第7話 白雪姫の住む町へ
君は窓の外を眺めていた。
この町に立ち並ぶお店は服だとかコスメだとか女性モノを売ってるものばかり。
建物はお店になっている一階こそ小綺麗に飾り付けてあるが、2回から上は遠目に見ても古びて今にも壊れそうな作りであるのがわかる。曲がったトタンの階段とか、今どき繁華街の路地裏くらいでしか見れないと思っていた。
駅近の壁にはやれ観光大使のオーディションだとかローカル雑誌の専属モデル募集だとか美少女コンテストだとかの広告がこれでもかというくらいに目に入る。
見栄を張りたがる女たちの町だ、と率直に思った。
君は綺麗だ。
本当に綺麗だ。
僕は毎日そう言ってる。
けれど君は鏡を見つめながらとても醜い表情をする。憎しみと惨めさを混ぜたような顔。
笑ってる時の方が可愛いよ。
そう何度も言っているのに「笑った顔は不細工だから」と言って絶対に笑おうとしない。
今度の文化祭で僕達は子供向けに白雪姫の劇をする事になった。
君は白雪姫のお后様役に立候補した。
「絶対にこの役を取りたいの。」
そう言って、僕の知り合いの劇団の稽古場見学をしたいから連れて行ってほしいと頼まれた。
けど、君がただ演技の勉強をするためだけにわざわざ遠い地へ足を運ぶ訳じゃないことを僕は知っている。
この劇団には、君の白雪姫がいる。
殺したくなるくらい憎いんだろう。
彼女のせいで自分のことを認められずに、毎日苦しんでいることも知ってる。
それなのに何故わざわざ会いに行くんだろう。最初は疑問に思った。
高速バスの中で、君は眠りもせずにずっと窓の外を眺めていた。
その横顔を見た時に気付いた。
君はあの白雪姫に恋をしてる。
いや、恋よりもずっと強い感情。
きっと君は知らず知らずのうちに、白雪姫に憧れているんだ。
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