第12話

それから 父さんの

特訓が始まった



礼儀作法


王様の前に出ても 恥ずかしくない様に

青の一族の一員として

家名に恥じない様に


父さんと母さんの娘として

皆に認めて貰いたい



「明蘭

違うぞ そこは顔を上げないで

後ろに下がるのだ」



「はい」


「そうだ」



どれくらいやっていたのだろう

灯りをともさないと

暗くなってきている



「父さん 少し休もうよ」


「あぁ そうだな 暗くなってるな」



はぁ

こんな風にみんな動けるんだ

凄いなぁ


「夕飯作るか」

「そうだね」




「高順のおばちゃんに

鳥もらってるから それ使ってつくるね」


「じゃあ 父さんは他の事済ませとくな」



さてと 作りますか

まず この着物を着替えなくちゃ






「ご馳走様でした」

「上手くなったな

これなら商売で出してもいいけどな」

「ほんとに?」

「ああ 本当だとも」

「嬉しいなぁ」



でも この子は もうそんな事は

出来なくなるであろうな




「さて

腹もいっぱいになった事だし

おさらいするか」


「そうだね 早く覚えなきゃ

石を返しにいけないもんね」


父さんが頷く




稽古は夜遅くまで続いた









王宮



「伶笙」


「はい 紫絖様」



「石は どうなった?

光牙には 聞けたのか?」


「はい

王がお助けされた女が 実は わが一族の者でして」



「それは 凄い偶然だな

よく分かったな」


「はい 兄は視えていたようです

我が姪でございました

その者の父親が 状況を理解して

兄の所に参って話をしている途中に

私が 聞きに行ったのでございます」


「そうか

お前の姪だったのか

あの者は

だが

姪ともなれば 同じ屋敷に住んでいるのでは?

青の一族は結束が固い

あのばばあが 子供を離さぬであろうよ」


あの ばばあとは 母上の事だろうな……

遠くを見つめた……



「ばばあが離した子供がいるのか?」



「唯一 我が妹だけは 家から

母の元から 出ております」


「妹………こう……光蘭とかいったな」


「左様でございます」


「確か 光牙の次に視える者であったと

思うのだが」


「よくご存じでいらっしゃいます」


「青の一族の事は

じい様から教わっておったのでな

だが 光蘭は よくばばあから逃れたな」


「あの子は体があまり強くなかったのですよ

兄上の次に視えるというので

母が 何かあっては大変だからと

屋敷から出さず 手元から離しませんで


ただ光蘭は 外の世界

母の庇護から外れて自分で生きたいと

いつも 申しておりました


そんな 光蘭も年頃になり

兄の側人と 恋に落ちたのですよ」



「ほう

ばばあは反対であったろう」


「いえ 母は 兄も反対はなかったのです」


「屋敷から出しもしない

可愛がっていたのであろう

それでも 反対は無かったのか?」


「はい

日取りも決まる頃になって

母が 条件を出したのです

この屋敷で一緒に住むこと

それだけでした」


「同居か

ばばあよっぽど気に入っておったのだな?」



「兄弟の中でおなごは一人だけでしたので

自分が生んだのではないにしろ

可愛がってはおりました


「さもあらん」


「ただ

そこでも 兄は視えておりました

光蘭は長くは 生きられぬ

好きな男と添い遂げることが出来て

子供が生まれて長くて二、三年


もっと早いかもと言っておりました」


「そうなのか

ばばあも知っていたのだな」


「はい

なので 同居すれば 体が休まるであろう

子供を作らなければ その分長く

子供が出来ても こちらで援助すれば

また その分長くと

親心ですか……」


「…………」



「同居と条件を出されて……

なんと光蘭は好いた男を

拐って 屋敷を逃げたのですよ ふっ」



「男に拐われるではなく

男を拐ったのか……すごいな」


「はい 凄いです」





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