Lv12 制限時間という概念




「「ウィーン」」


 自動ドアが開き、中の涼しい冷気が体を包み込む……


『いらっしゃっせーッッッ!!』


 店員とおぼしき男が元気良く出迎える……そして今なら何でも食べられる気がする。

 僕はテーブルに置いてあったメニュー表を手に取り、メニューを見る……


「ん?」


 一つのメニューが目に留まった……


「大食い……? 食べきったら、賞金……”2万円”!?」

『あぁ、この店大食いチャレンジが有るんですよ』

「やるしかねぇだろぉぉぉおッッッッ!!!!」


 僕には金が無いッッ!!このチャンスは絶対に逃すことはできないッッッ!!!



                ◆


 注文して数分後、山盛りの料理が出てきた……みるからに美味しそうである。よだれがスプリンクラーくらい出ていて、飲み込むツバが鉄球のように重い……


「『いっただっきま〜〜〜すッッッ!!!!』」


 ちなみにハルエンはボンドロ牛のステーキ定食を頼んでいた。相当、ボンドロ牛が食べたかったのだろう……


「「「バクバクバクバクバクッッッ」」」


 食べる手が止まらない……病みつきである。味付けも程よく、転生前では味わえない食材……そして底なしの食欲。この僕を止めることは不可能である……!!


『おぉッッ!!良い勢いですねッッ、これは完食できそうだ!』


「「「バクバクバクバクバクバクバクバクッッッッ」」」


 何度、口に運んでも食欲が止まらない……もう半分を食べ終えたところで、残り1.5キロといったところである。今の僕は現実世界でいう”ギャル損根そんねくらいのスピードで食べ進めている……!!


『おぉぉぉおッッッ!!これは初の完食者が現るんじゃないですかぁぁッッ!!』


 ハルエンも興奮気味である。そして店員の男もドキドキしながらこちらを見つめている……


「「!!!」」


「ぐッッ」」


 一気にお腹に溜まった……!!やはりスピードを出しすぎたのかも知れない、まぁそもそも僕は大食いではない。どちらかといえば少食である……今回は最強に空腹だったので、挑戦したのだがやはり壁は高いことを思い知らされた……


「ぐ……こ、これって制限時間あと、どんくらいですか……?」

『……え? 制限時間、ですか?』


 店員が口をぽっかり開けてこちらを見ている……


『制限時間なんて無いですけど……?』

「ほぇ……?」


 どうやら異世界に制限時間という概念は無いらしい……まったく平和な世界である。


「で、でも制限時間がなかったら絶対に賞金持ってかれるんじゃないですか!?」

『はい!中には3日かけて食べきった方もいらっしゃいました!』


 正直、制限時間が無いのであれば今の僕に対したらぶっちゃけ余裕である。賞金……もろたで!! ハッハッハッハッ!!


「「バクバクバクバクバクバクバクバクバクバク…………」」



               ◆



『はい、こちら賞金の2万円ですね〜』

「あぁぁりがとうございますッッ!!!!」


 思わぬ所でいい金稼ぎができてしまった……普通に嬉しい。


『じゃあ、師匠の元に戻りますか。そろそろ靴もできてるだろうし……』

「うん、そうだn、ウップ……」


 こんなにたくさん食べたのは久しぶりである……




転生してから色々、初めての体験ができてうれしいなぁ。



             



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