第20話
『王国騎士団』第四師団副団長デュナミス。
彼は一言で言うなら初めは〝超〟が付くほどの真面目だった。
平民の家に産まれるが、剣技の才に恵まれ〝正義〟に憧れ、大きくなったら王国騎士団の門を叩こうと決意しやがては騎士団長へと成り上がる。
そう決意を顕にしていた。
しかし、現実はそう甘くはなかった。
結論から言うと彼は志半ばで心が折れてしまった。
王国騎士団は全部で五つ。
その全ての団長各が規格外だったのだ。
王都から離れているとはいえ彼の住んでいた村では一番の実力があった。
しかし、世界は広い。
自分の実力はあの五人には到底届かない。
だから団長の元で学ぼうと思った。
そして彼が配属されたのは『青』の騎士団。
団長、エスカトーレ・マグィナツ。
そこが彼、デュナミスの
ハッキリ言ってエスカトーレ・マグィナツという男は騎士として―――――いや、人間としては最底辺の男だった。
日常的に気に入らない事があれば部下に暴力を振るい、王都の人からも護衛をしてやっていると言う名目で金銀を徴収したりもしていた。
国王陛下が黙って見ているとは思えない非道の数々を平気で行っているのだ。
しかしやはり腐っていても騎士団長の肩書きは伊達ではなかった。
そもそもの実力が違いすぎたのだ。
苦言を呈しては暴力を受け、
都合が悪い事があれば王都の人々に当たり散らす最低な人間。
しかも最近は異世界からやってくる『迷い人』なる者を匿い何か恐ろしい事を企んでいると小耳に挟む事もあった。
自分が信じた正義は本当にあるのか?
このまま自分だけでなく、王国も落ちるところまで落ちていくのか?
それは分からない。
だが、
ふと故郷にいる家族や村の皆の顔が脳裏に過る。
もし、ここで反逆を起こして大罪人と断定されでもしたら?
そう思うと謀反を起こす事も騎士団を退団する事も出来ない。
自分は弱くて、愚かだ。
そんな思いを胸に秘め、デュナミスは声高らかに宣言する。
この諸悪の根源である迷い人を叩きのめし国民全員を救うのは自分だと自分勝手な正義を貫こうと決意し剣を手に取った。
デュナミスは気付いていない。
ここで彼らの言う『迷い人』を叩きのめした所で何の解決にも至らない事を。
そして、
彼の言うその〝迷い人〟達は簡単には降す事が出来ない事を彼はまだ知らない。
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