第5話 フランボワーズ

来年も、また来年も、その先も。

ずっと一緒にいようなんて約束は長続きしなかった。

そんなものだって分かってた。

けれど庭の木苺は今年も実をつける。


彼女はいつまでも立ち止まってた。

立つ事すら出来なくなって、しゃがみ込んだままずっと泣いていた。

私は手を引こうとした。

けれども彼女は最後まで立ち上がろうとしてくれなかった。

どんなに力強く引っ張っても引っ張っても、痛いと拒むばかりだった。


いつも親の言うことに逆らえなくて、いつも他人の顔色を伺ってばかりで。

何も出来ないんじゃなくて、何もしようとしなかったんだ。


「あなたは、殴っても殴っても壊れないサンドバッグが欲しいの?」

人に嫌われる事には怯えるくせに、私には嫌われるようなことを言う。

私がまるで暴力魔の悪者みたいな言い方。

そうゆうところに腹が立つんだ。

そう言って私はまた彼女を叩いた。


とうとう私は背を向けて、先に歩き始めた。

待ってと言う彼女の声を無視して、絶対に振り返らなかった。


ずっと後悔してる。

私は一度でも彼女の横に座って、一緒に立ち止まってあげただろうか。


今頃、どうしてるかな。

そんなこと聞けるわけがない。


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