Lv3 奴らって誰だよ



靴を買う金がなかったので臨時のバイトをすることになったのだが、やはり緊張している……面識もない”ハルエン”とかいう小僧と一緒に行かねばならんからだ。


『よし、じゃあ”ガチガチヅル”から取りに行きますか!』 

「う、うん。 ハルエン君についていくよ」

『ガチガチヅルは”スビノ森”という、ここから15分くらいの森に大量にあるんですけど……』

「ですけど……?」


ハルエンが神妙な面持ちでこちらを見てくる。


『あの森にはが大量に潜んでいる……油断しているとヤラれますよ?』

「……え?それって大丈夫なの、? 僕まだ死にたくないよ?」

『へへっ、大丈夫です………多分』


僕はハルエンを信じる以外の選択肢がなかったので、いざとなったら裏切る準備をして望むことにした。



                 ◆



『あの〜、なんかさっきからレベル上がってません? すごいうるさいんですけど』

「あぁ、僕のスキルらしいんだよ。歩くとレベルが上がるんだ」

『歩くとレベルが上がるッ!?そんなスキルがあるんですか……最強じゃないですか!』


ハルエンが目をキラキラさせて見つめてくる。


『じゃあ、歩けば歩くほど強くなるってことか。かなり特殊なスキルだなぁ』

「そもそも、スキルっていうのはどういうものなの?」


『スキルは大きく分けて2種類に分類されます。 ”初期スキル” ”取得スキル” の2つです。 初期スキルというのはあなたでいう”歩くとレベルが上がる”というやつで、取得スキルはレベルが上がるとその都度取得できるスキルです』


「なるほど、じゃあ普通の人はどうやってレベルを上げるの?」

『モンスターを討伐したり課金したりですかね』

「か、課金なんてあるの!?」

『当たり前でしょう、なに言ってるんですか?』


―――当たり前とは一体なんなんでしょう……


『まぁ、なのであなたの初期スキルはレベルが自動で上がるのでその度に取得スキルも得られる。めちゃくちゃラッキーなスキルですよね、モンスター討伐もしなくてもいいし……』

「……う、うっしゃー。 でハルエン君の初期スキルは何なの?」


『俺の初期スキルは”木化”です』

「木化……? それはどういうスキルなの?」

『触れるものをなんでも”木”に変えることができます!』

「……え?それって、まさか……」

『生物は無理ですけどね!!』

「ッッふぅ〜〜、びびったぁぁぁあああ!!」


僕の背中は短時間でスプリンクラーレベルの汗をかいていた。


『おッ!もうすぐスビノ森につきますよッ!』

「あ、あのめちゃくちゃ生い茂っている森がスビノ森か……」


『ちなみにガチガチヅルは、奥に進めば進むほど上質なものが採れます』

「なんでなの……?」

『まぁ、ガチガチヅルは採ってもすぐ再生するんですけど、入り口付近のツルは他のみんなに取られまくっていて新しいツルが多いんです。 でも奥のツルはだれにも採られてないので芯の強い古いツルが多いんです』

「なるほど……でも”奴ら”が潜んでいるんでしょ? 僕、普通に怖いんだけど」

『大丈夫です、金品とかを所持していない限りは害はないので』


(コソ泥系のモンスターがいるのか……? まぁ僕は金目のものは何も持っていないし大丈夫か……)


『着きましたよ!心の準備はいいですか?』

「う、うん。行こうか、ガチガチヅル採集!」



いざ、ガチガチヅル採集に参る!!





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