第18話
一方、『ブレッドの宿屋』の一室では異世界から来た三人がテーブルを囲んでいた。
もちろん話題は今日、自分達が集めてきた情報交換をする為だった。
「まずはこの世界―――――『グランセフィーロ』について分かった事があります」
蓮花の開口一番がそれだった。
『グランセフィーロ』、それがこの世界の名称。
男二人は串焼きを片手に話を聞いている。
「事前に神無月くんから聞いていたようにかなり変わった世界のようですね。私達のいた世界で言う科学技術が発展していない分この世界には『魔法』が発展し主流になっているようです」
魔法に魔物―――――ますますファンタジーな世界だと十夜は思った。
「ふむ、その『まほう』とやらは一体何なのだ?」
万里は挙手をし質問を投げ掛ける。
本人曰く、
「酒と女は知っているが『げーむ』やら『まんが』にはてんで疎くてな! 何が何やらさっぱりよ、カカッ!」
だそうだ。
しかし困った事に十夜も漠然としか『魔法』というのは知っていても詳しくまでは分からない。
そう思っていると、
「『魔法』は属性―――――地水火風の四元素に光と闇の計六つに分かれているそうです。自然界に干渉する力、それが『魔法』のメカニズムみたいですね」
「ほう、ならば拙僧らで言うところの〝気功〟のようなものですな?」
「いや、多分違うぞ」
すかさず十夜がツッコミを入れる。
万里の言う〝気功〟とは体内で練り上げて放出するモノで恐らく蓮花の言っていた『魔法』とは少し違う。
その説明をすると「成る程」と万里が納得していた。
見た感じ理解はしていないだろう。
「まぁその辺りはまた追々にでも街の人々に聞いてみましょう。後は私が調べた限りではこの国の歴史ぐらいですね。ちなみにですが、歴史に興味は?」
全力で首を横に振る男二人。
何となくだがそんな感じはしていたと言わんばかりに蓮花は深いため息をついた。
「それでは次、拙僧の番ですな! 拙僧が仕入れた情報はこの世界には四つの〝勢力〟がある事ですな」
「勢力? っつか万里は何処で仕入れたんだよ?」
十夜の質問に万里はいつものようにカカッ! と一笑いし、
「なに、あの酒場へもう一度赴きあの強者達と酌を交わしましてな、そこで聞きましたぞ」
蓮花は知っていたが、十夜は知らなかったので驚きはしたが合点がいった。
通りで万里からは仄かに酒の匂いがしていたのはその為だったのだ。
「で? その勢力って何だよ?」
「おぉ、そうでしたぞ! まずはこの国が有する『王国騎士団』。次にえっと確か…………まるく、なんちゃらという国で」
どうやら横文字が苦手な万里は必死に思い出そうと頭をフルに回転させていると、
「もしかして、『マルクトゥス帝国』ですか?」
どうやらこの世界を調べていた蓮花もその辺りは聞き覚えがあったようだった。
「そうそう! その『まるくとーす帝国』とやらが保有する勢力と言うのが『魔導騎兵隊』。何やら不可思議な力を使うとの事ですな」
万里の言う〝不可思議な力〟と言うのは恐らく『魔法』なのだろうと理解した十夜と蓮花は万里の話の続きを聞く事にした。
「で、ここからが〝彼ら〟の所属する組織なのですが、どうやら大陸全土に幾つかの拠点を持つ冒険者の集い『黄金の夜明け』と言う組織ですな」
「冒険者の集い―――――って事は『ギルド』ってやつか」
現代知識をフルに使う十夜に万里が「おお! そう言っておった!」とテンションを上げていた。
ここまで来るとやっぱり異世界だなぁと痛感する十夜。
そして、最後の締めと言わんばかりに万里が少し声のトーンを落とす。
「最後の勢力、これが少し謎でな―――――『聖王教会』と言うんだがこれもこの世界の大半を纏め上げている勢力らしくてな。詳しく知る者が極端に少ないらしい」
つまり万里の話を纏めると、
この世界には『王国騎士団』『魔導騎兵隊』『黄金の夜明け』『聖王教会』の四つの勢力が均衡を保っているとの事だった。
その辺りはどうやら蓮花が軽く知っていたようだったが、詳しくまでは分からないようだった。
「では一番遅かった神無月くんはどうです? 何か分かりましたか?」
蓮花が促すと、十夜は少し押し黙った。
成果が無い―――――という訳では無かったのだが、どう切り出すかを迷っているようにも見えた。
「どうしたんですかな?」
「いや、俺が王都で見たもんなんだけどな―――――」
十夜が口を開く。
その内容は想像を軽く越えているものだった。
王都を歩いていた時に妙な臭いを感じた事。
その臭いが路地裏から漂ってきており、そこでチンピラ風の男二人とそんな男達にすがり付く女性を見つけた事を話した。
「まぁ野郎二人はこっちで沈めたけど、やっぱ気になるから女の人は医者に診て貰うために病院に連れていったんだわ―――――まぁハッキリと聞かされてねぇけど、多分薬漬けにされてた。しかも重度の」
確かに自分達の世界でもそう言った犯罪はあるのは知っている。
それがまさか異世界でも同じ事があるとは思わなかった。
「成る程。それで? その娘さんは無事なんですかな?」
「さぁな。俺はすぐに追い出されたから知らねぇんだ…………でも気になった事がある」
十夜は一呼吸を置くと蓮花へと向き直る。
「竜車のおっちゃんも言ってたろ? 王国内じゃ最近治安が悪いって。で、〝コレ〟を女の人が持ってんのを見つけた」
十夜の手に握られていたのは何処かで見たことのある一輪の花だった。
所々汚れてはいるが、その花を蓮花は知っていた。
しかも、
ほんの数時間前にそれを見たばかりだった。
「こりゃフェリスとリューシカが持ってた花だ。コレが原因なのか、それとも売ってた花を買っただけなのかは分かんねぇけど全く無関係って感じはしないな」
十夜は苦虫を噛み潰したような顔で呟いた。
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