Lv9 クソ猿は僕の食事を盗む


「ヌスミザルってまずなんだよ!?」

『ヌスミザルっていうのは名前の通り、物を盗む猿です……あまりにも盗むのが速いので、きづくのが遅れてしまうんです』


 どうやらハルエンがサプライズで採ってきたボンドロ牛の肉はヌスミザルというコソドロモンスターに盗まれていたらしい……なにしとんねんッッ!!


『だが……希望はまだ有る!! なぜならヌスミザルは”足跡”が特徴的だからだッッッ!!』

「あ、足跡……が、特徴的……?」


 猿は木を登って移動するのでは? と、言おうかと思ったが『何言ってるんですか、そんな訳ないじゃないですか(笑)と言われるのがオチなのでここはあえて何もいわないことにしておく……


『ヌスミザルは木を登って移動しません。なので絶対に地面に足跡が残るんです!』

「なるほど、じゃあその足跡をたどったらヌスミザルにたどり着くってことか!」

『はい、その通りです!早く食料を奪い返しましょうッッ!!』


 ヌスミザル奪い返し作戦の開始のゴングが鳴った……!!



             ◆


 確かに、特徴的な足跡が森の奥まで続いている……ヌスミザルは襲ってきたりしないのだろうか……少し心配なところではある、そしてめちゃくちゃお腹がすいた。なぜならなにも食べていないからだ……転生前と同様に空腹は感じるし、運動をしたので余計に空いている気がする……


『もうそろそろ、ヌスミザルの住処に着きますよ……』

「襲ってきたりしない?大丈夫……?」

『大丈夫です。ヌスミザルは物は盗みますが、命は盗みませんよ……』


『………今の上手かったですか!? かなり良い”掛け”だったと思うんですけど!

 どうだったですか!?』

「だまれ」

『はい』


 そうこうしている内に、足跡が途中で消えてしまった。


『着きましたよ……この目の前の茂みを抜けたら、ヌスミザルの住処です』

「よし……少し可哀想だが、僕達も生きるためだから仕方ない……」


「『突撃ぃぃぃいッッッ!!!』」


「「「ガサガサガサッッッ!!」」」


 茂みを抜けると、家族でボンドロ牛の肉を分け合って食べているヌスミザルの姿があった……そして物凄く怯えている。当然である、食べ物を盗んだら家に突然やってこられたという状況だからである……


『こりゃあ、やられましたね……』

「うん、仕方ない。見逃してやろうか」

『はい』


 ヌスミザルに肉を盗まれたが、その家族を見てしまったらその肉を取り上げようとする気持ちは一切なくなった。勿論、空腹である……それに変わりは無いのだが、ヌスミザルへの怒りはすっかり消えてしまった。


『仕方ないですね……じゃあ、ここらへんに生えている野草とかを採って食いつなぎますか!』

「うん、そうしようか」


どうやら、そう簡単に食事はできないらしい……





肉が食べたかったなぁ……




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