第九話【新たなメンバー】黄金の鷲
時間は少し遡り、テールが抜けた後の【黄金の鷲】のメンバーたちは、新たな拠点となる宿屋の一室に集まっていた。
以前利用していた部屋よりも更に広く、高級な調度品が数多く並べられている。
「それじゃあ、紹介しますねぇ。新しく私たちのパーティに入ってくれるぅアレク君ですぅ」
イリスの紹介にアレクはキザっぽく挨拶をした。
目が痛くなるような色合いの服装に身を包んだ銀髪の青年を、ランドは目を細めて見つめる。
「よろしく。アレク。俺がこのメンバーのリーダー、ランドだ。イリスから事前に聞いてはいたが、俺らと人気を二分するパーティ【真理の龍】のメンバーの君がうちに来てくれて本当にうれしいよ」
「ああ。ランド、僕も君のことは知っているさ。僕に負けず劣らず、派手な成果を成し遂げている男だってね」
【真理の龍】は【黄金の鷲】ができるよりかなり前から、ダンテのダンジョンの踏破を目指すパーティの筆頭の一つとして名高い。
すでに第八階層に到達も経験していた。
ランドとは異なり、アレクのことを初めて知らされたターニャは怪訝そうな顔をアレクに向ける。
口から出た疑念の言葉は、非常に単純なものだった。
「だけどよ。私は馬鹿だからよくわからないけど、そんな私でも【真理の龍】の名前くらい知ってるぜ? 私らより先に第八に到達してるんだろ? そんな有名なパーティのあんたが何でうちにわざわざ来てくれたんだ?」
ターニャの言葉にアレクは前髪を大げさにかき分けてから答えた。
「君のこともイリスから聞いているよ。ターニャだったね? 君は【真理の龍】が第八階層に到達していることは知ってるみたいだね。だけど、いつからか知ってるかい? 僕が入る前からずっと、彼らはあそこで足踏みをしているよ。そんな彼らより、君たちに魅力を感じた。それで答えになってるかな?」
「なるほどな。ようは、おっさんたちより若い私たちの方が未来があるって思ったわけか。あんた正解だよ! 第八を最初に踏破するのは私らだからね‼」
「えぇ。そうですよぉ。ターニャ。あの不要な土魔法使いが居てもここまでこれたんですから。それにアレク君が加われば、もう踏破間違いなしですぅ」
アレクの答えにターニャはご機嫌になり、さらにイリスがあいづちを打つ。
そんな三人を見て、ランドはアレクに提案をする。
「ターニャの疑問も晴れたことだし、親善目的と、互いの実力を見せ合うために、これからダンジョンに行かないか?」
「今から第八階層に挑もうってのかい?」
「ああ。まぁ、今日はほんの挨拶みたいなもんさ。第八階層にいるモンスターたちに、これから恐怖を与えるのが誰なのか? ってことをね。それに君の雷魔法も早く見てみたいし」
「いいね。やっぱり君たちは勢いが違う。あいつらだったら新しいメンバーが加入したらひと月はもっと上の階層で無駄な時間を費やしてたからね。僕も、炎と剣術を使う
アレクが【真理の龍】に加入したのは彼が第五階層を踏破した時だった。
その時は別のパーティに所属していたが、自分の実力に対して他のメンバーが見劣りすると、自分から抜けた。
運よく【真理の龍】がパーティメンバーの募集をしていたため、応募し、高い倍率を勝ち抜き見事メンバーに選ばれた。
その時もアレクは自分が選ばれることを信じ切っていた。
むしろ自分が選ばれないのなら、【真理の龍】の目は節穴だと思ってさえいた。
そんなアレクを待っていたのは、アレク曰く無駄な時間という退屈な時間だった。
第五階層よりもさらに上、第四階層で延々と自分がどんなことができるかの確認や、他のパーティたちとの連携などをさせられた。
いくらモンスターを倒しても、第四階層では誰一人として成長は見込めない。
何故さっさと下の階層へ向かわないのか。
アレクは何度もリーダーや他のメンバーたちに抗議をしたが、アレクが理解できたのは、彼らが臆病者だということだけだった。
それでもアレクは我慢してメンバーであり続けた。
現最下層である第八階層までたどり着くことができたが、その間もパーティへの不満は増すばかりだった。
そこへ飛び込んできたのが、【黄金の鷲】への移籍の話だ。
アレクはこの話に二つ返事で飛びついた。
【真理の龍】を抜けることをリーダーに告げると、リーダーは引き止めもせず一言だけ「アレク。生き急ぐなよ」と言った。
アレクはそんなリーダーを鼻で笑い、「あんたらに合わせてたら、老いぼれちまうよ」と返し、その場を後にした。
「それじゃあ、早速。イリス。ターニャも。準備はいいね?」
「もちろんですぅ。私も早くお二人の派手な魔法の応酬をこの目で見てみたいですぅ」
「任せな! 第八だろうが第九だろうが、どんなモンスターも私が一撃で仕留めてやるよ!」
ランドたちは誰も成し遂げなかった栄光を、自身が得ることを信じ切って、ダンジョンの入口へと向かった。
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