<第四話>魔王討伐作戦その2「餌付け」

魔王討伐作戦、2つ目の取り組みは「魔族の餌付け」だ。


村を襲撃する理由が食糧不足だと仮定した場合、餌を与える事によって村の被害が激減すると予想される。


魔族への餌付けはもっと早くに実行してもよかったのだが、魔族の組織図が不明だったので実行できなかった。


もし、魔王が全ての魔族を統括しているのなら、安易に餌を与えること自体が魔王を刺激する行為になるからだ。


魔王が村周辺に暮らす末端の魔族と全く接点を持たないことが分かったからこそ実行できる作戦である。




【具体的な取り組み】


・村周辺に住んでいる魔族に食事を与える。


種族別に好きな食べ物・嫌いな食べ物を調査(肉・魚・野菜・果物など)

毒(健康を害する食べ物は無いのかも調査する)




・大規模な餌場の建設


魔族専用の餌場を建設する。


種族別の餌場が良いのか、まとめて一つの餌場で大丈夫なのか様子を見て決める。




・魔族との交流


必ず人間に好意を寄せる魔族が現れるはず。


ゆっくり時間をかけながら、魔族との交流を図る




・種族別に資料をまとめる


種族別の情報を誰でも分かりやすいように資料としてまとめる。


魔族全体の生態が掴めてきたら、魔王討伐の足掛かりになる。




魔族の情報収集も最終段階。


生態がハッキリすれば、魔族の行動を予測することができる。


行動が予測できれば、魔王討伐は成功したも同然なのだから。






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魔族との交流




勇者25歳


リモートワークで魔王討伐を宣言してから五年が経過した。


魔族の生態がよく分かってきた。


『基本的に魔族は一般の野生動物と変わらない』


私たちは魔族について何も知らなかったと言える。


ただ『魔族』というだけで過剰に怯え、敵対視していただけなのだ。




一般の野生動物と違う点


・攻撃力が高い(一部の魔族は簡単な魔法も使う)

・知能が高い(魔王で人間の10歳前後の知能)

・一部の魔族は人間の言葉を話す。




そして、五年間の調査で最大の収穫は2つ


・魔族に食事を与えることで、村の被害が激減(ほぼゼロ)したこと。

・人間に懐く個体も多く存在すること。


魔族と人間が戦うことなく、村への被害を無くすことができた。


たまに村に迷い込む魔族が存在するだけで、村への襲撃・被害は実質ゼロである。


これからは、兵士の遠征費・村の復興費・治療費などを全て魔族の食費に回す。




【魔王討伐作戦の骨組みが完成】


これから魔王討伐作戦を本格的に始動する。


・魔族の寿命は10年前後なので、三世代(約30年)掛けて人間と親密な関係を築く


村への被害が実質ゼロになったので、腰を据えてじっくりと魔王討伐作戦に取り組むことがきるようになった。


つまり何年掛かってもいいということだ。


戦わず、誰も血を流すことなく、魔王を討伐するのだ!

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