第2話 ジャスミンティー
「今日はジャスミンティーなるものを入れてみました。」
かしこまっているのかそうでないのかよく分からないような敬語を使ってお茶を出してきた。
君はよく私の召使いになりたがる。
最近は紅茶を入れるのにハマっているらしい。
ジャスミンティー。花は甘い香りのイメージなのに、これはすごく苦そうな香りがする。
飲んでみると、この苦い香りにはかなりミスマッチな気がする砂糖の甘さが広がった。
「美味しい?」と顔を覗き込んでくるので「美味しいよ」と微笑んだ。
すると嬉しげに色々語り出した。
とはいえ、私はダージリンとアールグレイの違いも分からないほど紅茶についてはよく分からない。
ので、感想を求められても味の好みしか言えないから言葉のレパートリーが無くなってほぼ毎日同じようなことを言っている。
苦いのが嫌いと言ったらどんなお茶でも毎回砂糖を入れるようになって、薄い方が好きと言ったら日に日にお茶は薄くなっていく。
そんなこんなで出来上がっていった今日のお茶は素人の私でも分かる、多分これはよその人に出したら首を傾げられる一杯だろう。
だけど美味しい。何故だろう。
「どうしてこんなに美味しいんだろう。」
と呟いて、きっと君が私の為に作ってくれた特別な一杯だからだね。って続けようとしたのにそれを遮って
「決め手は温度です!」
と、また濃くなりすぎないようにお湯を沸騰させずに時間をかけて蒸らしただのなんだの色々語り出した。
自分で言おうとしながらそういう臭い台詞が好みでない私にとっては、この返しが愉しくて仕方なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます