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「ディアレスツのメンバー、幼なじみタイプの真藤ありさ。オーソドックスな委員長タイプ月ヶ丘怜。ツンデレのテンプレート、霧島・クロ―デット・トレヴァ―。ありがちで、どこかで見たようなキャラ。彼女たちはだからこそ強い」
「似たようなキャラは淘汰・統合され、最も平均的なユニットに価値がある――I・DOLLはそう判断したという事か」
「整った顔の定義は特徴の無さとイコールだからね。もっとも人間の場合は、それに加えちょっと特徴的なパーツがあったほうが好ましいそうだけど――」
自らのくまのできた眠たげな目を指し示すアル。
「僕のたれ目や、君の微乳はI・DOLLにとって偏り、マイナスとしか判断されないってわけだ。ぽっちゃりやヤンデレはもちろんアイドルに相応しくない。実妹や義理の母設定なんかもってのほかだよ」
アルには他に撥ねられるに足る明確な理由があるようにも思うが。
特徴的な髪形や、控えめな性格はアイドルに相応しくないのか?
脳裏に思い浮かんだのはさやの姿。
不意に記憶がよみがえった。涼代さやは、私がコールドスリープする直前、プレイしていたゲームで、全てのカードを揃えられなかった最後のキャラクターだ。
「開始してわずか12時間で現在の状況に収まり、以来ずっとこのままだ。I・DOLLは、すでに意識と記憶をアーカイブに移した僕にとって自己の一部でもあるし、介入しようとすると自家撞着に陥ってしまう。起きて貰ったついでに、君が手を貸してくれると非常に助かるんだけどね」
「そうだなアル。久し振りに、ゲームを始めようか」
涼代さやは、私にとって決して価値のないアイドルなどではない。
翌日。私とアルバートは、さやを連れて街の広場に出向いた。私たちの同行に、彼女は少し眉を下げただけで、特に異を唱えなかった。
ステージの周りには既にアイドル達の人だかりができ、始まったディアレスツの曲に合わせ腕を振り上げている。参加しようと揚げかけるさやの手を取り、私は首を振った。
「さあ、ニューワールド・ドミナンスのライブの始まりだー!」
アルの合図で、広場に新しいステージが組み上げられて行く。その上に立つ私達3人の視線は、ディアレスツのそれとようやく同じ高さになった。
「歌って、さや」
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