第十四回 秋雨
「なるほど、やはりそういうわけだったのか」
例の月見より少し経った頃。秋は深まって涼しげな風が都に流れ、稲穂も頭を垂れる時節。しとしとと秋雨が降る日に、いつもの通り宝燈は韋黯を相手に夕食を摂っていました。
「はい。衛士としての不手際、お詫びのしようもございませぬ」
「いや、構わない。寧ろ、お前はよくやってくれた。感謝している。…ところで、例の刺客は結局誰を狙っていたのだ?」
「口にするのも憚ることながら…殿下と、李丞相の殺害を狙っていたと」
「…何故、寡人があの男と一緒くたにされねばならぬのか」
自身が殺されかけた事よりも、そちらの方が彼にとっては不満の種でした。自分の命が狙われるよりも、李乾坤と同類と見做される事の方が、彼にとっては嫌に思われたのです。
「そこで、都の貧民窟の方に潜って調べたところ、どうやら最近妙な噂が広がっていた様です」
「ふむ」
「ご不興を被るやも知れませぬが…なんでも、江夏王は李乾坤と繋がって水運から暴利を貪り、その金を奴に流している、とか」
「馬鹿な!」
顔を真っ赤にして宝燈がいきり立つと、それを予期していた韋黯は手をかざして押しとどめ、また座らせてから話を続けます。
「というのはあくまで建前で、実際のところは李乾坤の党与の中で、皇族でありかつ最も若く殺し易かろうという、浅はかな企みであった様です。陳副丞相もその地位故にお命を奪われたとか。どうか殿下も、お気をつけなさいませ」
「…覚えておく。だがそれにしても、なんと腹の立つことだろうか」
「何がです?」
「寡人が側から見れば、あの奸臣に媚を売る寄生虫の様に見えているということがだ」
「そう腐る必要もありますまい。こと政治に関しては、ほぼ安全を買った様なものですから」
「…ふん。ごちそうさま。少し出てくる」
「どちらに?」
「蝶花楼」
「いつものあの人ですか」
「…言っておくがな、寡人は」
「分かってますよ。手を出したりはなさっていない、って。では、お支度を手伝って来ます」
例の日から宝燈は、時折王としての威儀を整えた立派な行列を仕立てて、蝶花楼の魚玄機の下へ通う様になりました。無論互いを心得ている二人にとっては、なんら後ろ指を指される必要も無いのですが、世の中はそうとは見てくれず、やれ「姫君の様に麗しい江夏王殿が、一夜にして玄機の虜になってしまった」だの、「いや、玄機の方が江夏王の美しさに惚れ込んでしまった」だの好き放題に噂を振り撒き、それに伴って彼本人にも注目が集まる様になってしまったのです。
「どこから聞いたか知らないが、妙な縁談や恋文が増えてしまった気がする」
宝燈の顔貌を知っている人間は、上から下まで百万人を数える長安の人々の中ではそう多くはありません。しかし、彼が韋黯だけを引き連れて遠乗りに出ることはよくある事でしたから、顔を知っている者も決して少ないというわけではないのです。
故に、彼の下には直接御簾の隙間からご覧になったり、あるいは人伝に何かをお聞きになったりした高貴なご婦人方からのお手紙が前々からよく舞い込んでいたわけですが…このところ、噂が立ち始めてからは些か手に余るほどになってしまったのでした。
「でも、一通一通返事をお書きになるあたり、律儀はやはり美徳というべきか」
しとしとと降る雨の中出掛けていく宝燈の駕籠を眺めつつ、お留守番の韋黯はのんびりと考えていました。
宝燈の列は朱雀大路を経て、北里の方へゆっくりと進んでいきます。先頭の衛士は時折派手な銅鑼を打ち鳴らし、通に屯する無頼の輩を時に乱暴に追い散らして、安全を確保しました。
そんな時、とある坊の路に差し掛かった時、宝燈は駕籠の窓からふとあるものを目に留めて、列を停める様に命じました。
「のう」
「は、はっ!これは王様!」
彼は雨が降るのも構わず駕籠から出て、目に留めた者に話しかけます。その男はみすぼらしい襤褸を纏って、築地塀の崩れかけたところに力無く座り込み、欠けた茶碗と骨の浮き出た幼子を抱えて物乞いをしていました。
おそらくは数日の間、碌に何も食べていないと見えて、目は落ち窪み鼻筋には生々しく骨が浮き出ています。
「其方、何故そこにおるのか」
「はは、
「生業はなんだ」
「それは…」
「よい、申せ」
「…元々は、河間にて田畑を耕しておりました。しかし、連年不作が続き、お上より貸し付けられた種籾の返済にも困り、止むを得ず地主に土地を半ば売り払って賎民同様の暮らしに落ちても、ことは悪くなる一方」
「それで故郷を捨てて都に逃亡してきたと申すか」
「父母も妻も流行病で逝き、残るは抱くこの子のみでございます。都に行けば何かはありつけようと思いましたが、それも甘い夢に過ぎませんでした」
物乞いの男は宝燈に媚びる様子も無く、ただ淡々と掠れ声で語りました。その中には、最早苦しみも悲しみもなく、目の前に迫りつつある終わりを受け入れるかの様な響きがあり、それが尚更に宝燈の心に突き立ちました。
「誰か」
「はい」
「この者に一握りの銭と、大椀を満たすだけの米をくれてやれ。それから、邸の直ぐそばに廃寺があったろう、そこに案内して、子供共々しばらく面倒を見てやれ」
「はは」
「よ、宜しいのですか、王様!」
「…子供を見捨てることはできぬ故。ただし、そう長く面倒を見てやることはできぬぞ」
「ありがとう存じます!」
目敏い彼は見逃しませんでした。「子供共々」、そう言った瞬間に男の顔に生色が戻ったことを。自身の食事よりも、子供のことをずっと深く思っていることを。
そうした思わぬ邂逅を経て、行列は雨の中を進み、やがて宝燈は蝶花楼に到着しました。
雨夜を朧に照らす提灯の下で、彼が高楼に登ってゆくと、傍らから覗き見ている者がいるのでしょうか、あちこちからため息が聞こえてきます。無論そうしたものを一々気にする訳にはいきませんから、早足で玄機の待つ一等豪奢な部屋へと向かいました。
「殿下、ようこそお越しくださいました」
「いきなり呼び出して、どう言うつもりだ?」
「いえいえ、最近いらして下さることも無く、噂話を漏れ聞けば、江夏王様は大層お美しいから貴婦人の方々が競って懸想文を、と言いますので、妬ましいやら哀しいやら…」
「馬鹿を申すなよ、寡人の秘密を知るのは現世にあっては両手の指に収まる程度、そして其方はその一人ではないか」
「もう、そのようないけずを仰ってはいけませんよ」
彼女はそう言って宝燈を座敷に引き込んで座らせると、直ぐに飲み物と料理の支度をさせます。
「今夜は何かあるのか?」
「もしお望みでしたら
「いや、いいよ。二人の方が落ち着くし、花代も出せない客というのでは、都中の物笑いだ」
「あら…急に大人のようなことを仰いますのね」
「其方の言う通り、ここ最近懸想文が余りに多くてな…断りの返事を書き続ける度に、物事を斜に構えて見る様になってしまったかも知れない」
「…それは、恋心を向けられることに対して辟易していらっしゃるの?それとも、どなたか想う人が心の中にいて、その人しか見えていらっしゃらないからですの?」
目を細めて玄機が問うと、急に彼は黙り込んで、頬を薄紅色に染めて俯きました。
「それは…その、ええと…」
「あら、お可愛らしいことですわね…」
彼女に頬を触れられると、彼はぴくりと体を震わせつつも、抵抗せずに押し倒される様にして身を委ねてしまいます。
「殿下、どなたですの?あなた様をそこまで夢中にさせてしまう殿方…気になりますわ」
「…内緒だ。誰に聞かれようとも教えるわけにはいかない。離れてくれ」
「あら釣れないこと」
顔を背けると、玄機は残念そうに頬を膨らませて宝燈から離れ、お茶を注ぐ為に近くの急須を取りに行きました。他方起き上がった彼は、暫し彼女の甘い匂いに包まれて茫然としていましたが、程なくして自分を取り戻し、差し出されたお茶を口に含みます。
その様子を見て、玄機が言いました。
「殿下、今日は少し憂鬱でいらっしゃいますの?」
「…いや、そういうわけではないが…」
「嘘をおっしゃってはいけませんわ。妾も長くこの楼におりますが、お客様のご機嫌には敏感になりますのよ」
「敵わないなぁ」
彼は苦笑いして、今日ここに来る前に物乞いの親子を見たことを簡単に話しました。
「世の中に富める者、貧窮する者が各々あることは知っていた。だが、そうした人々を実際に見たのは今日が初めてだったのだ」
「……」
「恐れ多くも寡人は、あの者を見た時思ったのだ。今は天子のご威光が九州に行き届き、上下を問わず太平無為の安楽を楽しむ世であると、寡人は信じていたが…それは真であろうかと」
「城外ならいざ知らず、城の中の、それも北の貴族街にまで貧民が居たからですの?」
「そうではない。確かに無論それがなかったとは言わぬ。だが、それよりも寡人が驚いたのは…あの物乞いの親子の、何もかも見捨てた様な目であったよ。生業も、日々の糧も、生きていく希望もなにもかも喪って、死人の如く彷徨うだけのあの目。ああした目の者が、お膝元の都で生きているという時代が、果たして太平無為の世の中と言えるだろうか」
彼の顔は普段のそれからは想像できない様な、憂愁を帯びたものになっていました。
次の日、宝燈は韋黯を呼び寄せてこう言いました。
「賢弟、お前が住んでいるのは都のどこだったか」
「城内の南です。青龍坊に小さいですが役宅がありまして」
「今日、お前の家に泊まってもよいか」
「はい?」
彼はごく簡単に経緯を説明し、次いで理由を簡潔に伝えた。
「どうも、寡人は都の中のことすら碌に知らなかった様でな。それで、そういえば賢弟がどんな暮らしをしてるのかも知らなかったと思い出したのだ」
「それで、私の暮らしを見てみたいと」
「うむ。学びの第一歩としてな」
無論、彼は心中で自分の正体が露見する危険性を十全に理解していました。が、件の物乞いの一件が与えた衝撃が余りにも深く、危ない橋へとその背を突き飛ばしたのです。
尤も、いっそ偶然にバレてしまった方が、いずれ告白するよりも良かろう、という気持ちがあったことも事実ですが…。
さて、その日の夕刻、宝燈と韋黯は質素な服装に着替えて、予定の通り都の東南、青龍坊へと向かいました。青龍坊は都の東南の果て、すぐそばに天子の離宮である芙蓉園が位置し、その池である曲池のほとりに設けられた区画です。かつては離宮に勤める人々が住う瀟洒な街の一つでしたが、時代が降るにつれて貧民達が雑然とした住居に住み着き、坊を囲む檣壁が崩された後は、建て直されることも無く放置され、益々そうした人々が多く住む様になりました。
韋黯の住む家は、父親の韋叡将軍が京師の将軍を務めていた際に賜ったもので、今は父が戻るまで彼が一人で預かっているのです。
「正直、李丞相辺りの嫌がらせとしか思えない家ですがね」
韋黯が苦笑いして言うと、宝燈は笑えずに身震いしました。
「にしても、でん…失礼、賈公子、本当に宜しいのですか。あんな汚い荒屋で」
「良いと言っておる。お前と私の仲ではないか」
賈公子、とは、あの肝試しの時の様に、外に行く際彼が用いる偽名の一つで、設定としてはとある貴族の庶子ということになっています。性格は遊びと面白いものが好きで、興味があればすぐに駆け出してしまうとか。
さて、坊の中に入ると、そこはいよいよ混沌としてきます。平屋の見窄らしい木造の建物の上に、今にも崩れそうなほど弱々しい二階を強引に増築した居酒屋、見るからに怪しげな土塊の家からは、蛇のように舌なめずりをした不気味な女が、むせかえる様なアヘンの煙と共にこちらをニタニタと見つめていました。
「こ、これは…」
「私の家は、お邸の門よりも貧相ですよ」
韋黯は苦笑いしつつ、坊の中ではかなり立派な方に属するであろう、四合院ー中庭を中心に、南側に門を置き、四方を壁と家屋がくるりと取り囲む様式のことです。江夏王府をはじめとした貴族の家々も、多少の違いはあれど、この形式に則って立てられていましたーの中に、宝燈を案内しました。
「ようこそ、韋家の邸です」
「お邪魔する」
大門を潜って入ってみると、中庭はそれなりに手入れがされている様で、外のみすぼらしさに比べて比較的上品な印象を受けました。
「正庁のこちら側が私の今の住処で、向こう側が父上と母上の棟でした。いまは私の他に住む人も無いので、時折友人に間借りをさせています」
「なるほど」
と、韋黯が家を案内していると、急に建物の間口から猫が二、三匹にゃあにゃあと声を上げて駆け出してきて、宝燈の羽織の裾に絡みました。
「うわぁ!」
「こら!餌はまだだ、しっしっ」
「この猫達は?」
「この辺りではどこも猫を家に飼って、面倒を見てやってるんです。ちょっとした事情がありましてね」
「ふーん」
見れば、猫はいずれもよく太っていて、食べ物には困っていないように思われます。この時彼は、韋黯がよく世話をしているのだな、程度にしか思っていませんでしたが、実際にはあまり感心しない事情があったことを、後々知る羽目になります。
さて、その夜。宝燈と韋黯は一階で夕食の支度をしていました。辺りは小さな居酒屋が営業を始めたか、提灯の灯りと酒を飲む人々の声で、暗がりも明るく感じます。
「韋四郎のお兄さん、居る?」
「おっと、いつもの子が来ました。ちょっと待っていて下さい」
「何かあったのか?」
門前に出てみると、そこには粗末な装いの幼い子供が立っていて、手には湯気を立てるカゴを抱えていました。
「やあ、いつもありがとう。ゆで卵と甘い包子を二つずつくれるかな」
「ありがと!今回はたまたま枝豆も入ったから、笊いっぱい分茹でたのもあるよ」
「それも貰おうか」
「公子様」
「兄ちゃん気前がいいね!顔が良くて気前がいい男はモテるよ!」
品物を渡して代金を受け取ると、子供は元気よく街路を走り去って行きました。
「あの子は?」
「親のいない子です。ああして細々としたものを作って売って暮らしを立てているんです」
「名前はなんと言うのだ?」
「皆、彼のことを鉄、と呼びます。古い鍛冶場の工房を家にしてますから」
「…明るいな。紅花も、確かああ言う顔をしていた気がする」
「じゃ、ご飯にしましょうか」
食事は邸のような豪勢なものではありませんが、それでもしっかりとしたものが出されました。大盛りの麦飯と鳥の羹、そして先程買った茹で卵と枝豆です。
「いただきまーす、…ふむ、美味いじゃないか」
「今日は殿下がいらっしゃるので。多少奮発しました」
「そうなのか?」
「普段は肉が出ません。卵と麦飯、後適当に菜葉と塩だけです」
「ちゃんと食え。その位の給金は出してるはずだぞ」
「申し訳ありません」
口を尖らせる主人に対して、韋黯は苦笑いして謝罪しました。確かに月の給金で彼は十分に食べていけるはずなのですが、時折仕事や他のことにかまけて食事や家事が疎かになってしまうのです。
かといって家僕を雇えば良いとも言われるのですが、それはそれで面倒な様子であり、結局のところ貧相な暮らしというわけなのでした。
その後、食事を済ませ、寝床に入る支度をしていると、先ほどの猫たちが戻ってきて、宝燈の服の裾に頬を擦り付け始めました。
「おや、どうかしたのか」
「ああ、そろそろ時間ですから。殿下はそのままお休みになってください」
「へ?」
韋黯の言うことがよく分からぬままに、彼は寝台に身を横たえました。それを見届けて、韋黯も自分の部屋へと引き取って行きます。
「(んー、邸とはやはり雰囲気が違うな。外は明るくて煩いし、部屋の中は埃っぽくて狭いし…まあ、これはこれでいいのかな)」
その様な心持ちで、彼は目を閉じました。
それから幾らか時間が経った頃でしょうか。宝燈はやはり慣れない空気が災いしたか、寝苦しそうに何度か寝返りを打ちました。そして、その度に少しずつ目を覚ましてしまいます。
何度目かの寝返りを打った時、彼はふと側に妙な気配を感じ、何かを齧るような音を聞きつけました。
「何だ…この音は…」
そして、むくりと体を起こして目を擦り、見てみると…
「きゃあ!!」
自身の枕のすぐ横で、大きなネズミが食べ物を齧っていたのです!
「し、しし、
「殿下!何か…」
韋黯が乱暴に扉を開けると、ネズミはサッと飛び上がって逃げようとします。すると、急に天井裏から黒い塊が飛びかかり、ネズミに噛みついて思い切り引き倒しました。
「はぁっ、はぁっ…猫か…」
「ああなるほど、ネズミですか」
ネズミを捕らえた猫は、満足げにそれを咥えて外へと走り出ていきました。
「お前はあれを知っていたのか」
「というより、いつもの事です」
片付けを済ませて、二人はすっかり目が冴えてしまったので、部屋の明かりを灯し、茶を淹れて雑談を続けていました。
「この辺りは本当にネズミが多いのです。米櫃に穴を開けたり、食事を勝手に食べていったり。あとは偶に噛まれたりした子供が病になったりと、良いことはありません。ですから、何処の家も猫を飼ったり、野良猫を餌付けしたりしてネズミ捕りをさせているんですよ」
「なかなか壮絶な暮らしだな」
温かい茶を飲みながら、宝燈はため息をつきます。
「寡人は今日この日までネズミなどというものを見たことは無かった。だが、それは皆が寡人の目に入らぬうちに駆除しておったからなのだな」
「実は、貴族の家に住むネズミは簡単に捕れるそうです」
「何故だ」
「貴族の邸には贅沢な食事の為の食材がたくさんあるので、それを貪ってネズミが肥え太るのです。故に、下町の酷いものを食べて痩せているものに比べて動きが鈍間なのだとか」
「お前も参加したのか?」
「ええ。割と簡単に獲れますよ、何しろ、あのネズミ達は私達よりも良い物を食べていますからね」
「……済まないな。いつも」
「何がです?」
「いや…何もかもだ。寡人が贅を尽くして、楽しく暮らしている間にも、皆寡人の為に働いて、生きる為に必死な者もいる。そして、こうして来てみれば、寡人は何一つまともにできない。己の無力さと愚かさに、嫌気が差してくるのう…」
彼はしょんぼりした顔つきで俯きました。
「…でも、私達が暮らしを立てて行けるのも殿下のお陰ですよ。殿下が領地を治めようと頑張って下さるから、下の者も安心して働けるんです。その責任は、私の様な気楽な四男坊では務まりませんよ」
「……お世辞が上手くなったな、お前」
韋黯の言葉に、宝燈は優しく微笑みました。言葉とは裏腹に、嬉しさが溢れ出して、つい顔に出てしまったのです。
「まあいい、賢弟の暮らしもよく分かったし…明日には邸に帰る」
「そうですか」
「次は、お前に王府での暮らしの良さをじっくりと学ばせてやろう」
「いつもお世話になってますよ」
と、このような調子で、宝燈の小さなお出かけは終わったのでした。まだまだ秋は続きますが、続きは次回にて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます