05 ENDmarker. 数日後の夜
今夜もまた、公園のベンチにいる。
あのひとが死んでから、数日ぐらい経っただろうか。まだ、現実感がない。
あまり、意味はなかった。告白して、拒否された。あのとき、わたしとあのひとの関係は、終わった。
「告白しなければよかった」
今更。もう遅いのに。
「わたしね」
夜の、灯り。星空。
「最初は、両親だった」
彼。もう死んでしまったから、話してもいいかっていう気持ちになっている。
「わたし」
でも。話し口が、やっぱり、ちょっと重たい。
「わたしね。ひとに好きになられるの。見境なく、誰からも」
生まれたときから、そうだった。
「両親がおかしくなったから、家を出て。先生がおかしくなったから、保育所を出て。ずっと、ひとりでいたの」
誰にも見つからないように。できるだけ、ひとりで。
「あなたが初めて、ここに来たとき。わたしの憩いの場所が、またひとつなくなったって、思ったの」
人が来たから。もう、この公園には来れない。ベンチからの景色も、見られない。
「でも。あなたは、わたしの隣にいても、おかしくならなかった。ただ座って、夜景と星空を眺めていただけ」
ちょっとおかしくて、笑った。
「変だよね。わたしのことを好きにならないひとに、初めて出会った。それで、わたし、あなたのことを好きになった」
そう。好きになった。
「好きになっちゃったの」
はじめから、おかしかった。話していて、分かることもある。最初から、あのひとは。わたしのことを、好きじゃなかった。
「ごめんなさい」
もう、会えないのに。
あのひとは死んだのに。
わたしはまだ、ひとり。公園のベンチに座っている。
「告白したから。わたしが。好きだって言ったから」
あの人を殺したのは、たぶん、わたし、だから。
「ごめんなさい」
夜景と、星空。
澄んでいて、綺麗だった。
もう、彼はいない。
ほんの少しだけ、ミントの香りがした。
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