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センターに立つさやは戸惑っていたが、アイドルとしての本能で設定された持ち歌を歌い出す。周囲のアイドル達は新たなステージの出現に混乱していたが、依然意識はディアレスツの楽曲に集中している。
「まずは1000万!」
叫びながら振り払った腕の動きに合わせて、さやの衣装が変化する。普段着からアイドルらしい衣装に変り、心なしか歌声も伸びやかなものになる。
「似合ってるじゃないか、カオル」
「うるさい。お前もちゃんと声を合わせろ!」
同じく変化したお揃いの衣装に気恥ずかしさを覚えながらも、さやの歌に声を合わせる。私自身は歌は嗜まないが、このアイドルアバターの基本性能でなんとか形になっている。広場のほとんどのアイドルに変化は見られないが、こちらのステージに近いアイドル達は、ディアレスツではなく、明らかにニューワールド・ドミナンスの楽曲の方に反応している。
「20億!!」
間奏のタイミングでさらに追加。さらに華麗に変化したNW・ドミナンスの衣装に、オーディエンスのアイドル達だけでなく、対面のステージに立つクローデットまでもが反応し声を上げる。
「なんで? なんで衣装チェンジしてるの!?」
「これが課金の力だよ」
「……課金?」
「ライブ中よ、集中なさい!!」
怜の声で我を取り戻し、歌に戻るクローデット。だが、会場には浮足立った気配が広がり、振り上げられる拳は乱れている。
「それでは7000億だ!!!」
さやの振り付けに合わせて乱れ飛ぶ流れ星。それを受けた観客のアイドルの衣装も、次々と煌びやかなものに変わってゆく。
「アイヤー! 何ごとアル!?」
「見て! あたしの服も!」
「そう! 君たち一人一人が輝ける星だということだ!!」
久し振りの課金に溢れるアドレナリンを抑えきれず、両手を広げ感極まって天を仰ぐ私に、アルは苦笑を浮かべる。
「ディアレスツがゲーム内でのポイントを総取りして、膠着した状態だったからね。一人でもプレイヤーが参加すれば、その均衡は壊れる事になるって寸法だね」
「ましてや石油王張りの大富豪の資産なら!!」
相対的にディアレスツの人気度が落ち、自発的にNW・ドミナンスのライブに乗り換える者達が出始めた。それでも、ディアレスツの3人は、彼女達出典のゲームでは揃って高い能力値を持ち、金の力で同じSSR相当にまで押し上げたさやの能力値でも、わずかに競り負けてしまう。
「さらに追加!! 1兆5000万!!!」
「え? あ……きゃああ!?」
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