第43話
エスカトーレ・マグィナツは幼少の頃から少し変わっていた。
上流階級の『マグィナツ家』の嫡男として産まれた彼は武芸の才に恵まれなかった。
理由は彼に与えられた『
分かりやすく言うと『錬金術』にも似た彼の能力は無から有を創り出す事は出来ない。
それでも、
彼は『マグィナツ家』として、『王国騎士団』へ入団する事は決まっていた。
いや、
決められていたのだ。
上流貴族は代々王国に仕える為に存在している。
彼もまた、自分の『恩恵』を極め王国の為に力を尽くそうと努力した。
しかし、彼の〝錬成〟は武器や道具、傷薬などを創る能力である為にあまり目立つ事は無かった。
王都に出れば『鍛冶屋』があり、『薬屋』もある。
王都を出ても領土内の町や村にはそれぞれの特産品や、そこでしか手に入らない鉱石などもある。
つまり彼は『ディアケテル王国』の騎士団の中では無能扱いだった。
研究を重ねたが思っていた以上の成果は出ず、途方に暮れていた時にある転機が訪れる。
『英雄召喚の儀』に敵国の『マルクトゥス帝国』が成功した。
そんな一報が届けられた。
この『グランセフィーロ』では時折、異世界から『迷い人』がやって来るという御伽噺は度々聞いた事はあった。
しかし、それをこちらから強制的に召喚するという発想は今まで誰も無かった。
それを知ったエスカトーレの行動は早かった。
まず敵国である『マルクトゥス帝国』へ密偵を放ち情報を持ち帰らせる。
そしてその情報を基にこちらでも『召喚用魔法陣』を作成する。
これはエスカトーレの〝錬成〟の能力と知識が役に立ったので一気に昇進する事が出来た。
本来、
この『ディアケテル王国』もそのレイラインの上にあるので魔力が枯渇する事は無いのだが、大量に魔力を消費してしまう為に何度も使える代物ではなかった。
つまり、異世界へ召喚するのは容易だが誰が来るかは分からない。
戦力として役に立てばそれでいいのだが、中には子供が召喚される事も多かった。
結果として王国内の魔力は消費され、戦闘経験も無く、人を殺める事に抵抗のある異世界人が多く召喚される事になったのだ。
エスカトーレは悩んだ。
どうすれば王国の戦力が増えるのか?
どうすれば異世界人を有効活用する事が出来るのかを?
そんな時、彼は異世界人の技術を色々と聞く事にした。
話は単純で、こんな物がある、あんな事が出来る、など役立ちそうな物から役に立たない事まで色々聞いた。
『
元々領地の『ウルビナース村』の花には色々と効能があったのは知っていたので、それを改良し作ることが出来た。
ただ高価な物という事と、貴族間で取引されている花だったので入手が困難だった。
それを解析し、自分なりの解釈で単純に戦力を大幅に上昇させる事が出来た。
後は、
彼らが召喚された際に唯一創造神より承った『恩恵』をどうするかを考え、
人として道を踏み外す行為に手を染める事になった。
人体実験を繰り返し、異世界人が授かった『恩恵』を抽出する事に成功。
それを自分の『
そうして彼の歪んだ功績は認められ第四師団まで上り詰める事が出来た。
このまま戦力を上げ、功績を上げれば―――――、
あの憎い第二師団団長を蹴落とす事が出来る。
そう思い、今日までエスカトーレは生きてきた。
彼は自分が正しいと思っていた。
王国の為に、と非人道的な実験を繰り返してきた。
そして、
素材が無くなったのでどうしたものかと城の中を歩いていた時、門の前が騒がしいのが見えた。
ほんの気まぐれ。
そんな気持ちで双眼鏡を覗き込み、
今自分が欲しいモノが目の前にあった。
一つは『ウルビナースの花』を持った子供。
もう一つは、明らかにこの世界の服装をしていない男女だった。
素体が手に入る。
『魔薬』を生成する為の花も手に入る。
そう思った時、エスカトーレの口元がニヤけていた。
やはり神は自分に微笑んでいるのだと。
そんな神に感謝をしつつ色々と考えを巡らせ、行動に移す為にデュナミスを呼ぶ事にした。
彼はまだ知らない。
その思い付きの行動が、
全て悪手だったと後悔する瞬間が訪れる事を。
異世界人を見下していたが、そんな彼らが規格外の
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます