。
今の弱り切った体には一番の促進剤な気がする...。
てか...。
忘れてた。
愛莉、どうしてここにいるんだ?
もぞりと俺は布団から腕を出した。
「こーくんが熱出して寝てるのに、家に誰も居ないと聞いて飛んできたんです」
にひゃっと照れたように笑った。
「万が一屋敷の連中に遭遇したらどうするつもりだったんだよ」
「んー。その時は、その時...かな?」
「女優が組の屋敷をうろつくってナシだろ...」
「大丈夫。バレなかったらどうにでもなる!」
「バレたら?」
「その時考えます」
「はぁ。その行動力、呆れるを通り越して尊敬するわ」
「へへへ」
「照れない。照れるな。別に褒めてない」
「むー。いいじゃん。心配だったんだもん」
私が来てからもこーくん、凄いうなされてたんだよ?
「そうか?」
「うん。だから私もこーくんのそばでぎゅってしてたんだもん」
そしたら、いつの間にか寝ちゃってた。えへへ。
またしても、頬を染めてはにかむ。
「それで、俺のベッドにいたのか...」
まぁ、俺が夢遊病的な何かで変な事をしでかした訳ではないのなら、セーフか。
そう少しだけ残念な、それでもどこか安心したような気分で、ごろんと上を向いた。
■■■■■
「もうすぐ、お昼ですけど、何か食べられそうですか?」
愛莉は部屋の時計を見て顔をのぞき込んできた。
「ん。食欲は普通にある」
「そっか。よかったぁ。ちょっと待っててね」
そう言って彼女はスーパーのレジ袋を片手に部屋を出て行った。
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