第4話 コスモスの栞
すっかり秋になった。
日に当たっていると暑いと感じるのに、日陰に入ると真冬並みに冷たい風が吹く。
ある程度薄着な事も多いので、ひょっとしたら真冬よりもしんどいかもしれない。
健康体なのに風邪を引いているような感覚になる。
読書の秋とはよく言ったもので、秋になると本を読む人が増えるのはこんな気候のせいだろう。
体調が優れてない気がするから心もセンチメンタルになって、特に物語だとか登場人物がいるものに感情移入が捗る。
こんな時期を楽しむべく、川辺で読書をしていた。
この川、深そうに見えるが実はそうでもなくて、水が濁っているから底が見えないだけで実際は腰まで浸からないくらいには浅い。
言葉も同じようなものだ。
カッコつけて難しいテーマで難しい言葉を並べて、深いと評価された作品よりは、拙くても自分の言葉で綴られた文章の方が結局は多くの読者の心に届く。気がする。
少し脱線するけど、カッコ悪いことは寧ろ魅力だと私は思うのだ。
お誕生日にケーキ買ってくれたのを自転車で持ってこようとして中身ひっくり返してしょげてた横顔とか、貧乏時代に「栞が欲しい」と言ってみたら私の一番好きなコスモスを押し花にして栞を手作りしてくれたけど、その出来栄えがすごく下手くそだったこととか。なんというか、愛おしかった。
ちなみに、私がこの川が浅い事を知ったのは今さっきその栞が風で飛ばされて川に落ちたので取りに行ったからです。
普通に寒い。早く帰ろう。
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