第4話 電話越しの.....!?

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 ピロン。ピロン。

 1時間くらいして再びスマホが鳴った。

 電話かと思ったら律儀に通話アプリで文章が現れた。


 "こーくん。ただいま帰りました(ビシッ)"

 "今から電話大丈夫ですか?"


 "いつでもどーぞ"

 俺はそう打つ。

 直後、スマホの前で待機していたかのように電話が鳴った。



 ゆっくりと耳にあてるとふわふわした声が俺の鼓膜をくすぐった。

『こーくん。ふふ。さっきぶりですね』



「ああ。今度こそ.............」

 今度こそお疲れ様.............だなと言おうとして言葉に詰まった。

 耳をすませる。


 人の声?とは違った感じの物質音?

 電話口がまだざわついていたのだ。





「家に帰ったんじゃないのか?まだ外?」

 誰かと一緒とか?


 俺は、彼女が俺のために忙しい時間を無理やり裂いているなら申し訳ないと小声で聞いた。

『え?誰も居ませんよ?』

 本当の本当に私、帰宅!

 家に居いますよ?

 返ってきたのはキョトンとする声だった。



 この反応、嘘ではなさそうだ。

「そーか。だったらこの音何だ?ノイズ?」

 俺は、カサコソと彼女の声の合間から聴こえる音の正体を知ろうとスピーカーにして音を聞き分ける。

 何かが擦れ合う音。


『そんな音してますか?』

 不思議そうな声が返ってきた。

 彼女自身、自覚してないようだった。

 じゃ、俺のスマホのスピーカーに問題があるのか?






 カサコソ。パチ。

 また、ノイズが乗った。







『あ、分かりました』

 少し考えた上で彼女は、声を発した。



 彼女の中で何か解決したらしい。

『これですか?』

 確認するように何かを確かめてくる。

 彼女の声でノイズは更に大きくなった。



 カサカサ。ぬぎっ。

「そう。それ」

 正しく彼女の指摘する音。

『ふふふ。何だと思いますか?』

 どうやら音源が特定できたらしい。

 何故か音の正体を当てて欲しそうに言うからわざと興味の無いフリをする。




『むー。気にならないのですか?気になりますよね?』

 案の定、むくれたトーンが返ってきた。



 仕方ない。

「気にならなくは無い」

 そう答えると嬉しそうな声が返ってきた。

『分かる?』

 おそらく、にちょっと笑ってドヤ顔しているのだろう。





「いや、分からない。お手上げだ」

 俺は降参だと首を振った。

『じゃ、ヒントです。

 私は今、何をしているでしょうか?』

 どうやら彼女の口から答えを教えてくれる気は無さそうだ。

 忘れていた。

 彼女は小さな悪戯が好きなんだ。

 自分がされたらしょげる癖に。





 俺は久しぶりな彼女の会話に懐かしさを覚え、質問に応えた。

「何って、電話だろ?」

『ぶぶー。電話しながらもう一個してる』

「もう1つ?」

 電話を耳に当てながら他の事をするなんて器用な人だ。


 そう思いながら、通話をしながら出来るもう1つの事を考える。

 何だろ。

 俺が考えている間も摩擦音は、途切れることなく鳴っている。




 俺が長考しそうな雰囲気が漂っていたのかさらに譲歩した助言をくれた。

『ちなみに、今の私、メイク落としてすっぴんです』

 大ヒントですよね?

 語尾を少し意地悪く上げた。



 そこまで言われ分かった。


 女子が化粧を落とす理由なんて1つしか無い。





 うわっ。

 まじか......。

 俺だけで誰も見てないと分かっているが、思わず顔を腕で覆って隠した。

 今、この部屋に鏡は無いけれど体感では耳まで真っ赤になっている自信がある。




 少し深呼吸して平常心を保っているフリをしてクイズの答えを口にした。

「服....脱いでた音....だろ?」

 俺は電話口で尻尾をふりながら静かに待機していた小娘さんに恐る恐る言った。


『大正解です』

 彼女は嬉しそうに応えた。


 まじか.....。

 俺のスマホを挟んだ向こう側で生着替えが行われていたと想像する。

 今、ビデオ通話にすればやばい事になると一瞬頭を過る。

 まじか....。

 それしか言葉が出てこない。






 生着替えとか....。

 そんなの年頃の男は皆、卒倒してどうにかなってしまいそうだ。




 俺は独り赤面し頭を抱えていた。

 すると....。

『ちょっと待ってて下さい....』

 その声と同時に彼女の声が遠ざかっていった。


 ガチャリとドアが開く音。

 ザーーーーと何かが流れる音がする。

 その後、カプッ、カポッと言う音に変わった。

『はぁ~~。こーくんお待たせしました』

 次に現れた彼女は、この短時間で一体何があった?と聞きたいぐらい極楽モードになっていた。






 .......。

 ......うん?

 さっきの事があるから一応、聞いておこう。

 勘違いなら俺を変態でもスケベキモ男とでも罵ってくれ。

 俺はそう決心し、恐る恐る口を開いた。

「愛莉....。まさかとは思うが......」





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 多分俺が間違っているはず。

 これは俺の妄想。

 男性ホルモンのせいでこんなシーンがポイポイ頭を駆け巡っているだけだ。

 うん。そうに違いない。

 そう信じ彼女に尋ねる。





「まさかとは思うが.....今....ふ、風呂だったりするか?」

 つっかえつつも勇気を出した俺に彼女はキョトンとしたぽわぽわ声で肯定してきた。


『ん。お風呂ですよ?』

 風呂場特有のハウリング。

 これは正しく彼女が風呂に入っている証拠だった。

 体が固まる。思わずスマホを落とした。



『もしもし?』

『もしもし?こーくん?』

 転がったフローリングの上で彼女が呼び掛けている。


 このスマホ1枚向こうに彼女の全裸がいらっしゃると言うのは、何の拮抗薬で御座いましょう.....。



 こほん。

 お前は俺を薬物中毒にさせたいのか?

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