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短い脚でのこのこ歩くロボットに連れられた先は、私がコールドスリープ前に何度も足を運んだ、アルバートの住まいそのままの建物だった。
「変わらないな。仮想空間内でなら、もっと気の利いた外観に出来るだろうに」
『貧乏性なものでね。環境が変わると、どうも落ち着かない。それに、仮想空間だからこそ、広さや見かけにこだわる意味もない』
ロボットに促されアルの私室のドアを開けると、いつものアルの定位置のデスク前の椅子には、一人の少女の姿があった。ぼさぼさの灰色の髪に、睡眠不足らしい眠たげな目。腕をまくった白衣の下は水着という奇抜なファッション。
この少女もアイドルなのだろうか。けれど彼女には、コンサート会場に集ったアイドル達と違い、くすんだ印象は受けなかった。
「アル……この子は?」
「ああ、こっちが僕のアバターだ」
足元のロボットへの問いに答えたのは、目の前の少女の方だった。
「お前かよ!!? っていうか、それならわざわざロボットを寄越すなよ!」
「僕が出不精なのは知っているだろ?」
アルバートは澄ました顔でうそぶくが、すでにアバターを使っているんだから、かえって二度手間じゃないのか?
「それに、君だって同じようなものじゃないか。その身体、まんざらでもないんじゃないか?」
「私は頼んじゃいないぞ!?」
確かに鏡で確認したこの身体は、黒髪ショートに微乳と、私の好みのキャラを知り尽くしたアルバートならではのチョイスだと感じはしたが――
「そうかい、それは残念だ。僕のこの姿のほうは気に入ってくれたようだね」
「ばば、馬鹿を言うな!?!」
「真に萌えるキャラは紳士が造るものだ。驚くことでも、恥ずかしがることでもないさ」
反応したように見えたのなら、それはアルのアバターに他のアイドルにはない生気を感じたからだ。
「挨拶はもう十分だ。そろそろ事の次第を説明してくれないか?」
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