第13話
二章『ディアケテル王国』
「そんな服で行ったら街中で変な目で見られるかもしれんからローブを渡すから羽織っていけばいい」
そう言われ、確かにこれ以上のトラブルを避けたい三人にとってはその提案はかなり有り難かった。
そして、最早この世界で説明を聞く役割になってしまっている蓮花が礼をし、そう言えばと森の中で魔物が落としたアイテムについて話をしていた。
すると竜車の男は驚いた声を上げる。
「こりゃ特定の魔物が持つ『魔力結晶』じゃないか!? アンタら魔物に勝てる技量があったんだな!!」
『魔力結晶』―――――瘴気の濃い場所に住む魔物を討伐した際に低確率で落とす事のある物らしく売ってもお金になったり、それを使って武具を形成する『鍛冶屋』のような場所もあるという。
その話を聞いていた十夜は、ますますRPGそのものだなと感じていた。
「そうなんですね…………」
あまりその手の話題には疎い蓮花はちらりと十夜の顔を見る。
その表情はどうすればいいのか分からない顔だった。
少し考え十夜は竜車の男へ提案した。
「おっちゃん、すまねぇがその辺りの話は俺が聞くよ。ももちろん礼は弾む」
「いや、アンタらには色々と子供達が世話んなったから別にいいが―――――本当に何も知らないんだな」
竜車の男は呆れた顔をした。
内心すいませんと思いながらも十夜は話を続けるように促した。
ある程度の話を聞き終わると三人は改めて王国の門を見据える。
「そう言えば、最近王国じゃああまり治安がいいとは言えない噂が立ってるんだ。アンタらはもちろんだが、もし王国内であの子達に出会ったら一応は気に掛けてもらえんだろうか?」
こんな時にでも他人を心配するのはこの男は本当にいい人なのだろう。
「あぁ、色々ありがとなおっちゃん」
「本当に感謝します。この通行証は大事に使わせてもらいますね」
「拙僧は心配をかけてしまったが、まぁ若者に着いて行くとしますぞ」
三者三様に別れを告げると門の前に立つ。
時間もあれから経ったせいなのか、門前に並ぶ者はまばらになっており今ならすぐに入れそうだった。
「ん? まだ入国者がいたのか? 通行証は?」
そう言われ、先ほど渡された通行証を差し出す。
内心はドキドキだったが、それを表に出さずにあくまでも冷静に平然としている。
「よし、通行を許可する。ようこそ『ディアケテル王国』へ」
それだけを言われ三人はすんなりと王国内へと入ることが出来た。
街並みは中世のヨーロッパを思わせる造りになっておりその街に行き交う人々は活気に溢れていた。
もちろん三人の服装はここではかなり目立つという竜車の男が言っていたように悪目立ちはするようだった。
「さて、無事王国内に入れたはいいのですが―――――どうします?」
蓮花の言う通り、まず自分達は一体どんな世界にやって来たのかを知るところから始まる。
そうなると、
「やっぱ図書館とか…………そんな場所か?」
十夜が言うもまず文字が読めるのか?
その辺りが疑問だった。
どうしたものか、と考えていた時。
「その辺りは大丈夫だと思うぞ。ほれ、あちらを見てみなされ」
万里が顎で指した看板の文字を見てみる。
目では何を書いているのか分からない文字が不思議と頭の中で『武具屋』と書かれているのが理解出来た。
「ふむ、どうやら言葉だけでなく言語も理解が出来るようですな―――――いやはや、狐か狸に化かされた気分ですな」
カカッ! と笑う万里だが十夜と蓮花は気持ち悪い感覚に襲われた。
「何か不思議な気分です。勝手に脳内を弄り回されてる気がします」
えらく物騒な話だ、と思ったが概ねその通りだと十夜は同意する。
この感覚は慣れそうになかった。
「で、どうするよ? 文字の問題は片付きそうだが?」
三人で行動するのも有りなのだろうが、それでは日が暮れてしまう。
そうなると―――――。
「………………ではこうしましょう。一度解散をし、再びこの場所で集合というのは?」
異議は無かった。
しかし十夜はどうしても気になる事が一つだけあった。
それは今後の旅の生命線とでも言うべき問題。
それは―――――、
「なぁ」
真剣な面持ちで十夜は自分の腹部を押さえる。
「とりあえず飯にしねぇか? マジでここに来てから何にも食ってねぇ」
あ、と気付いた時には蓮花と万里のお腹が空腹を報せる音が響いた。
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